其の肆拾捌 ここから歩き出す
『──それでは、次のニュースです。一昨日の午後7時から深夜にかけて、金烏市で発生した大規模なガス爆発事故による死者は──』
『──病院に搬送された人たちの中には、意識が混濁している方も多く、事故当時に何が起きたのかは未だ不明のままであり──』
『──また、近隣の金烏山でも同様のものと思われる爆発が起き、頂上に位置する市立天文台の内部が荒らされていた事から、警察は──』
ピッ、と。
乱暴に押されたリモコンのボタンは、果たして持ち手の望み通りにテレビの電源を落とした。
そのままボタンを踏んづけていたちっちゃな前足で、イナリはリモコンを座布団の上まで蹴っ飛ばす。
「……なんでやすか、これ」
「なんで御座いましょうねぇ……」
振り向いた先では、お千代もまた、ちゃぶ台の上で腕……ではなく翼を組んでいた。
その隣に座る九十九も、湯呑みから熱々の緑茶を啜りつつ怪訝そうな顔を浮かべている。
「……僕たちの事とか、妖怪の事とかが……隠されてる?」
「それもめちゃくちゃあからさまに、でやすね。あんまりにも露骨過ぎて、一周回ってこれも『現代堂』の仕業なんじゃないかと思うくらいでさ」
溜め息混じりに吐き捨てて、後ろ足でコリコリと顔を掻くちっちゃなキツネ。
あまりの不可解さに呆れ返った彼を見ながら、スズメの嘴は籠から取り出したお煎餅をバリボリと食み砕いた。
「こちらとしては助かる話ではありますけどねぇ。妖怪の存在が明るみに出て、人々が恐れ慄く事態を防ぐ事に繋がるのは勿論、坊ちゃまの正体が露見する“りすく”もできるだけ少ない方がいいですもの」
「然り。儂らと『現代堂』の戦いに介入してこないとはいえ、同じ考えを持つ者がこの国のどこかにおる。それが分かっただけでも、一先ずの収穫と言えよう」
そう言って白く長い顎髭を扱くのは、孫や召使いたちと共にちゃぶ台を囲む四十万だ。
街全体にガキツキの群れが発生した時、自宅にいた彼もガキツキたちに襲われたものの、妖術を使って上手く撃退する事ができたそうだ。
戦闘の際に負傷したという禿頭に貼り付けられた絆創膏を撫でながら、老爺は先ほどまでニュース番組が映っていたテレビの画面に目を向ける。
「しかし……ここまで明け透けな情報封鎖をする者がおるとはの。儂ら“八咫派”に敵対的な者の仕業とも思えんが……いまいち思惑が見えんわい」
「人の口に戸は立てられぬ……って言うからね。実際、SNSとかでも僕らやガキツキの写真が出回ってるっぽいし……」
「そうだのう。“ねっと”は儂も“ちぇっく”しておるが、こっちの“たいむらいん”にもそこそこ上がってきておる」
「爺ちゃん、ネットとかやってたんだ……」
「“なう”な“やんぐ”の知識は一通り持っておるぞい。深夜“あにめ”を見るのが最近の生き甲斐じゃからな」
ほれ、と言いながら四十万が見せたのは、柿渋色のカバーに包まれた最新機種のスマートフォン。
その画面をスイスイと操作してみせる齢90の祖父に、九十九は何とも言えない気持ちで唇を歪ませる。
さておき、スマホの画面に表示されているのは、一昨日に街で起きた惨劇を示す数々の画像だ。
突如として現れ、街を破壊し、人々を悪意によって害する恐るべき怪物──ガキツキたちの群れ。
この場にいる者たちのように、妖気を手繰り戦う事ができる存在であれば、妖怪の成り損ないでしかないガキツキなど物の数ではない。
しかし、この世の圧倒的大多数はそのような力を持っていない。ならば、如何に雑兵とて多大な脅威となり得るのは当然だろう。
そんな怪物たちが街を闊歩し、人々を襲う様を映した画像、或いは動画の数々。
一方、それらの中に紛れ込むようにして、趣きの異なるメディアが混ざっている事を彼らは見逃さなかった。
『坊ちゃん、この辺の雑魚どもは粗方吹っ飛ばしたと見ていいでさ』
『ん、分かった。少し手こずっちゃったね……お千代、皆の避難は終わった?』
『“ばっちぐう”ですわ! 後は警察の皆様にお任せすれば大丈夫でしてよ』
『よし……次の場所に行こう!』
道路からビル、ビルからビルを飛び交い、自分たちが手も足も出なかった怪物たちを瞬く間に倒していく正体不明の者たち。
ちっちゃな手足と体躯を持つふわふわ尻尾のキツネに、夜の闇にも似た黒色で全身と羽根を染め上げたスズメ。
そして何よりも、手に火縄銃を持つ黒マフラーの少年らしき何者か。
映像越しでさえその素顔を認識する事はできないが、それでも彼は火縄銃から真っ赤な弾丸を乱射して、怪物の群れを掃討していく。
少年は化け物を仕留めながら着地すると、動画を撮影していた者へと振り返り、優しそうな声色でこう呟くのだ。
『……大丈夫? 怪我、してない?』
その動画を見た瞬間、九十九はガン! とちゃぶ台に頭を叩きつけた。
「あああああああああああああああ……!!」
「ショウジョウの奴と戦ってた時より苦しんでませんこと?」
「自分のやった事を改めて別視点から見た事で羞恥心に苛まれているんでさ、そっとしてやってくださいやし」
「ほっほっほ……若い、まっこと若いのう。そこは半端に恥ずかしがる事もなく、月光仮面のようにデンと構えていればよかろうよ」
「爺ちゃん……その例えは知ってる人少ないよ……」
呑気に呵々大笑する祖父へとジト目を向けつつ、柔らかなほっぺをちゃぶ台の上に広げる。
事実、あの時の自分は多くの人間を救えたと思う。
間に合わず救えなかった人もいるし、その事に無力感を覚えるが、それでも自分が救えた数を否定する訳にはいかない。
自分のちっぽけな力でも、誰かを助ける事ができた。それは素直に、誇らしいと思えるものだ。
それはそれとして、九十九はあの動画に映る自分の姿に恥ずかしさを感じていた。
めっちゃヒーローみたいじゃん……。めっちゃカッコつけてるじゃん……。めっちゃ気障野郎じゃん……。
実際はそうでもないのだが、別の視点から見た「自分」という存在は、案外そのように見えてしまうのだった。
「もうちっと、精進が必要じゃの。単純な強さだけでなく、心の強さも。己の成した事を、他者から見た己を誇り、“格好いい自分”を肯定してやる。その強さもまた、今のお前に必要なものじゃよ、九十九」
「自分を肯定した方がいい、っていうのは認めるけどさぁ……ナルシストにはなりたくないなぁ、僕……」
「ほほほ。“ひいろお”とは“なるしすと”なくらいが丁度いいものじゃ。英雄という者は、多少なりとも心臓に毛が生えてなくてはの」
「そういうものかなぁ……? 本当に」
いまいち同意を示し難い言葉ではあるものの、心身ともに強くなるべきなのは事実だ。
『現代堂』の行う『げえむ』は、これからも続いていくのだろう。そして先日も話していた通り、彼らの残虐な殺戮劇には終わりが見えない。
いつ終わるとも分からない過酷な戦いに足を踏み入れた現実。
そこに多少の薄ら寒さを感じつつも、九十九はちゃぶ台の上まで伸ばした自分の手の平をぼんやりと見た。
(……姫華さんは、強くなりたいって決意した。今度は、ジョロウグモを助けられるように……って)
軽く、握っては開いてを繰り返す。
あの時、届かなかった手だ。灰管たちにも、ジョロウグモにも、博物館にいた人たちにも。
それが傲慢な考え方である事は、これまでにも散々指摘されてきたし、自覚もしている。
けれども、この手は銃を持つ事しか能が無いのだと、そう思いたくもなかった。
(結局、どれだけ考えたところで「強くなるしかない」って結論にしか至らないんだよなぁ……)
それこそが一番の近道であると、他ならぬ九十九自身が理解しているのだから。
それにしても、だ。
ここまで考えを巡らせたところで、あるひとつの疑問に至る。
(……なんで僕、いつの間にか姫華さんって呼んでるんだ……? ちょっと前までは白衣さんって呼んでた筈なのに……)
その事実に気付いた瞬間、ぶわりと汗が吹き出した。
なにか、あの動画での言動以上にめちゃくちゃ恥ずかしい事をやってしまったような気がしてならない。
唇から飛び出しそうになった奇声を堪えて、ちゃぶ台の木目に額を擦り付ける。
今顔を上げてしまえば、己の奇行を見る召使いたちの下世話な笑みまで視界に入ってしまいそうな予感がするからだ。
「あらあら、先ほどまでとは異なる趣きの羞恥……これはあれですわね? 白衣様関連のなんやかんやですわね?」
「でやしょうなぁ。かーっ! 今どきのアオハル話は初々しくて甘ったるいったらありゃしねぇや。傍から見てる分には面白……じゃない、目の保養になりやすがね」
「この小動物どもめぇ……僕のウダウダは見世物じゃあないぞぉ……」
「そこで『ウダウダ』と認めるところが、もう自白したようなものでしてよ?」
ごもっともである。
小鳥が囀るようでぐうの音も出ない指摘に、少年は撃沈した。
可愛い孫の悲喜交交を微笑ましく見ていた四十万はそこで、徐に目を向けた時計の針にある事を思い出す。
「そういえば、九十九や。そろそろ出ねば遅刻するのではないのかね?」
「えっ……? あっ、ホントだ!? い、急いで学校行かないと!」
ガバリと起き出して、バタバタ慌ただしく動き始める。
普段の眠たそうな態度はどこへやら。普通の少年らしく騒がしい背中を見て、好々爺はそっと熱い茶を口にした。
「そうかぁ……九十九に、新しい友達ができたか。それも、異性とは思わなんだ」
「へぇ。実際に学校までついていってみても、友達らしい友達は日樫の坊主しかおりやせんでしたからね。坊ちゃんが静かな気性だってのもあるんでやしょうが……それにしたって、周囲から舐められてるって感じはしてやしたから」
「ちゃんと向き合って対話すれば、坊ちゃまほど誠実で“ないすがい”な殿方もそういないものですけどねぇ……。日樫様ともども、白衣様も坊ちゃまにとって善き友人となってくださったそうで何よりですわ」
それぞれのやり方で毛づくろい、或いは羽づくろいをする召使いたちを前に、重々しく頷いてみせる。
祖父の目線からしても、八咫村 九十九という少年は幼い頃から随分と大人しく、そして物静かな子供だったように思う。
いざ友達を守る為に熱くなれる一面もあるのだが、普段の態度が故に友達は少なく、今では光太くらいしかいない。そして、それを気にもしていない。
今思えば、生まれながらに妖怪としての血を発露しつつあった兆候なのかもしれないが……。
その上で、四十万は彼の凪いだ湖畔のような在り方に不安を覚えていたのも事実だ。
だからこそ。
「家族を愛し、友を愛し、隣人を愛し……人として、しっかり生きるのじゃぞ。どれだけ妖怪の力を振るおうとも、お前は儂の孫、人の血を身に流す子供なのじゃから」
八咫村 四十万は、孫のこれからに幸い在れと願っていた。
◆
「──そんでよー! そん時に俺らを助けてくれたのが、ヤタガラスって奴なのよ! ホンットもうこれが格好よくてさー! あーいうのをダークヒーローって言うんだろうなーって、俺は思うワケよ」
「あ、ははは……うん、そうだね……」
もし吐血するのが許されるのであれば、今ここで吐血したい。
そんな形容し難いほどのむず痒い気持ちが、九十九の胸を占めていた。
ここがどこかと言えば通学路であり、彼の隣を歩きながら「ヒーロー」について熱く語っているのは、当然ながら光太である。
彼は九十九を家の前まで迎えに来た上で、こうして自分を助けてくれたヒーローについて語り聞かせていた。
本来の目的は親友の無事を確認する為であろうし、その為に自分の登校ルートと真逆の位置にある彼の家までわざわざ足を運んで来たのだ。
その事については素直に嬉しいと思う一方で、彼が熱く語っている「格好いいダークヒーロー」の正体が自分であるなどとは、決して言えない悲哀があった。
「で、こないだも電話越しに聞いたけどよ、お前もヤタガラスに助けてもらったんだろ?」
「う……うん、そうだね。僕の事を探して助けてほしいって頼んできた人がいる、って伝えられたけど……」
嘘である。
九十九の事を探して助けてほしい。光太からそう頼み込まれたヤタガラスとは、まさしく九十九自身の事である。
「はえ~! ちゃんと約束守ってくれたんだなぁ、ヤタガラスって! 妖怪にもイイ奴っているんだな~」
「……光太はさ、怖くないの? そいつ、自分で妖怪って名乗ってたんでしょ? それに、助けてくれたとはいえ同じ妖怪を平気で殺して……」
「んー……まぁ確かにそういう側面もあるんだろうけどさ。でも光太様は小市民かつチョロインなので、俺の命を助けてくれたって事実だけで落ちちゃう訳です。真実がどう、善悪がどうってのは、そういうのに詳しいお偉いさんたちが考える事っしょ」
大した議題ではないという風に、頭の後ろで手を組みながら答える。
光太が目線を飛ばした先の空には、雲ひとつ無い。綺麗な晴れ間が広がっていた。
「それに妖怪妖怪って言ってもさ、結局は人種とかそういう系っぽいじゃん? どっかの国からテロリストが出たからって、その国の全員が悪党って訳じゃないし。助けてもらった分際であれこれ屁理屈抜かすほど、厚顔無恥な生き方をしてるつもりはねーよ、俺」
「ん……そっか。強いね、光太は」
「よせやい、俺ァただの陽キャもどきよ。それにさ、お天道様ってのはいつでも俺らを見てるのさ。八咫烏ってのは太陽の遣いなんだろ? 俺らがヤタガラスの悪口を言ったら、太陽経由で本人にチクられちまうかもな」
「……ふふっ。うん、そうだね。それは、あり得るかもしれない」
昔からの親友が言い放った言葉がなんともおかしくて、九十九は小さく笑う。
「もしかしたら彼、妖怪リトル・ヤタガラスは……案外、近くで僕らの話を聞いてるかもしれないからね」
少なくとも彼がいる限り、自分はもう少し戦い続けられるかもしれない。
そんな安堵と温かさが、小さな少年の心をじんわりと労った。
「へへっ、そりゃまた夢のある話だわな。さながらこの街のスパイダーマンってワケだ。俺ら一般市民にゃ力も何もねーんだから、せめて自分たちを守ってくれるヒーローに石を投げるような真似はしたかねーぜ」
「光太のそういうところが素直に尊敬できるんだ──って、ん?」
「おん? どしたんだい……っと、ああ成る程ね」
ふと足を止め、少し驚いた風に前方を見やる。
その様子に一瞬だけ怪訝そうにした光太もまた、彼が足を止めた原因を察して面白そうに笑った。
果たして彼らが見つめる先、電柱に背中を預けて2人の……否、九十九の到来を待っていたのは。
「……おはよっ! 九十九くん、日樫くん」
白衣 姫華だ。
朝の穏やかな風に吹かれて、彼女の銀がかった白い長髪がサラサラと靡いている。
その頬には絆創膏が貼られているが、その程度で彼女の美貌が衰える事は無いだろう。
学校で1、2を争う美少女。そんな謳い文句さえ陳腐に思えてしまうような笑みが今、こちらへと真っ直ぐに向けられている。
初雪のように柔らかく、冬の日差しのように優しい笑みだ。いくら鈍感な九十九でさえ、ボーっと見惚れてしまう魅力を孕んでいた。
「おっす、白衣。お前もヤタガラスに助けられたんだってな? 無事そうで何よりだぜ」
「まぁ、ね。美季や弥生が私を助けるようお願いしてくれたみたいでさ? とってもカッコよくて素敵なヒーローに助けてもらったんだ。……それで」
ジトッ……とした目線が、顔を赤くしたままの九十九に突き刺さる。
その事に気付いて正気に戻り、なんとか挨拶を返そうとして……朝方の悶々とした感情を思い出す。
「あ……え、と。おはよう……白衣、さん」
「んー? 聞こえないなぁ。ちゃーんと、あの時の呼び方じゃないと聞こえないわねぇ」
「……」
覚えてやがった。状況が状況だったから、あんまり意識してないと思っていたのに。
隣に光太がいるにも拘らず、あの呼び方をしろというのか。そんな目線を飛ばすが、姫華は意にも介さない。
言葉に詰まって沈黙する自分を見て、そろそろ親友の訝しむような表情が色濃くなってきた頃合いである。
覚悟を決めて、九十九は舌を震わせた。
「……姫華さん、改めておはよう」
「ん、よろしいっ。これからもよろしくね、九十九くん♪」
名前の通り、花開くように可憐で、そして明るく美しい笑顔。
彼女の美しさに心を奪われるよりも早く──矮躯の少年は、己の首から肩にかけてをガッチリとロックされた。
「ちょっとぉ? ちょっとちょっとぉ? ちょっとちょっとちょっと九十九くぅん? これはさ、これはさ、一体全体どういう事なのかなぁ? かなぁ? ねぇ? 分かるよねぇ?」
「な、なんの事かなぁ……? 僕には光太が何を言っているのか、全然分からないなぁ……」
「いやいやいやいや、分かるでしょお? な~~~~~んで、『姫華さん』なんて呼んでるのかなぁ? というか今気付いたけど白衣も白衣でお前の事『九十九くん』って呼んでるよねぇ? いつの間に下の名前で呼び合う関係になったんだぁい? お母さん悲しいよ」
「誰がお母さんだよ、誰が……ひ、姫華さんからも、なんとか言ってやって……」
「なんとか、ねぇ。うーん、そうだなぁ」
ほっそりとした人差し指を頬に当てて、わざとらしく考えるような仕草をする。
光太からヘッドロックを決められ、助けを求めるような視線を飛ばしてくる九十九へと、姫華はニンマリと愉悦に口角を吊り上げた。
「あの時の九十九くん、とってもカッコよかったわ。アレがあったから、私たちは前より密な関係になったんだもんね♪」
「グッバイ親友! お前は今ここで俺っちが仕留めてくれようぞ!」
「ちょま、姫華さん!? それに光太もやめて! そこはそんなに曲がらな──」
わちゃわちゃと騒がしくじゃれ合う2人の男子に、少女は楽しげな笑い声を漏らした。
ほんの2日前、あんなに凄惨な出来事があったとは思えないほど、平和なやり取り。
けれども、姫華は既に知ってしまった。この世界の裏に潜む化け物たちと、彼らが張り巡らせる恐るべき謀略を。
そんな謀略の数々が、自分の命を奪い、尊厳すら凌辱しようとしていた事を。
そして──
(ホント、可愛くてカッコいいな。私のヒーロー♪)
自分を救ってくれたヒーローがこの世にいて、彼は化け物たちの謀略を阻止する為に戦っている事を。
気付くと、九十九の背負うリュックサックからキツネの頭部がピョコリと顔を出していた。
光太がその事に気付かないのをいい事に、顔だけを出したイナリはこちらに向かって小さくウインクを飛ばしてくる。
彼に軽く手を振り返して、姫華はもう1度微笑んだ。
「約束したもんね、九十九くん。一緒に強くなろう」
きっとそれが、いつの日か、あの怖がりな友達を救う為の力になる。
制服の内ポケットに大切に仕舞い込んだ手鏡は、今も彼女に勇気と慈愛を授けてくれている。
3章はこれにて終幕、次回から4章です。くぅ疲。
1~3章のトータルで21万文字かぁ……。私が初めて到達する場所だ。
でも1~2章が合計21話で、3章単体が27話ってのはなんかおかしいと思うんだ俺。
書き溜めはここまでで以上なので、4章の開始には暫く時間を頂きます。
以降は章ごとの書き溜めが終わるごとの更新を予定していますので、今後ともご愛顧のほどをよろしくお願いします。
よければブックマーク、評価の方もどうぞよろしく。
NEXT CHAPTER→「『げえむ』に手を出すな」




