赤い禁書
カクヨム甲子園の作品がようやく終わったので再開します
テスラは外に出ていた。
買い物に来たのだ。
と言っても、前回のような備品チームのお使いではなく、正真正銘自分の好きなものを買うことができる。
(…買い物なんて久しぶりにきたな…)
彼女は特に欲しいものもないまま、港町を歩いている。
前世のような大型ショッピングモールはないから正直不便である。
この街の名前を彼女は知らない。
ポケットで膨らんでいる財布が鬱陶しい。
カード決済を導入してくれよ、と思う。
トコトコと歩き続けている。
無限ホテルの制服を着ている人を何人か見かける。
備品か情報チームの人間らしい。
様々なものが売っている。
目が覚めるような輝きを放つ宝石も、鋭く尖った剣も、フカフカのクッションも、彼女の心をひかない。
元々物欲はあまりない方だから。
が、彼女はふとある一つの店の前で足を止めた。
「…本屋…」
本なら別館の300階くらいにあるが、ここにはきっと無限ホテルにはない本もあるだろう。
キイイーというドアが軋む音と共に、彼女は入っていく。
店内は驚くほど薄暗かった。
彼女は少しの間、扉の前で立ち尽くした。
暗闇にようやく目が慣れて、店内をぐるっと見回す。
天井についている切れかかったランプを交換するべきだ。
階段が奥の方に見える。
そしてその少し手前に、カウンターらしきもの。
あたりは本で埋め尽くされていて、かろうじて通路らしいものが判別できる。
「………………。」
トン、トン、と軽い音が響く。
彼女は適当に、足元の一冊の本を選んだ。
「…???」
題名が汚れていて読めない。
「…いらっしゃい。」
ビクッと震える。
「…………!」
信じられなかった。
視線を一切感じなかった。人の気配もしなかった。
生まれて初めての感覚。
(何者だ?この人…)
「……。」
薄暗闇の中、2人は見つめあった。
相手は老人だった。
が、緑色の目が怪しく光る。
腰のレベルスに手をかける。
「そんなものはいらんよ。」
テスラの動きを察知して、老人が言った。
「こんな老人を殺すのにそれを抜く必要などないだろう。」
テスラは手を離さなかった。
目もじっと前を見つめている。
「………無限ホテルの子か?」
「そうです。」
テスラは即答した。
「ここには、もう廃版となった本しか置いていない。
その中には禁書となったものもある。
魔導書も参考書もあるが…。何を求めてここにきた?」
「何も。ただふと惹かれただけです。」
淡々と答える。
言い知れない恐怖が、彼女を支配していく。
この前の老人を信用しきれない。
ぞくぞくする。
「ふむ…。」
老人はメガネをかけた。
「ならば、これなんてどうだろう?
今から5年前の禁書だ。」
そう言って手渡されたのは、一冊の赤い本。
「…鉄の味?」
タイトルを読み上げる。
(なんだこの文才のかけらもないタイトルは?)
表紙には、8つの三角形が描かれている。
「作者名はー」
と目を移し、止まった。
(…ジラーリア?)
「それは無限ホテル支配人、ジラーリアの日記だ。
一級禁書の一つで、現存するのはこれだけだ。」
「………」
彼女はそっとページをめくった。
読んでくださってありがとうございました。
この章はテスラ目線ではなくメチル(学生時代)目線でお送りします。




