第六十五話 メイドさんの身体検査!
この話は約二千五百文字です。
ドメーヌ王国で起きた国王暗殺未遂事件の調査を終えたルイ・ザード大隊長は、ルーク国王との謁見を終え執事ダイヤが所属する社交部本部に向かった。
ダイヤは筆頭執事スペードの部下である。ザードはダイヤに確認したいことがあった。
ドメーヌ城から離れた東の端にスペードが管理する社交部本部がある。二階建ての兵舎が軒を連ねている付近だ。
本部も同じ二階建て構造だった。城からの道には白砂利が敷き詰められている。
元国王のシャメロンの使者であったキャンニャも本部の執事ダイヤの下で執事見習いをしていた。
ザードは社交部の入り口で受付近くにいた女に徐に尋ねた。
「ーー 急で悪いのだが、執事のダイヤに聞きたいことがあって来ている」
「ダイヤさまなら、ちょっと前にスペードさまに呼ばれて城に向かいましたが・・・・・・ 」
「ところで君は誰かな」
女はザードに城の身分証を提示しながら言った。
「私はキャンニャと申します。一度だけお会いしたことがあります」
「そうか失礼した。私は大隊長のザードだ。ダイヤに確認したいことがある」
「どのようなご用件でしょうか」
「実は秘書のクーニャを探しておるが見つからなくて困っておる」
「クーニャさまなら、今朝、ブレックファーストルームの入り口でお見かけしました」
ザードは、腕組みしながら思い出したようにキャンニャに言った。
「キャンニャ殿、悪いけど私とブレックファーストルームまでご一緒してくれないか」
「ええええ・・・・・・ 」
「実は、どうもこの城ーー 広すぎて位置がよく分からないのだ・・・・・・ 」
「はい、私も隊長と変わりませんが」
キャンニャはポケットから小さな手帳を取り出してザードに言った。
「ええと、今朝のブレックファーストはーー ええと東棟の二階となって聞いております」
「じゃあ、そこまで案内してくれないか」
「ドメーヌ城は場所が分かっていても迷路ですから私もあまり自信がございません」
「まあ、事情は理解した・・・・・・ 」
ザードが言い掛けた時、ひょっこり執事のダイヤが目の前に現れる。
「あ、ザード大隊長閣下」
「おおーダイヤ! 探していたぞ! 」
「何でございますか」
「いやなあ、クーニャ殿を探しておってキャンニャ殿にお願いしておったところだ」
「閣下、クーニャ殿なら、城内の庭でお見かけしましたが・・・・・・ 」
「すれ違いか・・・・・・ 」
ザードは少し俯きながらダイヤに言った。
「分かった、とりあえずダイヤ殿とキャンニャ殿もしばらく、私のお供をしてくれないか」
「お邪魔でなかったら・・・・・・ 」
キャンニャとダイヤが声を合わせるように答えた。
執事のオフィスがある社交部本部からドメーヌ城の正門までは貴族なら馬車を使うほど離れている。白砂利が行手を阻み歩き難いからだ。
ザードは任務以外で馬車を使うことがない。
正門近くまで移動すると聞き慣れた若い女の声が聞こえた。水色髪の第二王女ルシアと紫髪の第一王女コットンの声と分かった。
王女の前にはコットン同じ紫髪の色の女性が立ち話をしている。
クーニャはコットンと同じ紫髪と紫の瞳の上級魔法士で国王秘書ターニャとサーニャ双子姉妹の一歳上の姉だ。彼女はメリウスと一緒にルーク・ドメーヌ国王の元で特殊任務についている。
ザードは子どもが宝ものを見つけたように白砂利の上を駆け出していた。執事ダイヤとキャンニャも慌ててザードの後ろを追いかける。
ランティス王子とティラミス王子がザードの行手を遮るように両手を高く上げて止まれの合図をザードにしている。
大隊長ザードは意味を理解出来ず足を止めた。その刹那、乾いた銃声の音が響き、白樺に囲まれた池に水飛沫が上がった。
大魔法使いのメリウスが予知魔法で未来を見て、ランティスとティラミスに見張りをさせていた。
ザードの頬に線で描いたような血痕のあとがうっすら残り、傍にいたキャンニャが応急処置で対応した。
執事見習いのキャンニャも初級レベルの治癒魔法が使える。
「隊長、大丈夫ですか」
「ああ、メリウス。いてくれて助かる」
ザードは、言葉を残して気絶した。
ランティス王子がメリウスに言った。
「隊長はどうなるのでしょうか」
「ランティス王子、隊長は銃弾の毒に当たっただけ。
ーー それに無詠唱の治癒魔法で解毒してあるから隊長は大丈夫よ」
「本当、メリウスさんがいてくれて助かったよ」
「ティラミス王子、これはちょっと厄介です」
「どう言うことですかメリウスさん」
「ザード隊長は、巻き込まれたのでなく狙われています」
「意味が分からないのですが」
「敵は私達の矛先を変えようと隊長を生贄にしようとしました」
「なるほどーー ミイラ取りがミイラになるのと同じですね」
「はい、そうなるでしょう」
メリウスはクーニャを呼んで、隊長の警護をお願いすることにした。
クーニャを探していた隊長が狙われ倒れたことにルシアとコットンも動揺を隠せない。
日本から訪問しているゲストは城内を許可なく移動出来ないので事件を知ることがなかった。
「クーニャさん、魔法省は手段を選ばないでしょう」
「メリウスさん、どうすれば・・・・・・ 」
「分かりませんーー 出来ることは目立たないことです」
「結界は大丈夫でしょうか」
「結界以前に内部からの可能性があります」
「内部ですか」
クーニャは呟き、ダイヤにメイド長のクローラを呼ぶように言った。
ダイヤは足早に城の正面玄関横の使用人専用通路に消えた。見習いのキャンニャもダイヤに同伴して追いかけた。
「クーニャ、クローラを呼び出してどうするの」
「それは言えませんーー 今はね」
上級魔法士クーニャが何を考えているのか王女ルシアにも王女コットンにも分からない。ただ、すり替え事件のことが頭の隅から離れない。
「メリウス、まだ他に何かあるの」
「零さま、メリウスは王国の重大な用件を軽々しく話す立場ではありません」
メリウスはランティス王子とティラミス王子を見て微笑んだ。
「なるほどね、メリウス」
零が囁く。
しばらくして、ダイヤたちがメイド長のクローラを連れてやって来た。
クーニャはクローラに命令口調で伝える。
「クローラ今日は、これから大浴場で身体検査をします」
「私ですか? 」
「いいえ、使用人全員とメイドも全員です」
お読みいただき、ありがとうございます!
ブックマーク、評価を頂けると嬉しいです。
投稿後、加筆と脱字を修正をする場合があります。
三日月未来




