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怨念遺伝  作者: FUJIHIROSHI
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第19話 病

 飲食を済ませ、しばしの休憩後、再び車を走らせた。

 来た時と同じ助手席に松宮、後部座席の運転席側から斗南、豪切が座った。車内の雰囲気は明るさを取り戻している。

「さて、調べたところ同じ名の村はないが、〇〇県に廃村は、曰く付きなものも含めて結構ある。なので、あえて呪いうんぬんは外して、病が蔓延した村で調べてみた」

 そう言った松宮に「病?」と豪切が眉をよせた。

「ああ、ずっと気になっていたんだ。話の内容から呪いなんかではなく、病、それも早老症ではないかと思ったんだ。ウェルナー症候群とか、これは遺伝病なんだが、実年齢よりも老化が進む症状が特徴だ」


「なるほど、聞いたことがあるよ。んー……病、遺伝……ね」

 桜紗は感心したようにうなずく。

「ま、それでも一つもヒットしなかったんだけど。ただ、考えてみれば、斗南氏のお爺さんが言っていたようなことが本当にあったならば、騒がれない方がおかしい。昭和の話なんだから新聞に載っててもおかしくない。でも情報は無さそうだ。と、したら……隠蔽されたのではないか——」

 暗い車内に、携帯画面の明かりで松宮の顔があやしく浮かび上がる。


「——その村は地図上から消されたのではないか」



「ほう。確かに都市伝説でもそういった廃村があったな。しかし、だとしたらどうする? 探せないんじゃないか?」

 と、ちらりと松宮を見て桜紗が言った。

「——だとしたら……そうだ、斗南氏の出番だな。地図作成は国土交通省の、国土地理院だ。そこのサーバをハッキングすれば探せるんじゃないか」

「ええ? 今、パソコン無いんで……携帯使ってリモートで、うちのパソコンを操作することも出来ますけど、時間かかりますよ」と斗南。

「んー、あーなんでさっき気づかなかったんだ。斗南氏の家にいた時だったら余裕だったろうに」


「いやいや、君らなんて話をしてるんだ? さざめ、最近の高校生はみんな()()なのか?」

 慌てて桜紗が二人の会話を止めた。

「いや、その二人が特別なんだ」と豪切。

「すごいもんだな、斗南くん達は。それなら、我々のすごいところも見せないとな、さざめ。もう間もなく高速を降りるぞ」

()()()()()()()()()()()()。まあ、場所はどうにか探すと言った手前、やってみるさ」

 と、豪切は左右のこめかみ辺りに両手の指先をあて、目を閉じる。桜紗はカーナビを停止させた。

 何が始まるんだ? と松宮と斗南は豪切を見る。




 高速を降り、国道に出る。いくつかの信号を左折し、右折し、車は迷いなく進んで行く。

「なあ斗南氏……こいつは驚きだな」

「そうですね」

 二人は信じられないという顔で豪切を見ている。


「次を、西の方角だ。道なりに行くと山に続く道が出てくるはずだから、それを行く」

 目を閉じたまま豪切が道案内をしていた。

 加賀島たちもピタリと追従している。


「驚いたろう。言ってみれば、心霊ナビだよ。あの女の怨念をたどっている。さすがに近くまで来ないと出来ないがね」

 自慢げに桜紗はニヤリと笑う。


「あ!」

 突然松宮が窓の外を見て声をあげた。「……いや、なんでもない」

 それを見て、桜紗が「ただし、この心霊ナビには一つ欠点がある」と。そして続ける「怨念をたどるっていうのは、ようは霊視をしているんだ。奴の存在を視ている。つまり、()()()も、()()()を見れるってことだ。君らに渡したペンダントはもちろん、この車も結界になっていて今まで奴の目から姿を隠していたんだが、いまや丸見えだよ、加賀島たち以外、全員認識されたとみていい」

 桜紗は軽く言う。

 松宮は肩をすくめ「では、今、一瞬すれ違った女、高速道路を降りた時にも見た気がしたんだが、まさか——」


 バンッ!


 と松宮が話し終わるのを待たずに目の前のフロントガラスに手形が張られる——あきらかに左手のひらの手形だ。

 松宮は両足をつっぱり、体をシートにうずめたが、すぐに「きゃあ!」と叫び、腰を跳ね上げた。

「見てる! 見てる! すぐ横にいる!」


 凄まじい形相の女が両手両足をヤモリのように貼り付け、ガラス越しに覗き込んでいた。吹き出るように冷や汗を流し、全身に鳥肌を立たせた松宮は目を強くつむることしか出来ない。


 バン! バン! バン! と手形は増えていく。

「さざめ! 集中を切らさずナビしろよ」

 そう言って桜紗はハンドルを握る手に力を込めた。車が揺さぶられるのか、引っ張られるのか、何かに抵抗しながら走らせている。しかし、口調は穏やかに、「松宮さん、君は優秀だからな、ひょっとして運転も出来るかい?」

「んなもの、出来るわけないだろう!」

 間髪入れずに松宮は叫んだ。

 豪切は誘導を、桜紗は運転をしている今、こちらからは手を出せない。


 加賀島も気づいたようで、車間距離を空けた。

 深夜に近いとはいえ、国道ということもあり、行き交う車も数台ある。


「いやな感じだな。山に入る道はまだか?」「もうすぐだ」と桜紗と豪切が言葉を交わす中、対向車の大型トラックのヘッドライトの光が車内を眩しく刺す。


 すぐに、次の信号を左だと豪切は指示したが、桜紗はハンドルを右に切った——予感通りその大型トラックは右折し、桜紗たちの白いミニバンの行手を遮り突っ込んでくる。

 松宮と斗南の叫び声が響く——トラックと車がお互いの左側面スレスレをかすめるようにすれ違う。

 衝突はまぬがれたが白いミニバンは二車線を横切り反対車線に飛び出す——ハンドルを左に——けたたましく鳴り響くスリップ音が叫び声をかき消し、車はドリフトしながら元の車線に戻ろうとしている——!

 横向きに滑る白いミニバンの目の前を別の車が通過した!

 クラクションが鳴り響く中、そのまま前進する白いミニバンの、後ろスレスレをさらに別の車が通過した!


 そしてそのまま、左折する予定だった道へ直進した——。

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