第六十二話 朱雀先生を我が国に招待したいのだが
『第六十二話 朱雀先生を我が国に招待したいのだが』
優翔玲子は、携帯から同僚の朱雀茜を呼び出していた。
玲子が諦め掛けた時、携帯が繋がる。
玲子は要件を素早く伝え、折り返しの連絡を待つことになった。
しばらくして、玲子の携帯が鳴る。
「もしもし玲子、茜です。
ーー 部員と連絡が取れたわ・・・・・・。
ーー ただ、午後は暑いから午前中と言っているけどいいかな」
「分かったわ。無理を言っているのはこっちだから」
「じゃあ、明日の十時でお願いします」
玲子は携帯を切るとメリウスたちのいるラウンジに戻って寛ぐ。
「メリウスさん、朝霧女学園の剣道部に十時に決まったわ」
「玲子先生、明日、剣道部に行くんですか」
「そうよ、雫ちゃん」
「じゃあ、私もいいですか」
「構わないわ。じゃあ、零ちゃんと一緒にどうぞ」
朝霧女学園は、零と雫が住む夢月邸から徒歩圏内にあった。
夢月邸の前の坂を下り、駅方向に行く道を左折して線路沿いに進みまた左折する。直進すれば大きな三階建の青い色の体育館が視界に入る。校舎は五階建の白い建物だ。
新入生は体育館を目印に道を覚えた。零がメリウスの魔法時計と出逢ったのも同じ道だった。
零と雫は、女学園と自宅の中途半端な距離を恨めしく思った。
「雫、駅は近いのに学校は遠いわ」
「本当ね、この中途半端な距離のお陰で駅を往復するのと変わらないわね」
メリウスは聞き耳をしまいスルーしている。
「まあいいわ。ここに駅を作ればいいのだから」
「零、馬鹿なこと言わないで! 」
夢月双子姉妹が他愛もない会話をしているうちに朝霧女学園の前に到着した。
優翔玲子は剣道部顧問の朱雀茜の携帯を呼びだす。
「茜、着いたわ」
「じゃあ、剣道部がある武道場に真っ直ぐ来て」
「分かったわ、じゃあとで」
玲子は電話を切り、ルーク国王、シルク妃に説明した。国王の脇には、サーニャとターニャがいる。シルクは魔法使いメリウスを傍から離さない。
第二王女ルシアには秘書セーラ、第一王女コットンには秘書ニーナが同伴している。零と雫と玲子は、道先案内人として目の前にいた。
メイド長クローラとメイド三人は夢月邸に残った。筆頭執事のスペードもクローラと残ると言ったがルークが拒否して却下された。
体育館の並びに女学園には不釣り合いな武道場の建物があった。真っ青な壁の武道場に時代錯誤感が否めない。
「茜、紹介するわ。電話で伝えた外国のお友達よ。
ーー ルークさん、シルクさん、ルシアさん、コットンさん・・・・・・ 」
玲子の紹介が終わり、靴を脱ぎ武道場の中にルシアたちは入った。
「零、ここが武道場なの」
「そうよ、ルシア姉さん。思ったのと同じ」
「いえ、思ったより広いわね。女学園の名前が同じでもまるで違うわ」
朱雀茜は、部員を三人呼び出していた。運動神経のいい雫が、手を挙げて朱雀に言う。
「朱雀先生、私もいいかしら」
雫は中等部時代に初段の免状を取っていた。
「あなた、確か有段者ね。体育授業で覚えているわ。
ーー 雫さん、部員から剣道の防具借りて準備してください。
ーー 手拭いは、私のを使っていいわ」
雫は、頭をぺこりと下げ挨拶して更衣室に消えた。
零は、姉の雫に時より嫉妬心がメラメラと燃え上がった。
「零さま、良からぬ感情はエネルギーを消費するだけです」
「分かっているわ。でも、悔しいわよ」
「それが、いけません。
ーー 倦まず弛まずしていれば、
ーー 人生には必ず僥倖がございます」
「メリウス、ぎょうこうって何」
「零ちゃん、僥倖はね。思いもかけない幸運のことよ」
「玲子先生、じゃあ幸運を待つことなの」
「そうよ、長い人生は色んな坂があるわ」
零が考えていると部員三人と雫が更衣室から出て来た。
朱雀茜先生が、部員に模範試合の注意を伝え組み合わせを知らせた。
雫は、同じレベルの部員と対決することになる。
「じゃあ、みなさん、軽い準備練習を始めてください」
武道場内に竹刀のぶつかる音が響く。竹の爽やかな音だった。
「玲子先生、雫ちゃんの刃筋、本当に初段なの」
「本人は、自宅で竹刀の素振りを毎日していると聞いているわ」
「なるほど」
朱雀は組み合わせ相手を二段の者に変更することを雫に伝えた。
「零、いよいよ試合ね」
「ルシア姉さん、雫でも部員相手じゃ勝ち目ないよ」
「零、それは、違うわよ。
ーー 勝つか負けるかじゃないわ。
ーー どんな試合をするかよ」
ルシアの熱の籠った言葉に、さすがの零も悠長にしていられなくなった。
朱雀が道場の中央に立ち、第一試合始めの合図をした。
実戦さながらに竹刀のぶつかる音がルシアたちの耳に届いている。
「小手!」
「面!」
実力が拮抗して決着が付かないと思った時、返し胴が決まり、朱雀が赤旗を上げた。
第二試合は、雫と二年生の組み合わせだ。
試合が始まり、雫が一方的に攻めていたが、練習不足の雫に練度が足らないことを朱雀は感じた。
相手の小手が決まり、赤旗が上がった。
「ルシア姉さん、剣道、どうだった」
「零、わくわくしたわ」
「コットン姉さんは」
「うん、好きになりそうよ。
ーー 小手って、スマートよね。
ーー 相手を殺さず続行不能にするんでしょう」
「コットンさん、良かったら、あとで朱雀先生に質問してみて
ーー 私はよくわからないので」
ルーク国王が玲子に言った。
「朱雀先生を我が国に招待したいのだが」
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
『第六十二話 朱雀先生を我が国に招待したいのだが』
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三日月未来




