第1話 黒猫メリウス
放課後、朝霧女学園の下駄箱前で女子高生数人が青空を見上げて騒いでいる。
「ねえねえ、あれ見た」
「あれって! 」
「空飛ぶ黒猫よ・・・・・・ 」
「知らないよ!そんなの噂でしょう」
夢月零は、同級生の騒ぎ声に呆れながら文芸部がある部室棟に向かった。
⬜︎⬜︎⬜︎
16歳になったばかりの零は朝霧女学園文芸部のアイドル的存在だ。
愛らしい顔立ちにやや長い黒髪のポニーテールが自慢の1年生。
洗いたてのシャンプーの香りが残っていた。
猫目に長い睫毛の普通の女子高生の零の背丈は平均くらい。
ミニスカートを好まず膝上くらいの長さを好みガーターストッキングを履いている。
誰もいない部室のカーテンを勢いよく引いた。
窓から差し込む夕日に目を細め両手で翳す。
⬜︎⬜︎⬜︎
部活顧問の優翔玲子が息を切らしながら部室の引き戸を開けた。
[バタン]
零は思わず小さな驚きの声を上げ玲子を睨む。
「先生!」
「すまん、すまん、うっかりして」
⬜︎⬜︎⬜︎
元ファッションモデルの玲子の背丈は人目を引く。
24歳の玲子は黒髪にピクシーカットで白いスカートスーツを着ている。
美しい目鼻立ちが花顔柳腰さを際立たせ女性教師には見えない。
⬜︎⬜︎⬜︎
「夢月さん、そのアクセサリーどうしたの?」
零は、ある日の朝のことを思い出した。
それは、散歩中に不思議な形のアクセサリーを拾った出来事だった。
零は玲子に質問されるまで、そのアクセサリーの存在を忘れていた。
「先生、これですか?」
「そうーー それよ」
「道の隅に落ちていて、拾ったの」
「綺麗な色をしているわね」
「そうなのーー でも、何か分からないの」
「うん、そうね、時計に似ているけど・・・・・・ 」
「時計ですか? 先生」
「針はないわね」
「そうでしょう。だから不思議なの」
「3回振ったら、ワン!と吠えるとか」
「先生、嘘でしょう」
「じゃあ、わたしがアクセサリーを振ってみるね」
「本当にするのーー 先生? 」
零は玲子の言動に呆れていた。
「夢月さん、じゃあ振るわよ! ワン! 」
玲子が勢いよく3回振った。
「先生、何も起きないじゃない」
「じゃ、夢月さんしてみる」
「何も起きないと思うわよ。ニャン! 」
零は玲子を真似てアクセサリーを3回振った。
⬜︎⬜︎⬜︎
突然、アクセサリーが輝き始めた。
部屋がキラキラと光って眩しくなる。
辺りが黄金の世界に変わって光で何も見えなくなった。
零と玲子は慌てたじろぐことしか出来ない。
「先生、止まりません!」
「夢月さん、もう一度やってみたら」
零は祈りながら、もう一度振ってみた。
キラキラの光が徐々に弱くなって行く。
部室全体が普段の明るさに戻った。
乱雑に並べられた木製の机と椅子が視界に入る。
⬜︎⬜︎⬜︎
二人がほっとして軽く深呼吸をした刹那だった。
アクセサリーからキラキラした黒猫が現れた。
零は噂の黒猫なのかと思考を巡らせた。
黒猫は二足歩行になって人間の言葉を話始める。
玲子は零を引き寄せ抱いた。
突然の出来事に後退りをする二人に黒猫が話し掛ける。
『お呼びでしょうか?ご主人様』
「わたしですか」
『はい、零様の召使いのメリウスでございます』
「召使い・・・・・・何で私の名前を知っているの」
『零様の召使いでございます』
「意味が分からないわ」
『前世からのご縁でございます』
「わたしは、拾っただけよ」
『いいえ、メリウスがあの場所を予知して選びました』
「そんな馬鹿なことあるの」
『今、お話しているじゃないですか』
「質問、していい」
『なんなりと』
「じゃあ、あなたを呼びたい時は、どうするの」
『わたしの名前を心の中で3回お呼びください』
「メリウスを3回ね」
『はい、3回でございます』
「でも、さっきは3回振ったわよ」
『初回限定特典でございます』
「メリウスって、冗談も言うのね」
『冗談ではございません。初回限定です』
⬜︎⬜︎⬜︎
「メリウスは、姿を変えることができるの? 」
『たとえば? 』
「人間になったり、大きくなったり、小さくなったりとか」
『そんなことですか』
メリウスが急に笑いだした。
「そんな可笑しいことですか」
零はほっぺを膨らませてメリウスに怒った。
零の表情を見た玲子が笑いだす。
「じゃあ、メリウス、わたしに変身してみて」
『ではーーーーーー 』
メリウスの身体がアクセサリーの時のように光を帯び始める。
まもなくして、もう一人の零が二人の前に現れた。
「メリウス、すごい。そっくりよ」
『時間限定でございます』
「時間あるのーー 長くて、どれくらい」
『3時間でございます』
零は腕組みして考え始めた。
「他に何かできることある・・・・・・ 」
お読みいただき、ありがとうございます!
ブックマーク、評価を頂けると嬉しいです。
投稿後、加筆と脱字を修正をする場合があります。
三日月未来




