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読んでも読まなくてもどっちでもいい

きっと素敵な……

作者: 阿部千代

 エネルギーが枯渇してきている。そう感じた時に、おれはセリーヌの小説を読む。なしくずしの死。ひどい小説だ。罵詈雑言に次ぐ罵詈雑言。貧困。反吐。糞尿。精液。連発される感嘆符と三点リーダー。怒り。とてつもない怒り。爆発的な怒り。人間というものはこんなにも長く激しく怒れることができるのだろうか。セリーヌの小説は、凄まじいエネルギーの塊だ。こんなに下品で、こんなに愛おしい小説をおれは他に知らない。ストーリーテリング? キャラクター? 伏線? そんな小手先のもんはこいつには通用しない。するわけがない! おれは文学を体系的に学んだわけではないが、セリーヌが凄玉だということくらいはわかる。何度読んでもぶっとぶぜ。気づけば手のひらにびっしょり汗をかいていた。阿部千代、充填完了だ。覚悟せよ。


 真面目に小説家になろうで投稿されている文章を読み始めている。ランキング? そんなゴミの山に目もくれやしねえよ。今日はいくつか胸を打つ文章があった。そのなかのひとつ、おれはある方の文章で涙した。なぜかはわからん。いや嘘だ。かっこつけんな阿部ちゃん。そうだ。おれには涙の理由がわかる。わかっている。それはその方が自身の気持ちと、苦しみと、しっかりとじっくりと向き合いながら、粘り強く戦いながら文章を綴っているのが理解できたからだ。おれの勘違いかもしれない。だが……おれはその方の文章に強く引き込まれた。その方の文章と一体となった。その方の辛さが、苦しさが、おれの精神に流れ込んできたのだ。気づくとおれは泣いていた。結構派手に泣いた。泣くなんて何年ぶりだ? びっくりした。とてもびっくりした。なんだかおれは目が覚めたような気がした。


 いやマジで、小説家になろう、いいね。おれも下らない文章書いてる場合じゃないって、マジで。


 今日一日、おれは結構な人の文章に目を通したと思う。セリーヌと小説家になろうに投稿された文章群を交互に読んでいた人間なんておれが世界初じゃないか? 冗談はさておき、おれが反応した文章ってほとんどがおそらく若い人の書いた文章だった。言っちゃ悪いが、おそらく中年以上であろう人たち(もちろんおれも含む)が書いている文章ははっきり言って読めたもんじゃねえ。へらへらへらへら、群れてはしゃいで、みっともねえ。おれの価値観から言えば、醜悪と言うしかない。

 もちろん、彼ら彼女らはなにも悪くない。どんな楽しみ方をしたって個人の自由だ。あえて善悪で言えばおれの方が悪であり、圧倒的に理不尽なことをしていると、頭では理解している。だがおれは悔しい。ずっと連中が気に入らなかった。そして今日、おれの怒りの理由がやっとわかった。

 あんたら恥を知りなよ。若い連中があんたらの背中を見てるんだぜ。もうちっと、襟を正したらどうなんだい。

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