避難
「それは大変だったわねー。」
テスラはアリエルの部屋にいた。
あの後またサービスチームの奴らが来たからだ。
今度は総じて3級程度の雑魚だったため、マリアの炎魔法で一蹴された。
が、いちいち相手するのも面倒だと思って上手い避難場所を探したら、ここになった。
「ゆっくりしていきなさい。」
アリエルはとても綺麗だ。体を構成するもの全てが清潔感に溢れている。
そして部屋はまるで持ち主を的確に表すように汚れひとつない。
彼女の部屋は広いのに質素なもので、机、椅子、布団、必要最低限の食料と水、信じられない量の薬剤と医学書があった。
どこの世界でも医者というものは大変らしい。
アリエルは「何か食べよう」と言って、台所に入った。
マリアとテスラは奥の書室にいた。
「こんなんだから彼氏ができないんだろうなあ…」
とマリアがぼやく。
確かに本は全て新品も同然で、表紙にはインクの掠れさえない。
だが読んでいないわけではないようで、ところどころにメモが書かれている。
「お姉ちゃん、魔法で何でも新品同然にしちゃうんだ…」
なるほど、とテスラは合点がいった。
「…というか、お姉ちゃんと話しててもなんか壁があるような気がするんだよね…
昔はそんなことなかったのに…」
テスラにしても、この部屋は落ち着かないようにも感じた。
全てが新しすぎるのだ。新品というものは常に他者を拒絶する。
その隔絶された感じが肌に染みて、自分達を痛めつけるのだ。
アリエルからすれば当然のことなのだろう。だがそれは慣れゆえのものだ。
その差異が、マリアのいう「壁」を作り出しているんだろう。
「ほら。」
少しして、アリエルが料理を持ってきた。
(…ラーメン?)
いい匂いのするスープ。金色の麺。溢れ出る既視感。これはラーメンではないか?
まさかこの世界にラーメンという文化があったとは。
コーヒーがあった時はそこまで驚かなかった。調理工程が単純だからだ。似たような植物があって、それを色々したらああいうふうに近いものができるんだろうくらいにしか思わなかった。
だがラーメンは違う。麺という概念には時間が経てばどんな文明も気づくだろうが、スープに加えてメンマや肉などを乗せるというところまで共通しているとは。
もしかすると一定の水準まで行った文明というのはほとんど似たり寄ったりのものなのかもしれない。
一口啜ってみる。
「…おいしい。」
思わずそう口に出す。まるで実家のような安心感。
「それはよかった。」
アリエルが笑い、3人で食べ始めた。
「さあ、そろそろ帰ろうか。」
マリアに提案する。
「え?」
マリアとアリエルは驚いたように顔を見合わせた。
「今日はここに泊まっていくんだよ?」
「え?」
「ほら、まだあいつらいるかもしれないし。」
「いや、いいよ。私は帰る。」
「そう言わないで、一緒に寝ようよー!」
マリアに抱きつかれたその瞬間。
「ガアアアアアン!」
という爆発音がして、三人は一斉にドアを見た。
(…何だ?まさかサービスチームの連中か?)
だとしたらまずい、とテスラは焦った。
生憎彼女はレベルスを部屋に置いてきた。
つまり丸腰である。
が、そんな心配は一瞬で吹き飛んだ。廊下と共に。
アリエルが何かを投擲したのだ。
そしてそれはホテル全体を倒壊させたんじゃないかと思うほどの爆発を引き起こし、あまりの轟音にテスラは気絶しかけ、マリアは強すぎる爆風を前に部屋の奥の壁まで吹き飛ばされた。
あたりには粉塵が舞っている。
「オホッ…今のは?」
「対魔法使い用特殊手榴弾、「TGAⅢ」よ。」
(…手榴弾?)
そんなものがこの世界にあることにも驚いたが、それ以上にその破壊力に驚いた。
とても気軽に室内で使っていい威力ではないと素人でも確信できるレベルだし、これをゼロ距離で喰らえば影さえ残らず粉々にされるだろう。
(あの大きさであの威力…。前世の科学力の比じゃないな。)
ふう、とアリエルが息をつく。
「全く、ふざけてるの?私じゃなかったら死んでるわよ?」
「あなたであることくらいわかっていましたよ、支配人。」
「人体実験も大概にしなさい。いつ死人が出てもおかしくないわ。」
「でも帝国治安隊や「あかずきん」の征伐にはこれらの兵器の力が必須ですよ。」
(…何でこの人生きてるの?)
テスラは会話を聞きながら呆然とした。
ジラーリアはおそらくさっきの爆撃に直に当たった。
影まで粉砕どころか、しっかり彼女の後ろについている。
そして彼女自身も少しの擦り傷はおろか糸のほつれさえ見当たらない。
(ふえあ?)
思わず変な声が出そうになる。
「で、何のようですか?」
アリエルがジラーリアに問いかける。
「ああ、テスラ。」
「はい?」
何故呼ばれたのかテスラには見当もつかなかった。
読んでいただきありがとうございました。
良作を作るべく、感想(アンチの中で特にヤヴァイのは消すかも)や評価など、どうかよろしくおねがいします。




