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無限ホテルの雑務員。  作者: AO
禁書
32/53

ジラーリア対シリウス




「…というわけで始まりました!第241回レパルス魔導高校クラス対抗魔法決戦本戦!」

メチルは観客席の1番後ろに座っていた。

実況が叫ぶ。観客が沸く。会場は熱気に包まれている。

エラルド、ガングートは会場警備の任についていて、今はいない。

メチルのところにもオファーが来たが辞退した。面倒だからだ。

(暑い。)

この暑さは夏のジメジメした暑さとは違って気持ちがいい。

「左コーナー!全クラスの中で最高の攻撃力を誇る、近接魔法科!」

わああああああという歓声に包まれながらシリウスらが入場する。

彼女以外は知らない。どうでもいいからだ。

近接魔法科はシリウスのワンマンチーム。結論彼女を落とせるかどうかにかかっている。

(最低限の実力はあるんだろうけどな。)

「右コーナー!エース不在の中、まさかの予選突破を決めた、物理魔法科!」

今度は歓声が聞こえない。

むしろ困惑の声が上がった。

理由は簡単。1人だけだったのだ。

入場してきたのはシリウスただ1人。

「………これはどういうことでしょう!?6人まで参加できますが…」

あたりは沈黙に包まれた。

なんとなく不穏な雰囲気が漂う。

ジラーリアが何を考えているのかわからない。

何かあるのではと勘繰るのは当然だ。

「…では、ルールを確認します。

両者、魔道具および武器は1人1つまで持ち込むことができます。

互いに攻撃しあって、全員をリタイア(自主退場)もしくは気絶に追い込んだチームの勝利です。」

審判がいう。

あたりは少し強く風が吹いている。

どんな競技でも開始直前には熱狂は緊張に変わり、皆の視線が集中して交錯するものだ。

シリウスは剣を構えた。

(レベルス…。その人の感情に反応して姿を変え、自在に魔法を操る剣…)

同じ魔道具でも効果は使う人によって変わる。

体内を流れる魔力が多ければ多いほど魔道具の魔力を阻害して効果は減っていく。

普通の人なら最大で30%ほどの効果しか発揮できない。

メチルのように全身に触手を張り巡らせて格納している者は5%もないだろう。

が、シリウスは特例である。

彼女の魔法は周囲の空間に作用し、魔力の流れは頭の中と眼球だけで回る。

それにより体内魔力を抑えられるから、魔道具効果を約80%近く出せる。

対するジラーリアは「演算崩壊」による攻撃の無効化。一方的な攻撃。

文字通り常識の通用しない性能を誇る魔法。

彼女が一歩歩くだけで全てが破壊されうる。

(シリウスはどう戦うつもりなのだろう…)

メチルは想像した。自分だったらどうするかより、それを考える方が楽しかった。


(はっきりいってこんな闘いに意味はない。)

わかっている。シリウスは自分に言い聞かせる。

(だけれども…)

目の前のこの女は何なんだろう。

魔法術式の性能だけでいえば互角だろう。

だが、自分の魔法は不意打ちに特に大きな効果を発揮する。

それが封じられている今、自分の方が若干不利らしいとわかっている。

シリウスはひたすらに状況を整理する。

「それでは、始め!」

開始のホイッスルが鳴る。

と同時に。

頬に痛みを感じた。

(…切られた!)

魔法を発動する。

これで誰からも彼女は認識されない。

頬を拭う。血がついてきた。

結構深く切られている。

ジラーリアを探す。

見つからない。

(…どこ行った?)

と思ったその時。

首の後ろを切られた。

「痛っ…」

敵の姿は依然見えない。

ただ一瞬、何か過ぎ去ったのが見えただけだ。

にもかかわらず切られた。

(…何だ?どこにいる?魔道具か?)

また切られた。

今度は上腕。

切られたというより、抉られた。

(…………なるほど。)

ようやく理解した。

(チラチラ何か見えると思ったら…)

ジラーリアは、目に映らないほどのスピードでこのスタジアム中を回っている。

(戦法が脳筋すぎるだろ…。)

それなら対策のやりようがある。


「…?」

実況が黙っている。

というか、ここにいる観客は全員黙っている。

何が起きたのかわかっていないんだろう。

「実況俺と変わった方がいいんじゃないかな?」

エラルドがいう。

「まあ、そうだな。」

でも仕方がないといえば仕方ない。

試合開始の笛が鳴ったと思ったら、早速4人がダウンし、シリウスを傷つけたのだから。

そしてジラーリアの姿は見えず、シリウスもいないように見える。

何が起こっているのかわからなくても、それは彼らが悪いのではない。

こんな意味のわからん戦い方をするジラーリアとシリウスが悪いのだ。

「で?あいつどうするつもりなんだ?」

「今考えてる。」

「おうそっか。…………は?」

メチルは驚いて横を見た。

ジラーリアはいつのまにか彼の横に立っていた。

「なんでお前来てんの?帰れよ。」

「やだ。」

「反則だぞ」

「いやどうせ私の存在は魔力探知にも引っかからないから。

バレなきゃ何の問題もないし、あのままあそこにいたら死ぬかも。

レベルスで使えるあらゆる防御魔法使ったけど全部貫通した。

大丈夫、対策を思いついたら帰るから。」

「……あれ何だ?なんの武器?」

「つけ爪だね。ただ特殊な金属でできてるみたいで、殺傷力はそこらへんの刀より遥かに高い。

首をつかれたら死ぬと思う。」

「爪か…」

「女の子の爪は恐ろしいんだよ。覚えておきなさい。」

「いらない知識だな。手首から上を切ればいい。」

「そうね。あんたはそういうやつよね…。恋とかないの?」

「ない。」

「あっそ。つまんない人。じゃあ、私はいってくるから。」

「おう。対策は見つかったのか?」

「まあね。じゃ、また決勝で。」

そういって煙のように消えた。

「…。つまんない、か。」


会場が再びどよめいたのは、開始2分ごろだった。

それまで誰もいなかったところに、シリウスが現れた。

「……。」

彼女は腰の剣に手を当て、振り抜く姿勢を見せた。

それをめがけて向かっていくジラーリア。

ジラーリアの姿が一瞬見えた。

渾身の力とスピードで、銀色の爪をシリウスの白い肌めがけて突き刺そうとする。

シリウスはスッとかがみ、なんとか回避した。

肩に赤い線がはいり、そこから血が溢れる。

ジラーリアは奥の壁を蹴り、再びシリウスの喉めがけて手を伸ばした。

その瞬間。

シリウスがじっと睨みつけたまま刀を抜いた。

青い刀身は日光を跳ね返し半円を描く。

そして、決着がついた。

(…ずいぶん思いっきりいったな。)

彼女に手加減とかいう概念はないのだろうか。

どう考えてもやりすぎな気がする。

普通なら即死しているはずだ。

「禁止の魔眼」で相手の動きを封じてから、レベルスで切り裂いた。

(ま、ジラーリアなら死なないだろう。それより…)

メチルはじっとレベルスを見た。

ついさっきまで普通の刀のサイズだったのに、いつのまにあんな大剣になったんだろう。

シリウスはスタジアムごと斬ったようで、柱に切られた跡が残っている。

自分はあの攻撃に耐えられるのだろうか?

あれが「魔剣」レベルスの本来の姿に近い姿である。

青い刀身は氷のように冷たく輝いている。

スリムな形状から、三日月のような形になった。

長さは2mくらいあり、地面に引き摺られている。

射程無視、回避不可能の一撃を放ったそれは元に戻っていく。

実際の時間は3分程度だ。

だが、大衆にとっては3時間にも感じられた。

ギリギリの戦い。格の違い。緊張する場面。

目の前でまざまざとそういうのを見せられると、時間感覚がバグるものだ。

彼らはぼーっと、今目の前で起こったことを整理していた。

が、シリウスが剣を掲げてニコリと笑った時、ようやく彼女の勝利を理解し、おおおおという地響きのような音がした。

シリウスはメチルの方を見て手を振った。

メチルも笑わずに手をふりかえした。


「いやー疲れた疲れた。」

「ああ、お疲れ。」

メチルは控え室でシリウスを出迎えた。

これから防衛魔法科対特別魔法科の試合がある。

「負けんなよ?」

「ああ、大丈夫だ。しっかりボコしてくる。」














































読んでくださってありがとうございました

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