第五十五話 やっぱり、お化けいたわね!
『第五十五話 やっぱり、お化けいたわね!』
約二千七百文字になります。
三日月未来
シルク・ドメーヌ妃は上機嫌な様子で、謁見の間の中央に置かれた大理石の円卓にルーク・ドメーヌ国王を招き寄せた。
第二王女ルシアは、母の様子を見て心の中でひとり言を呟きながら席に着く。
第一王女コットンも父ルーク・ドメーヌと一緒にシルクの脇の席を選んだ。
案内を終えたメイドたちは、謁見の間の端に置かれたベンチで待機することになる。
メイド長のクローラも一緒だった。
筆頭執事のスペードは、メリウス、零、玲子先生と一緒に、ルシアたちのいる中央の大理石テーブルに同席した。
円卓の両脇には、長方形の木製テーブルが二脚置かれていた。
三脚のテーブルは、最近コットンの都合で用意された物だった。
コットンは滅多に使われない謁見の間の再利用をルシアと相談していた。
その結果、謁見の間をティールームにすることに二人は決めた。
左側にある長方形テーブルにランティスとティラミスの双子王子が着席した。
小金崎、南、早乙女、山女の四名も同じテーブルに同席する。
国王秘書ターニャとルシアの秘書セーラは、もう一方の右側の木製テーブルを選んだ。
国王秘書サーニャとコットンの秘書ニーナも同じ席を選び着席する。
公式会議ではない家族団欒のお茶会と、コットンとルシアは考えていた。
双子の王女の母、シルク・ドメーヌ妃は質素なデザインのスカートスーツに着替えていた。
彼女の青色の髪と合わせてるような、明るい青色のジャケットとスカートだ。
シルクの瞳も澄んだ青色をしている。
この国の人は例外を除き髪と瞳が同じ色をしていた。
焦茶の瞳を持つ日本人から見れば、異様さもカラフルに映っていただろう。
シルク・ドメーヌが急に立ち上がり、大理石のテーブルの隣テーブルに歩み寄り笑顔で言った。
「初めまして、シルク・ドメーヌと申します。
ーー 朝霧女学園で理事長をしています」
小金崎隼人、南香織、早乙女沙織、山女京子の四人が立ち上がろうとした時、理事長が両手を広げて制止のポーズを取り四人を着席させた。
「ありがとうございます。
ーー ところで、あなたたちにお願いがあるのね」
「シルクさま、なんでしょうか」
小金崎が答えた。
「朝霧女学園で、臨時教師をして頂きたいの。
ーー 子どもたちに異文化を伝えることもいいかなと思っているわ」
突発的な出来事に謁見の間の空気が凍り付いていた。
メリウスがシルクに言う。
「シルクさま、あの四名は教師では、ございませんが」
「メリウスさんね。ルークから聞いているわ。
ーー でもね。ちょっとだけ協力してもらいたいの」
「何をでございますか」
「そうね、生徒たちの勉強に立ち合ってもらいたいの。
ーー 教えるのじゃなく・・・・・・。
ーー 一緒に考えて欲しいの」
魔法使いのメリウスはシルクの意図を読み取りほっとした。
小金崎隼人がシルクに言った。
「映画監督をしている小金崎隼人と申します。
ーー 南と山女はスタッフです。
ーー 残る早乙女は女優をしています。
ーー そんな四人ですが、お役に立てれば喜んでさせて頂きます」
「小金崎さんでしたね。ありがとうございます」
思わぬ展開に双子王女のルシアとコットンも肩を撫で下ろした。
ルーク・ドメーヌ国王の胸騒ぎは続いている。
国王は、シルクの性格から次が隠れていることだろうやきもきしたが、何も起きず時間が過ぎた。
お茶会が終わり、シルクが小金崎たち四人に名刺を渡して言った。
「もしも分からないことがあったら、名刺の住所に連絡ください」
「シルクさま、ありがとうございます」
「じゃあ、学園で待っているわ。
ーー 道が分からなかったらランティス王子に案内してもらって」
シルクは国王秘書のターニャと一緒に、ルシアの部屋を退室して行った。
もうひとりの国王秘書サーニャは、ターニャを見送り国王の傍で待機している。
「ルシア、お母さまのご機嫌が良くて良かったわね」
「本当、いつお化けが出て来るかとハラハラしていたわ」
「ルシアには、お化けなのね」
「だって急に人格が変われば、驚くでしょう」
「そういうことか? じゃあ、私もかな」
「コットン姉さんは、いつかの事件以来変わったわ。
ーー 別人と見間違えるほどに」
「じゃあ、お母さまにも、あそこがいいかな」
「コットン姉さん、あれはメリウスたちの奇跡のお陰よ。
ーー その奇跡がなかったら帰れなかったわよ」
「そうね、中間世界なんて考えただけでもぞっとするわ。
ーー ところでメリウスたちは」
コットンが思い出したように呟く。
「クローラが案内して、今頃は、女子区画ね」
ルシアが出入り口の扉を見ながらコットンにいう。
「女子区画って、内庭に面しているわよね」
「姉さん、それが、何か」
「この部屋も内庭に面しているわ」
「その内庭は、別庭よ。このお城は特殊なんだから。
ーー ランティス王子やティラミス王子の男子区画は外庭側よ」
「じゃあ、お父さまやお母さまは? 」
「姉さん、お父さまの執務室が外庭側でも、寝室は私たちと同じ特別区画じゃないかしら」
双子の王女は、想像の中で会話を楽しんでいた。
メリウスが突如、ルシアとコットンの前に現れて言った。
「ルシアさま、特別区画ではございません」
「メリウス、どこから現れたの? 」
「メリウスは大魔法使いでございます」
「メリウスって、神出鬼没なの? 」
「メリウスですから」
「ところでメリウス、お父さまの寝室は何処なの」
「もしも知っていても申し上げられません」
「それは、どういうこと」
「国王さまには、いくつもの隠し部屋がございます。
ーー なので、知っている者は筆頭執事のスペードさまくらいじゃないでしょうか」
「ところで、メリウスだけ、なんで戻ったの」
「ルシアさまとコットンさまのお声が聞こえて来たので戻りました」
「もしかしてメリウスって地獄耳? 」
「はい、天国耳かも知れません」
ルシアとコットンは笑いを堪え切れずにいた。
「ターニャは、大丈夫かな」
「ターニャさまは、私服兵と一緒に王妃であるシルクさまを送り届けて、
ーー こちらに戻ろうとしています」
秘書セーラの声が聞こえた。
「ルシアさま、ターニャさまが戻られました」
「セーラ、お通ししてあげて」
ターニャは、緑色の瞳を輝かせて快活な足取りでルシアの処にやって来た。
「ルシアさま、シルク王妃からの伝言がございます」
「ターニャ、なにかしら」
「明日は、朝霧女学園に登校するようにと。
ーー コットンさまも」
「じゃ、零やメリウスは? 」
「はい、玲子先生、ランティス王子、ティラミス王子もと申されていました」
「ターニャ、それだけなの」
「はい、それ以外は申されていませんでした」
「メリウス、どうする学校よ」
「ルシアさま、コットンさま、明日は集団登校でございます」
ルシアとコットンが一緒に呟く。
「やっぱり、お化けいたわね」
二人は、お腹を抱えてソファベッドの上で転がっていた。
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