第十一話 ティラミス王子とランティス王子
ティラミス王子と令嬢コットンが席に戻ると、ランティス王子が令嬢ルシアの隣の席に着く。
メリウスたちは慣れない環境に浮足立っていた。
ランティス王子と令嬢ルシアが先程の一件を詫びた。
「わたしたち兄弟は、双子同士のカップルでよくあることなんだけど、
ーーそれはいつものことなんで気にしていません。
ーーみなさんは、驚かれましたでしょう」
「双子同士?」
「はい、零さん、双子同士です」
「区別は、どうやって?」
「ティラミス王子は、銀髪ですが、私は金髪です。
ーー令嬢コットンは紫色の髪で、令嬢ルシアは水色の髪ですから」
「なるほど・・・・・・ランティス王子」
「何でしょうか?」
「この国って、双子が多いのですか?」
「いいえ、双子は普通で多くも少なくもありません」
メリウスは零の隣でハラハラしながら二人の会話を聞いている。
優翔玲子先生もメリウスと同じ思いだった。
給事がメリウスたちのワイングラスにワインを注ぐ。
「生徒たちは未成年ですから」
「玲子さん、この国では十六歳は成人なんですよ」
ランティス王子だ。
「そうなんですか」
「だからワインは大丈夫ですが、強いお酒は十八歳になるまで禁止されています」
「ランティス王子、じゃあ、わたしは飲めるんですね」
零がランティスを見てはしゃいでいる。
「はい、みなさんは大丈夫ですが、酔わないでくださいね」
「零さま、あまり飲み過ぎないように」
「メリウス、大丈夫よ。わたし、お酒飲んだことあるから」
零は、メリウスを見ながら舌を出す。
「夢月さん、ハメを外されないように」
「優翔先生、わかっているわ」
令嬢ルシアが口を開く。
「零、姉のコットンは私と違うから言動に注意してくださいね」
「違うって・・・・・・」
「今は、言えないわ」
「じゃあ、ルシアさん、今度、教えて下さい」
給事がルシアたちのテーブルにメインディナーを運んでいる。
「今夜のディナーは何かしら」
「はい、ルシアさま、鴨のステーキでございます」
ルシアは鴨と聞いて顔を曇らせた。
ランティス王子がルシアに尋ねる。
「ルシアは、鴨が嫌いだった?」
「嫌いまで行かないけど好きじゃないわね」
令嬢ルシアは食べ物の好き嫌いはないのだが苦手意識が多少ある。
「分かるは、嫌いじゃないけど好きじゃない」
「零は、分かるのね。嬉しいわ」
デザートが運ばれ、最後にコーヒーを頂くと、ランティス王子が離席してメリウスたちを隣室に案内する。
隣室の大きな部屋には、ワルツの曲が流れていた。
メリウスは、咄嗟に玲子と零の手を握りダンススキルを与えた。
「零さま、玲子先生、ダンス大丈夫ですからご安心ください」
「メリウスには、助かるわ」
優翔玲子だった。
舞踏会の会場のような大きなお部屋の壁際には椅子がいくつも置かれている。
ランティス王子と令嬢ルシアは、その椅子に腰掛け、メリウスたちも近くの椅子を選んだ。
「零、今夜はね、父と母は、王様の宮殿に行っていて留守なの」
「そうだったんですね。空席が多く変だなと思っていました」
「零は、勘がいいわね。
ーー勘と言えば、今日寄ったアンティーク店の魔鏡、どう思う」
「ルシアさま、あの魔鏡は、絶対に駄目です」
「相変わらず、メリウスは心配症ね」
「ルシアさま、冗談ではありません」
零もメリウスを庇う。
「ルシアさん、メリウスは冗談を言わないわ。きっと危ない鏡よ」
令嬢ルシアは、腕組みして考えた。
ランティス王子が優翔玲子を誘う。
「わたし、踊れませんから」
「大丈夫、先生、わたしが教えますから」
「先生、ランティス王子、ダンス上手ですから、教わり甲斐があるわよ」
「ルシアの褒め殺しには注意しないとね」
「ルシアさま、ありがとうございます」
優翔玲子は、ランティス王子に誘われダンスルームの中央に立った。
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三日月未来