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第六十七話 妖精フェリカ

 ドメーヌ城の中庭にある大広場のつむじ風が止んだ頃、従業員とメイド全員の魔法量測定が終わった。


 季節外れの強い日差しが降り注ぐ中庭の大広場をあとにする従業員とメイドたち。


 ルーク・ドメーヌ国王は独立棟の三階の窓から、サーニャの結界魔法に護られながらメイドたちを眺めていた。

 国王はメイドたちの制服に満足した表情を浮かべてサーニャに尋ねた。


「サーニャ、メイドの制服カラーに初めて気付いたよ」

「はい、担当ごとに色分けされているそうです」


「なるほどーー ところでザードは無事なのか」

「はい、メリウスが居合わせたので回復術が間に合いました」


「それは良かったが、物騒なことだ」

「クーニャが城内に非常時体制を宣言しました」


「サーニャ、どうなるのか」

「はい、魔法士資格のある者はメイドを含めて武器携行になります」


「なるほど、それで見たことのないリボンを付けているのか」

「あれはリボンではありません」


「じゃあ何か」

「リボンに見せ掛けた武器です」


 国王はサーニャの言葉を聞いて押し黙った。




 その少し前、メイドと従業員の魔法量測定は終えたメイド長のクローラは、メイドと従業員たちに労いの言葉を掛け礼を伝えた。

 クローラは数人の部下を連れ国王がいる独立棟からルシア第二王女の部屋に通じる廊下を進んだ。


 クローラと部下の腰にはピンク色の大きなリボンが付けられていた。

リボンが非常時であることを関係者に伝えていた。


 部外者が見ればアクセサリーにしか見えないリボンには秘密があった。

リボンの中には殺傷性のある長い鋭利な針が数本隠されていた。


 夢月零は大広場横を通りかかりクローラを見かけリボンに気付き首を傾げた。

零は心の中で呟いた。


 クローラの周りには濃い水色に白いストライプのメイド服の女性が取り囲むように随伴している。

 彼女たちの腰にも色違いの大きなリボンがあった。

クローラのリボンとは色も大きさも違う。

桁違いに大きい。


「あら、零さん、誰かお探しですか」


 突然クローラに声を掛けられた零は焦った。


「いいえ、たまたま通りかかって・・・・・・ 」

「そう、私はこれからルシア第二王女の処に行くけれど、ご一緒しますか」


「はい」


 クローラは部下に指示を与え零を見つめて言った。


「じゃあ、行きましょうか」

「クローラ、さっき大勢の前にいたけど」


「ああ、あれね。臨時の集まりなの」

「でも、大勢の前で・・・・・・ 」


「メイド長の仕事よ」

「だって大勢」


「そうね、滅多に集まらないけど、大勢いるわね」

「クローラって、偉い人なの」


「零さま、私の仕事だから気にしないで」


 零はクローラの仕事と言う言葉に納得できないまま、ドメーヌ城の廊下をクローラと一緒に移動した。




 第二王女ルシアの部屋の前でルシアの秘書セーラが出迎えた。

緑色の髪と瞳がキラキラ輝いているが、いつもと違う。


 セーラのスカートスーツの色がグレー色だった。

慣例では、髪色と同じ色を着用することになっている。


 セーラはクローラを手招きして控えの間に案内した。

ピンク色の髪と瞳のコットンの秘書ニーナがいた。

 ニーナもセーラと同じくグレー色のスカートスーツを着用している。


 ドメーヌ城の秘書がグレー色のスーツを着用する時、非常時を意味している。

クローラや城の関係者は知っていたが零は知らない。


「コットン第一王女とルシア第二王女は遅れて到着します」

ニーナがセーラに言って零を見て微笑んだ。




 第二王女ルシアと第一王女コットンが、国王秘書クーニャに護られて到着した。

クーニャも例外に漏れずグレー系のパンツスーツを着用していた。


 零の横には、遅れて到着した玲子先生とメリウスがいる。

メリウスを見たクーニャが言った。


「ここは城内の中で一番安全ね、メリウス」

「はい」


「ところでザードは、なぜ軽傷だったのかしら、メリウスはどう思う」

「あの時、光ったでしょう。あれは妖精の光です」


 メリウスが言った時、メリウスの使い魔の妖精がメリウスの肩に止まって光輝く。


「メリウス、肩が光っているわよ」

ルシアが言うとコットンも頷く。


「フェリカ、みんなに姿を見せて上げて」

メリウスの言葉に反応した妖精は肩から飛び降りて床の上で大きくなった。


「フェリカ、みんなに挨拶して」

「メリウスさまの使い魔の妖精フェリカです。あの時は弾くのが精一杯でした」


 朝霧女学園の女子高生姿なって現れた妖精フェリカは、分身して三人になった。


「フェリカ、分身してどうする」

「メリウスさま、分身が王女ルシアさまと王女コットンさまをお護りします」


 メリウスはフェリカの発想に驚きながらも頷き了解した。


「ルシアさま、コットンさま、フェリカの分身がお護りするそうなので」

「分かったわ。でもメリウスはどうするの」


「クーニャさまと協力して、事件を調査したいと思います」


「メリウス、やっぱり魔法省なの」

コットンがルシアを見ながらメリウスに言った。


「まだ分かりません。ただザード大隊長が狙われたことで、その可能性もありそうです」


 フェリカがメリウスに囁く。

「メリウスさま、あれには魔法銃が使用されています」


「それでフェリカの遮断が阻害されたとすれば納得するわ」

 ルシアが探偵気取りでメリウスに言って胸を張って見せた。


 その時、ルシアの部屋から見える中庭で大きな爆発音がした。

閃光が薄暗い部屋の中を明るくした。


「メリウス、今のは」

「クーニャさま、城内にいる限り安全です」


「と言うと」

「結界魔法の中ですから」


 王女コットンが窓から中庭を見て声を上げる。


「メリウス、何かいるわよ・・・・・・ 」


 ルシアとコットンも恐る恐る中庭を覗いて後悔する。


「悪い夢を見ているの私たち・・・・・・ 」

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三日月未来(みかづきみらい)

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