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無限ホテルの雑務員。  作者: AO
赤ずきん
19/53

赤ずきん 5




「…ここは、どこ?」

テスラは1人つぶやいた。

どこかの部屋のようだが見覚えすらもない場所だ。

あたりは一面薄暗く、壁の色すらもわからない。

レベルスは寝る時も腰に刺していたから無事なようだ。

「…?」

テスラはレベルスを抜いて、警戒しながら部屋のドアの隙間をのぞいた。

人影が一つある。だが、随分と小さいし、武器も持っていないようだ。

「誰だ。」

テスラは毅然として問う。

そこには、

「…お客さん?」

宿主の育てていた女児がいた。

いつものツインショートの髪を揺らしながら立っている。

「ああ、君か。」

テスラはほっと胸を撫で下ろした。

「ここはどこか知ってる?」

女児は首をゆっくり横に振った。

「そう、じゃあとりあえずでようか。」

テスラはそっと暗闇のなかを歩き出した。

足音を一切立てず、女児の頭に手を置きながら前に進む。

ドアを開け、無限とも思える空間を歩いていく。

(…それはそうと、ここはどこだ?そもそもなんのための…)

そう思った瞬間。

テスラの目の前が真っ白に染まった。


信じられないほどの眩しさに、テスラは目を強く瞑り、手で目の前を覆った。

迫り来る熱。全身を焼かれそうで、女児を抱えて大きく後ろに下がる。

目をうっすら開けると、そこには1人の女子が立っていた。

「…お前は…」

「こんにちは、テスラさん。私は「マッチ売りの少女。」」

(…マッチ売りの少女、か。)

テスラは彼女のことを知っている。

メチルが以前戦ったことがあると言っていた。

魔法術式は「爆発砲火」。大きな火柱を縦横無尽に発射する魔法。

直撃すれば命はないだろう。

体は一部焦げているが、まだ動きそうだ。

レベルスを右手で構え、女児を左手で抱える。

「…おい、ここはどこだ。私になんの用がある。」

テスラは睨みながらきいた。

「ああ、あなたには死んでもらおうと思って。色々と面倒なことになりそうだし。」

「それは赤ずきんの意思か?」

「うん。」

「そう。じゃあ赤ずきんに心の中で謝罪しろ、責務を果たせずすみませんってな!」

いうが早いか、テスラはレベルスを握り、「マッチ売りの少女」に突撃した。

暗闇を切り裂いて、電撃が少女を襲う。

(…「落雷」。こんな魔法まで使えるの、レベルスは…)

レベルスは様々な魔法を状況に応じて自動で打ち出す魔道具。

なんの魔法が発動するのかは、テスラにすらも発動されるまでわからない。

ただテスラの動きに合わせて、最適な魔法が放たれる。

業火を防御魔法で防ぎ、切り掛かっていく。

(…熱いな…。魔法範囲も大きいから厄介だ。)

何度か切りかかった後、テスラは思った。

(まずい…このままだと負ける。)

攻撃が当たらないのだ。レベルスの「身体強化」で恐ろしい速さで動くテスラの剣撃も魔法も悉く躱され、負けすらも予想できる展開だと自覚した。

「その子を持ったまま戦うのはきついんじゃない?捨てたら?」

その発言にテスラは猛烈に苛立った。

梅雨期間の教室のごとくジメジメしていた心が、一気に炎を上げて燃え出した。

(それができたら苦労はしない…)

できたらどんなに楽だろうな、とテスラは空想して、女児をぎゅっと抱きしめる。

「悪いが私はお前とは違う。ここでお前の心臓をぶち抜いてやるよ。」

テスラは剣を前に突き出し、そう宣言した。

「そう、まあ私を殺したところでここには「赤ずきん」もいるし、どうにもならないのだけど…そもそも私には敵わないし。」

「じゃあ!」

テスラは叫んだ。

「なおさら都合がいい、あのあかい布切れごと焼き尽くしてやるよ!」

レベルスが赤く燃え上がった。

テスラは一度部屋の後ろに女児を置いて、光の勢いで「マッチ売りの少女」に突撃した。


「……………」

「だから言ったでしょう?私には敵わないと。」

テスラは視界が霞始めた。

右腕に大きな火傷を負ったらしい。

レベルスの回復魔法で若干ずつ症状が和らいでいるが、剣を強く握るのは難しそうだ

「これで終わりね。」

そう「マッチ売りの少女」がいうと、大きな火柱が彼女を襲った。

間一髪で避けたが、衝撃で天井がすごい音を立てて崩れ落ちてきた。

テスラは女児を抱え、必死で走り部屋を移動した。

後ろを振り返るとー

見覚えのある顔がいた。





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