ステータスオープン
「ゲームじゃないんだぞ。」
思っても見なかった、自分の口からこんな言葉が出てくるだなんて。
・・・こんな状況、誰も予想なんか出来ないだろ、想像自体しないだろ。
俺の頭に一瞬あの小鬼の姿が過ぎった。
ファンタジー世界と融合するからって、こんな物が人間のスタンダードになりえるのか?・・・・。
・・・融合?
嫌、違うな、捕食されて、咀嚼されて、消化されて、融合とは全く違う、ユーメリアによる地球への攻撃、侵攻、侵食・・・侵蝕・・蝕か。
ふとコンに目をやる、知ってかしらずか、コイツは目を輝かせながら興味深々に俺が呼び出したステータス画面を覗き込んでいた。
「・・・ふ、アホらしい。」
「なんや?
何か言うたか?」
「嫌」
難しい話は、無駄に高い給料を貰ってる国のお偉方にでも任せればいい。
既に勝敗の決まってる話に何がって話だが、善処はして頂きたいものだ。
ステータス画面にゆっくりと触れる。
ピタっという物に触れた感覚。
「触れるのか」
「ドヤ?
新感覚やろ?」
ニヤニヤと笑うコンを横目にステータス画面に触れる面積を指先から掌全体に増やす。
少し力を入れて押してみるが、空中に浮いた画面はそこから移動する事はなかった。
「・・・まじか。」
「本人以外は触れれんけどな」
そう言うと、コンは短い手をグイッと伸ばし、フリフリと俺のステータスに触れようとする。
が、届かない。
やりたい事は分かるが、まあこのままにしておこう。
その方がジタバタ感が可愛いからな。
真面目な話、俺ら人間はこれからスマホに変わって、この画面に支配されるかもしれない。
それに、これに通信機能でも付いてたら経済が傾きかねないぞ。
・・・まぁそれもお偉いさんが何かいい案を出すだろう。
俺は自分自身の心配だけ・・。
・・・・手の届く範囲迄なら他の人間の事も考えなきゃかな。
「さて。」
名前 斎藤 一人
種族 人間 ▶︎
年齢 32
健康状態 良好 ▶︎
ステータス
Lv 3 ▶︎
体力 126 ▶︎
耐久 58 ▶︎
筋力 43 ▶︎
敏捷 32 ▶︎
知力 28 ▶︎
魔力 5963 ▶︎
運 計測不能 ▶︎
スキル ▶︎
身体強化 3 ▶︎ 任意
精神安定 3 ▶︎ 常時
精神操作 1 ▶︎ 任意
魔力向上 MAX ▶︎ 常時
魔力向上:強 MAX ▶︎ 常時
魔力向上:超 1 ▶︎ 常時
魔力操作 3 ▶︎ 常時
固有スキル ▶︎
花剣流 真 ▶︎
超・運 ▶︎
超・テイミング ▶︎
魔法創造 ▶︎
所持アイテム ▶︎
所持金額 ▶︎
「何だこれ?」
「ステータスやがな、ご主人」
「そりゃ見りゃ分かるさ、俺が聞いてるのはこの内容だ。」
コンの頭上にクエスチョンマークが浮かぶのが見える。
「・・・ああ。
記憶が曖昧なんやったな、ご主人、せやけど、健康状態は良好やし・・・。
特に攻撃されたっちゅーわけでも無い。
謎やな。」
「さっきから当然の如く覗いてるみたいだが、プライバシーは無いんだなこの画面に」
「まぁ普通、肩に儂みたいなん乗せるアホはおらんからな。」
「アホいうな」
「かか、隠蔽スキルっちゅーのもなくは無いけど、普通覗かんもんやろ、マナー違反っちゅー奴やな。」
「・・・・」
「かか、固い事は無しやで、ご主人、儂とご主人はもう一心同体みたいなもんやしな。
ホレ見てみい!!」
そう言うと、コンは
「ステータスオープン」
と唱え、画面を俺の頬に押し付けた。
「近い、、近いって」
触れられるのは本人だけじゃなかったのか?
見せられたコンの称号という部分に斎藤一人の下僕と書かれていた。
「なんあああ!!!
・・・・かかか、、かーかっっっかっか!!
下僕ておい!!!
辛辣やな!!
もう、ほら、な、奴隷とか、しもべとか、、、。
うん、下僕でええか」
「・・・元神がそれで良いのか?」
「ええて、ええて、まぁ、儂にもメリットが無い訳じゃ無いしな。
ウィンウィンちゅー事で。」
「なぁ、おい!こん!!
痛いって!!」
頬に終にペタペタと良い加減煩い。
俺はギュッとコンをステータスごと押し返す。
「やっぱ触れる・・・。
コン、お前、さっきステータスを触れるのは自分だけって言ってなかったっけ?」
「ああ、そりゃ、ご主人が儂のご主人やからな、テイミングした動物やモンスター、ご主人に関して言えば、儂みたいな神であってもテイミングが可能やから、よりどりみどり、覗き放題、見放題やで!!
かっかか」
「それって普通なのか?」
コンがコンマ数秒あんぐりと口をあける。
「普通であってたまるかい!
その固有スキル、超テイミング、多分、それ制限無しや、どんな者でさえ、ご主人の支配下におく事が出来る。
手順は手間やろうけど。」
「そうなのか」
「そんなポンポン神を下僕にしてみぃ、世界のバランスがのうなってもうで」
「それもそうか」
その割には、コンは既にテイム済みだった訳だが。
俺の身体を経由した事による憑依失敗のリスクなんだろうか?
それにしても、このスキルを選択した時の気持ちが少しだけ蘇った気がする。
単に俺が色々な小動物とお知り合いになりたかった・・・・。
そんな心もちだったなそう言えば。
ちょろ神を一撫で。
「ん!!
なんや、その生暖かな目は!!
ちょっと涙が出そうになるやないか!!」
「はいはい」
さて、周りは相変わらずだし、一通り、さらってみるとするか。
俺はもう一度ステータスに手をはわした。