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第五十七話 メリウス、シルクを連れて行ってくれるか

『第五十七話 メリウス、シルクを連れて行ってくれるか』

約二千三百文字です。

 皓月(こうげつ)がドメーヌ城の中庭中央端に置かれた鉄製の白いベンチを照らしいる。

 水色髪の第二王女ルシアと紫髪の第一王女コットンは、緑髪の秘書セーラとピンク髪の秘書ニーナと一緒に中央のベンチを選び腰掛けた。


 部屋着のドレスに着替えた、メリウス、零、玲子の三人は、ルシアたちの右隣のベンチを選ぶ。

日本の小金崎、南、早乙女、山女は残るベンチに移動した。


「みんな、まだディナーまで時間があるわ」

コットンが言った。


「コットン、なんかあるの」


「ルシア、覚えている。

ーー 今夜は、年に四回あるお月さまが見える日よ」


 無頓着なルシアには、姉の言葉の意味がわからない。

「・・・・・・ 」


 ルシアが考えあぐねていた時、零が夜空を指差した。


「ルシア姉さん、あれじゃないの」


「零、そうあれ、コットン姉さん、思い出したわ」


 コットンの趣味は夜空を眺めることだった。


「来たわね。これをみんなに見せたかったのよ」


 夜空に浮かぶ二つの月を見ながら、小金崎隼人はメモ帳にメモを書き始めた。


「小金崎さん、何を書いているの」


「コットンさま、これは日本では見られないからメモしています」


 コットンが小金崎のメモを覗く、下手くそな月の絵がなぞらえられていた。


「ねえ、それ朧月(おぼろづき)でしょ」

零が覗いて言った。


「零ちゃん、これは、ただのメモだよ」

 小金崎は苦笑いを浮かべメモ帳をしまう。




 メイド長のクローラがランティス王子とティラミス王子を連れてやって来た。


「ルシアさま、コットンさま、まもなくディナーですが」


「クローラ、今夜は、どちらですか」


「スペードさまのお話では、シルクの間と伺っています」


「クローラ、それは母専用のファミリーディナーの間よ」

コットンが言った。


「じゃ、今夜もお化けあるかもしれないわ」


「ルシア、悪い冗談は引き寄せるわよ」

 コットンは、そう言って中庭に面している窓を見上げ手を振る。


 ルシアがその先を見上げると、母のシルク・ドメーヌ妃が手を振っていた。


 セーラ、ニーナが立ち上がり、お辞儀をしたので、零、玲子、メリウスもお辞儀を真似、他の者も続いた。


 皓月が、中庭を絵画の絵のように明るく浮かばせていた。




 ディナードレス姿なったターニャとサーニャがルシアとコットンを呼ぶ。

ルーク・ドメーヌ国王の秘書が呼びに来たバツの悪さに、コットンが足早で廊下に戻った。


「コットン姉さん、待って」


「ルシア、遅刻よ」


「そんなこと言ったって、セーラやニーナいないと無理よ」


「わかったわ」




 セーラ、ニーナ、クローラが他の者を引き連れてルシアたちと合流した。

不機嫌そうなターニャとサーニャにコットンは謝罪した。


「シルクさまが、首を長くしているわよ」


「ターニャ、ごめん」


 コットンが両手を合わせてターニャを(なだ)めた。

ターニャは頑固なので、臍を曲げると面倒くさい。

ルシアもコットンと一緒にターニャのご機嫌を取る。


「じゃあ、みなさん、行きますわ」

サーニャの明るい声の後ろに一同が続いた。


「コットン姉さん、ちょっとタイミングが悪かったわね」


「そうね、つい時間忘れていたわ」


「母のいるディナーって、久しぶりね」


「それで、ターニャがピリピリしているみたい」

 サーニャが、振り返りコットンに囁いた。


 廊下の先に螺旋階段が正面と左右に見えた。


「ルシア、こんな廊下あった」


「迷路城でしょう。なんでも不思議じゃないわよ」


「そうね。ターニャとサーニャ、そして最強魔法使いメリウスがいるものね」


「コットン姉さん、月に当てられた」

 ルシアの声に零が反応して笑い出し、玲子先生が慌てて止める。


「零、そんなに面白い」


「だって、ルシア姉さん、時より異次元な発想するから」


「零、異次元ね。いい響きよ。日本に行きたいわ」


「ルシア、それ、お母さまの前では禁句よ」


「そうね、お化けが出ないよう」




 一同は、ディナールーム前に到着した。

 メイド長クローラ、秘書のセーラとニーナは一言を残し、手前の控えの間に退がる。

 シルク・ドメーヌが、ルイ・ザード大隊長と一緒に、双子の王女を出迎えた。


「ルシア、コットン、今夜もご一緒ね」


「はい、お母さま」


「ところで、ルシア、お化けって何かしら」


「えええ、最近、学園で、そう言う噂が聞こえていました」


「ルシアは、子どもの頃から嘘が下手ね」


「お母さま、ルシアは下手です」


「そうね、コットンは悪役令嬢みたいにお上手よ」


 コットンは、つい舌を出して慌てた。


「でね、あなたたち、私に隠していない」


「えっーー 」


「たとえば、日本に行ったとか」


「お母さま、わからないわ」


「じゃ、あの四人だけ召喚魔法で召喚したの。変ね」


 シルク・ドメーヌはルシアの顔を覗き込み反応見て、コットンに言った。


「コットン、ルシアの表情が白状しているわよ」


 コットンに代わってメリウスがシルクに言った。


「魔法時計の不具合で、少しの間、次元空間に出てしまいました」


「そうなの。メリウスさん、若いのにフォローがお上手ね」


 メリウスは、腹を決めてシルクに言う。


「もしもですが、シルクさまがお望みならメリウスがご一緒します」


「メリウスーー 」


 ルシアとコットンは、メリウスの思わぬ対応に言葉を失う。




 ディナールームの給仕がワイングラスに白ワインを注ぐ。

皓月の灯りがディナールームのカーテンの色を変えていた。


「メリウス、シルクを連れて行ってくれるか」


 ルーク・ドメーヌ国王が、メリウスの肩に手を置いて言った。


「ドメーヌ国王、メリウスにお任せくださいませ」


 零と玲子、ルシアとコットンも急展開に血の気が引く。


 ランティス王子とティラミス王子は、ワイングラスを傾けてその場を繕っていた。


「ランティス王子、今夜の皓月、王子の金髪みたいに明るいわね」


「零ちゃん、お褒めいただきありがとうございます」

 ランティスは妹を見る眼差しで零を見て微笑んだ。

 『第五十七話 メリウス、シルクを連れて行ってくれるか』

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三日月未来(みかづきみらい)

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