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第五十六話 零さま、夜はまだ早うございます

『第五十六話 零さま、夜はまだ早うございます』

約二千四百文字になりました。

 双子の王子、ランティスとティラミスに案内された一同は、朝霧女学園の理事長室前で理事長秘書を待っていた。


「ランティスさま、ティラミスさま、

ーー そして他のみなさんもお入りくださいと理事長の許可がございました」


「ありがとうございます」


 ランティスとティラミス続いて、王女のルシアとコットンが続き、小金崎、早乙女、南、山女が後方でそわそわしている。


「小金崎さん、落ちつかないのも仕方ありません。

ーー でも、お気持ちに関係なく

ーー 夜が来て朝が来ます。

ーー 何も考えず深呼吸して見てください」


「玲子先生、ありがとうございます」


 日本からの訪問者四人は、深呼吸を繰り返してリラックスした。




「あら、みなさん、お越し頂けたのね」


 朝霧女学園理事長のシルク・ドメーヌは、会議室のような応接室に手招きして着席するように言った。


「それで早速ですが、本日の午後からご参加して頂けますか。

ーー 私が全校生徒の前でご紹介しますので」


シルクはそう言って、秘書を呼び指示したが命令と同じだった。


「理事長が、その前に昼食と言っています」


 親切なランティス王子が秘書に代役を申し伝える。


「じゃあ、折角のランティス王子の申し出ですので、王子にお願いします」


 ランティスは、胸を叩いて任せと言わんばかりのジェスチャーをしている。




 日替わりメニューを選んだ一同が食事を終えた頃、理事長の秘書がランティス王子の耳元で囁く。


「では、そちらで理事長と合流してください」


「じゃあ、そこへ小金崎さんたちを連れて行けば、いいんですね」


「お願いします」


 秘書はランティス王子に会釈して食堂を出て行く。




 ルシアとコットンはランティスを見ながら、小さなガッツポーズをして講堂への廊下を急いだ。


「ルシア、“鬼の居ぬ間に洗濯“ね」


「コットン姉さん、なにそれ」


「玲子先生のお国の諺よ」


「どう言う意味なの」


「怖い人や、うるさい人がいない時に息抜きするとか言っていたわ」


「なるほど、お化けのことね」




 講堂入り口で、玲子先生、メリウス、零がルシアとコットンを待っていた。


「零、あなたたちは理事長に呼ばれていないの」

コットンが尋ねた。


「小金崎さんたちと違って生徒と先生ですから」

と零は言って玲子を見る。


「そうね、嵐が過ぎるのを待ちましょう」

 玲子の言葉にコットンがクスクス笑い出す。


「玲子先生、あのお化け、大荒の海と変わらないわ」

 ルシアが調子に乗って言うと、後ろにいた私服兵が咳払いをする。


「なんで、あなたたち、ここにいるのよ」

ルシアが私服兵に言う。


 ルシアとコットンに最敬礼した私服兵は、緊張した表情でルシアに事情を話した。


「はい、王女さま、国王陛下のご命令がございました。

ーー 本日はルイ・ザード大隊長もご参加予定と聞いております」


 メリウスが壇上を指差して言った。

「隊長なら、壇上の袖にいますよ」


「ええ、どこですか」


「舞台袖ですから、普通は見えません」


「じゃ、メリウスだけね」

ルシアが言う。


「ルシアさまとコットンさまのご登校を国王もご心配されています」


「だから、城内で特別授業していれば良いのにね」

コットンが皮肉を込めて私服兵に言う。




 朝霧女学園生徒会長の挨拶のあと、シルク・ドメーヌ理事長が、外国からの四人を紹介する。

シルクは“外国”というだけで国名を言わず終えた。


 メリウスは、いざとなればと思っていたが大丈夫なことを確信している。


「メリウス、“日本”のこと伝えなくていいの」


「零さま、“外国”には変わりありませんので、よろしいのですよ」


「そういう問題かな」


「はい、そういう問題ですが」




 太陽が西の空に傾き掛けていた。

日没には遠い時間帯だった。


 メリウスたちと小金崎たちは理事長室で再び合流した。


「メリウスさん、私も今日の仕事を終わりにします。

ーー 城へ、ご一緒しましょう。

ーー ザード隊長、よろしいでしょうか」


「はい、シルク王妃さま」


「ザード、王妃は公式以外、省略してください」


「シルクさま、失礼しました。

ーー 裏門で馬車を待機させております」


「分かったわ、ザード、案内してください」


 シルクはザードが差し出した手に体重を預けてゆっくり立ち上がり、ザードと一緒に裏門へ移動する。

裏門は、関係者以外の使用が許可されていない。


「お母さま、ルシアとコットンも、また登校でしょうか」

コットンが尋ねた。


「あなたたちは、明日以降は自由よ。

ーー でもね、ランティスとティラミスは、あの者たちに必要ね」


 コットンは、シルクが言う意味を推し量りながら言った。

「じゃ、しばらくだけ、メリウスと一緒に登校します。

ーー メリウスいいわね」


「コットンさま、そういうことなら、喜んでお供致します」


「メリウス、零も一緒ですか? 」


ルシアが尋ねた。


「はい、そうなります」


 勉強嫌いで運動音痴の夢月零は、メリウスの言葉に肩を落とし、隣の玲子先生が慰めている。


「まあ、いいじゃない。

ーー あなたの青春は、これからよ」


「先生・・・・・・ 」




 二台の馬車は、ドメーヌ城の跳ね橋を通過して白樺の森に入る。


 一台目の馬車には、双子の王女と王妃が乗車している。

メリウスは、王妃の依頼を受け一台目に乗車。


 ルイ・ザード大隊長は二台目の馬車に乗ることになった。

貴族社会の不文律は、王妃の前では絶対だった。


 馬車が正面玄関に到着して筆頭執事のスペードが王妃を出迎えた。

メイドたちは左右に分かれて整列して最敬礼の姿勢を維持している。


 スペードがシルク・ドメーヌ王妃の半歩後ろを歩いている。

反対側には、ドメーヌ国王と王妃の指示を受けた大魔法使いのメリウスがいた。

 第二王女ルシアと第一王女コットンが、メリウスにウインクした。


 その後方にルイ・ザード隊長とランティス王子、ティラミス王子が続き、玲子先生、零、小金崎、南、早乙女、山女の順になった。

 メイド長のクローラが部下を従えて螺旋階段下で待機していた。


 正面玄関に夕陽が差し込み始めた城の庭が黄ばむ。


 夢月零は、ディナーのメニューを思い浮かべてはにかむ。

 メリウスが、零にテレパシーを送った。


「零さま、夜はまだ早うございます」

 『第五十六話 零さま、夜はまだ早うございます』

約二千四百文字になりました。

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三日月未来(みかづきみらい)

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