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無限ホテルの雑務員。  作者: AO
禁書
31/53

異端




件の転校生、ジラーリアの噂は瞬く間に広まった。

一瞬で上級生を2人潰したわけだから当然である。

「貴族をしばいたから退学処分になるかと思ったけど、何もなかったな。」

エラルドがつぶやく。

「まあな。シリウスがなんかしたのかもな。」

メチルも呟くように答え、机にうつ伏せた。

放課後の教室。2人は作戦会議をしている。

「…。まあ、うちは俺とお前…あとアゲハ、レーケル、マルトス、ポライトでいいか?」

本戦に参加できるメンバーは最大六人。

エラルドが提案したメンバーは、特別魔法科最強の6人である。

「このメンバーなら防衛魔法科の強固な防衛魔法を突破できる。

近接戦は俺とメチルでなんとかシリウスを倒そう。」

メチルは黙っている。

「どうした?」

「…Dリーグ首位は?」

「ああ、まだ結果は出てないな。でも多分言語魔法科が来るだろう。

物理魔法科はエースが不在、時間魔法科は辞退、開発魔法科は戦闘には向かない。」

「言語魔法科…。ガングートか。」

ガングートはメチルの幼馴染というかメチルの家の使用人の息子である。

中学に入ってから仲良くなったシリウス、小学校以来の友人のエラルドより付き合いが長い。

だがメチルはそれより気になることがあった。

「どうなんだ、あいつは?戦ってるの見たことないけど。」

「そうだな。俺も知らん。でも奴は魔導書に刻まれた魔法を使う。

案外シリウスを倒すかもしれないぞ。」

「……。あいつの固有魔法ってなんだっけ?」

「えーと確か…」

その時、ドアが開いた。

「ようガングート。シリウスに勝てそうか?」

エラルドが声をかける。

「…負けた。」

ガングートが答える。

青いネクタイが曲がっている。

「は?いやまだ始まってないだろ。」

「そうじゃなくて!」

ガングートが怒鳴る。

「…予選落ちした。物理魔法科に完敗した…」

(やっぱりか。)

「…くそっ、なんだよあいつ…」

「あいつ?誰のことだ?」

エラルドが聞く。

「…ジラーリアだろ。」

エラルドが「ああ、そういえばあいつそうだっけ」という顔をする。

「想像以上にきついかもしれないな。」

メチルはつぶやいた。

「ガングート、お前の見立てではジラーリアの魔法術式はなんだった?」

「知らねえ…。試合が始まって、魔導書開いた時にはもう…」

「物理系統の魔法だろうな。速度に関係していると俺は思う。

あの異常な速度は叡智の魔眼によるノータイム術式発動によるものじゃないか?」

以前上級生がやられた時一瞬だけ見えた。

彼女が走って頭を掴み、そのまま一気に奥の壁にまで走り抜けて壁にぶつけたのを。

最も本当に瞬きの間だった。時間にして0.1秒もかかっていない。

驚異的な速度と言える。メチルの触手もあの速さで動かすのは難しい。

「…。シリウスと同じ匂いがするな。攻撃を防ぐことが実質的に不可能なんじゃないか?」

「ああ。シリウスの攻撃は視覚できない。が、ジラーリアのはあまりに速すぎて残像にすらならない。ほとんどワープみたいなものだろあれは。」

「とりあえず、俺らは決勝でやばいやつとしか当たらないってわかったな。」

「で、どうする?どう対策するもがいいと思う?」

メチルは言った。

「俺に聞いてなんとかなると思っているならそれは間違いだぞ。」

「ああ。だからお前には言ってない。」

「?」

「いるんだろ、シリウス。出てこい。」


「…よくわかったね。なんで?」

シリウスは前から二番目の席、2人の3つ横の席に座っていた。

頬杖をついて2人を眺めている。

長い銀髪が陽の光を反射して輝いていた。

「別に。」

彼女が毎日放課後遊びに来るから今日も来ているだろうと推測しただけである。

「私の見立てでは、彼女の能力は時間系だと思うな。

時間の圧縮とかじゃない?

または計算系。計算式をどうこうするタイプじゃない?」

「ああ…でもそれなら時間魔法科に入るんじゃないのか?」

「それは思ったけど、別にー。」

シリウスが突然黙った。

そして突然消えた。

メチルも立ち上がり、触手をむき出しにした。

後ろは振り向かない。

「…何のようだ。」

「こんにちは、メチルさん。

いえ、この間のお礼をまだ言ってなかったな、と思って。」

ジラーリアがそこにいるのがわかる。

魔力探知で彼女がここに近づいているのは知っていた。

(…何かしてきたら首を刎ねる)

「シリウスさんは?いるんでしょ?」

右肩に手を置かれた。

「いいや。気のせいだろ。」

(まだ待つ。)

「なあ、いくつかいいか?」

今度はメチルから聞く。

「はい?何でしょう?」

「君の固有魔法は?」

「演算崩壊です。あらゆる計算式を自分の思うままに改変し、現実の変化結果を指定します。」

「………………。」

「あなたのは触手ですか。汎用性が高くていいですね。」

「叡智の魔眼、ねえ…。それは俺の曽祖父の持っていたものなんだが。」

「そうですか。じゃ、あなたは曽祖父とはあったことがないんですね。

同一の魔眼はこの世に一つしか存在しないので。」

「そうだな。だから何というわけでもないが…」

「シリウスさんに会いにきたんですけど、いないなら仕方ないですね。」

そう言って、踵を返して去っていくジラーリア。

その瞬間。

「ドスッ」

刃物が肉を切り裂く音がした。

「私に何のようかな?」

シリウスがジラーリアのことを刺した。

「………。」

使っているのは訓練用模造刀だ。

これなら致命傷にはならない。

すぐに治せるだろう。

「君、入学式やってないだろ?

代わりといっちゃなんだが、治してみろよ。」

シリウスが挑発し、刀を抜いた。

ジラーリアはそこにたったままだ。

「…なんだ、やっぱりいたんだ。」

そう呟くと、部屋を出ていった。


「どう思った?」

「うん。普通に攻撃は通るね。これならいけると思うぞ。」

「そうか?あいつ一瞬で治したぞ。油断してればお前の能力で秒殺だろうが、魔力ガードも硬そうだし、魔力総量も底が見えない。」

「それは模造刀だからでしょ。本番はもっと強いのを使うよ。例えばこれとかね。」

そういったシリウスの手には。

「テーリア・レベルスねえ…」


























読んでくださってありがとうございました。

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