其の参拾伍 物気付喪
今回のエピソードを以て黒マントの話数・文字数を越えました。
そう書くとまぁまぁ長くやってきたように見えるけど、実際はまだ35話目。
完結に至るまでの道のりはまだまだクソ長い予定である……。
自分の最も大切な宝物を、おぞましい怪物に取り上げられた事実。
それを理解して、姫華は頭を鷲掴みにされる痛みすら押してじたばたと暴れ出す。
「かっ、返してっ! それは私の──きゃぁっ、ぐっ!?」
だが、そんな抵抗を無駄と断じて嗤うのが彼ら妖怪。
姫華の頭部を掴んでいた手が離され、彼女の体はそのまま地面に落下した。
アスファルトに叩きつけられて痛みに喘ぐ少女をもう1度足蹴にして、ショウジョウは右手に筆、左手に手鏡を構える。
「しかし……これは、実にイイものだ。よく使い込まれている。今の現世にあって、数十年も使われ続けている道具など稀ですからねぇ。あと10年もすれば、誰の助けも無く九十九神に成ったでしょう。実演の小道具にはピッタリです」
「させない……っ! 白衣さんの大切なものを悪い企みの道具になんて──」
「いやいや、ここからが面白いんじゃないかァ。横槍は野暮ってもんだよォ」
走り出そうとした九十九の背中を後ろから蹴り飛ばし、彼がつんのめったところを馬乗りになって地面に叩きつける。
そうして彼をその場に縫い留めて、山ン本はヌラリと笑みを見せた。
遅れて、宙に吹っ飛んでいたイナリが墜落し、九十九の顔の側にベシャリと倒れ込む。
「す、すみやせん……坊ちゃん……」
「イナリ……!? クソッ……!」
「ヒヒヒヒッ。さァ、フデ。ここまでお膳立てしたんだから、ちゃァんと魅せてくれよォ?」
「ヒッヒッヒッヒ……! それでは、お見せ致しましょう」
サルのような嗤い声ののち、筆の穂先が手鏡に吸い付いた。
踊るように滑る筆先は、姫華がずっと磨き続けてきた綺麗な鏡面を黒い軌跡で上塗りし、たったの5秒で複雑な書紋を完成させる。
その直後、鏡面に描かれた漆黒の書紋が紫色の光を帯びて、ショウジョウの手を離れた手鏡は独りでに宙へと浮き上がった。
同時に、九十九たちのいる路地裏に充満していた煙に明確な「流れ」が生じ、妖気を宿した甘ったるい煙が手鏡へと吸い込まれていく。
紫の光を放ちながら、妖気を吸い上げる道具。
その光景に、九十九は見覚えがあった。
「これ……まさか、キリサキジャックを生み出した時と同じ……!?」
「ヒヒヒヒヒッ……! 勘が良いねェ、八咫村の小倅。そう、こいつはあたしが開発した新たな妖術。周囲の妖気を無理やり道具に詰め込んで、強制的に妖怪へと変化させる術さァ」
「んな、馬鹿な……ッ!? そんな反則、あり得ていい筈がありやせん!」
地面に這いつくばったイナリが、全身を打ちのめされた痛みに耐えながらも叫ぶ。
彼が荒らげた声を、山ン本はまるでそれが小鳥の囀りであるかのように耳を傾けた。
「おやァ、おや。何を驚いているんだい? 小姓ギツネ。人間の呪いにも、式神ってのがあるだろう? ホラ、道具に妖気を込めて肉の器を作り出す術さァ」
「呪い師の作る式神は、あくまで術者の妖気で遠隔操作するだけの人形! そこに命も魂もありやせんが、お前の言う妖術の理屈は別! 人為的に魂を──神を込める術なんざ、成功したとしてもガキツキに成り下がるか、そうでなくてもまともな魂は期待できな……」
「まともな魂じゃなかったら生み出せるんだろう? なら、それでいいじゃァないか。人間を殺す事ができるならさァ」
平然と言い放った山ン本を前に、イナリは絶句した。九十九も同様に、彼らの言葉の意味を理解する事ができてしまった。
それはつまり──どんな精神状態の妖怪が生まれようと、自分たちが制御できないような存在が生まれようと、彼らにとってはまったくもって関係が無いのだ。
ただ、人間を害する事のできる存在であるならば。
「お願い……やめて! その手鏡は私と、お婆ちゃんの大切なものでっ! それを、誰かを傷つける妖怪になんて……」
「ヒッヒッヒ。分かっていません、分かっていませんね、お嬢さん」
ギョロリと蠢いたショウジョウの目が、足蹴にした姫華の顔を覗き込む。
「だから、恐ろしいでしょう?」
「あ……」
──恐怖。
チョウチン・ネコマタに襲われた時とはまた異なる、しかし本質は決して変わる事の無い、妖怪という存在に対する畏れの感情。
寒気がするほどに昏い衝動が、ただの人間の少女を震え上がらせた。その自覚こそが、彼ら『現代堂』の目的なのだ。
「ヒッヒッヒッヒ……! では、仕上げといきましょう。魂持たざる人形よ、邪気を食む憑き物なりて、成るは物の怪、魑魅魍魎!」
山ン本が発生させた妖気の煙を目一杯に吸い込み、宙に浮く手鏡は風船のようにブクブクと膨れ上がっている。
紫に発光する手鏡だったモノへと向けて、ショウジョウは呪文を口にして、印を組む。
「妖術──《物気付喪》!」
それが、トドメとなった。
あらゆる箇所に無数のヒビが入った手鏡は、内側から弾け飛ぶようにして爆発四散する。
吹き荒れた風圧が、小さな路地裏に籠もっていた煙の全てを蹂躙し尽くす。
そうして、目を眩ませるほど甘ったるい匂いが綺麗さっぱり消え去った後……それは、その場にいた者たちの中心に悠然と現れた。
「嗚……嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼……!」
感情の抜け落ちた虚ろな目を持った、1人の女性。
身に着けた白い和服には艶やかな華の柄が盛り込まれ、髪は姫華と同様、やや銀がかった白い長髪を流している。
だが、彼女は美しい人間などではなく、恐るべき異形の妖怪だ。
それを何よりも雄弁に示すのは──本来あるべき下半身の代わりに存在する、巨大な蜘蛛の胴体。
彼女の髪や服に似た真っ白い体の蜘蛛、その肉体に突き刺さり、或いは肉体から生えてきたかのような形で女性の上半身が存在していた。
「そん、な……私の手鏡が、妖怪に……!?」
「やっぱり、カタナ・キリサキジャックの時と同じだ……。妖気を吸い上げて、人為的に妖怪にさせられた存在……!」
「女子の体に蜘蛛の足……よもや、絡新婦でありやすか!?」
「……嗚呼。如何にも、其の通り」
歌うような、それでいて悲鳴を上げているかのような、高くか細い女の声。
自らの白髪を強く掻き毟り、新たに生まれ落ちた妖怪は喉を甲高く震わせて名乗りを上げる。
「わたしは……妖怪、テカガミ・ジョロウグモ。我があるじに因って神を込められ、妖怪と変じた者。此の身を得たのは今なれど、我が魂魄は捌拾の時を経た九十九神……であるぞ」
一言一言を口にする度、下半身から生えた8本の足がワサワサと動く。
虚無としか言い様の無い目で周りを一瞥し、妖怪テカガミ・ジョロウグモは静かに声を発した。
「おそれよ。其れが、わたしの望む夜闇の魁であるぞ」
──無数の糸が解き放たれた。
蜘蛛の化生が振るった両の手の指10本、下半身で蠢く蜘蛛の足8本。
その全ての先端から、幾重にも枝分かれしながら蜘蛛の糸が射出され、閉所の中を荒れ狂う。
全方位に差し向けられた白銀の糸は、蜘蛛糸という名に反して硬質的な効果を持っていた。
それら全てが縦横無尽に虚空を引き裂き、路面やビルの壁に次々と突き刺さっていく。
「じゃァ、後はゆっくり楽しみなよォ……ヒヒヒヒヒ」
「ぐっ!? っと──イナリ!」
「分かっておりやす! こいつぁ、まともに掠っただけで肉が抉り取られっちまう!」
薄笑いと共に山ン本が飛び去った事で、軽くなった背中に力を込めて強引に起き上がる。
自分たちの体を串刺しにせんと迫る蜘蛛糸の槍衾を、九十九とイナリは隙間をすり抜けるようして掻い潜り、窮地からの脱出に成功する。
しかし、それによって窮地を抜け出したのは、あくまで彼らだけに過ぎなかった。
「えっ、嘘──ひぁっ!? 離、してっ……下ろして頂戴っ!」
「わたしは、わたしの成したき事を為す。其処に否やは言わせぬぞ」
「ヒッヒッヒ、どうぞご勝手に。ワシの『げえむ』を邪魔しない範囲であれば、如何様にも人々の恐怖を駆り立ててくださいませ」
しなやかな腕で姫華を抱え込み、ジョロウグモはゆるりと上空に向かって動き出す。
自らが当たるを幸い展開した糸の上に、己の細くガッチリとした蜘蛛足を載せ、器用な足取りで糸を登っていく。
女性の上半身に蜘蛛の下半身が合わさった巨体がのしかかっている一方で、糸は1本たりとも切れる素振りを見せない。
「白衣さんをどこへ連れていくつもりだ!? 逃がすか……っ!」
「おやおや、これはワシの『げえむ』の一貫ですよ? 妨害するなんてとんでもない!」
「……っ! チィッ……!」
ショウジョウが空中に塗りたくった矢の絵が、通常の矢では考えられない歪な軌道を描いて動き出す。
それだけではない。彼の妖術によって揮発性の高い油へと変質した墨の矢は、空中で発火しながら九十九に殺到した。
自らを襲う炎の矢に対して腕を薙ぎ、妖気の炎でそれらを撃ち落とす。
炎が消え去り目の前が開けた時には……既に、妖怪どもは視界の外に消えていた。
「ヒッヒッヒッヒ……では、ごきげんよう。ワシが演出する地獄絵図をお楽しみあれ……!」
慌てて見上げた先で、ショウジョウはビルの壁面を登っていた。
配管や壁面の僅かな窪みに指を引っ掛け、軽々と屋上まで登り詰めている。
そして、そのすぐ脇では。
「往こうぞ。わたしたちだけの世界へ」
逃げ出そうと暴れる姫華を左腕だけで抱きかかえ、片腕の膂力のみで彼女の動きを完全に封じ込めたジョロウグモ。
その右手の指先が、ビルの窓──光の反射によって自分たちを映し出す、ガラスの表面へと添えられた。
「妖術……《鏡の国の若菜姫》」
──トプゥ……ン
指が深く沈み込み、本来ガラスにはあり得ざる水紋の如き揺らぎが刻まれる。
それを善しと見たか、蜘蛛の女怪はそのままガラスの中へと潜り込んでいった。
「硝子の中に、入って……まさか、幽世の生成で御座いやすか!? しかし、あのような稀有な術がそうそう発現し得るとは思い難い……」
「何にせよ……助ける!」
邪魔なショウジョウは撤退したと判断して、九十九は右手で銃を象った。
その人差し指はジョロウグモに向かい、彼女が抱えている姫華を傷つけぬよう小さく圧縮した炎の弾丸を撃ち放つ。
「妖術《黒点》! 兎に角、動きを止めるだけでも──」
「……愚か、であるぞ」
感情の無い目が弾丸を捉え、軽く振った指先から蜘蛛糸を射出。
夕日に煌めいて白銀の光を放つ糸は、妖気を纏った炎の弾丸を呑み込み、その場から消失させる。
その直後、出現時に彼女が展開していた蜘蛛糸の内の1本が大きく震え、内側から吐き出すように炎の弾丸を発現させた。
九十九が速度を重視して射撃したそれは、術者である九十九本人の足元に着弾し、小さく黒い穴を形成する。
「僕の術が、跳ね返ってきた……!?」
「反射……いえ、模倣……? 吸収や透過という線もあり得やすが、どんな術か判別できやせん……!」
「去らば、であるぞ。わたしの成したき事に邪魔立てを為すのであれば、次は容赦なぞ──」
「──九十九くんっ!」
姫華が呼びかける。
ジョロウグモに抱き留められている彼女の体もまた、ガラスの水紋へと飲み込まれつつあった。
そんな中にあって、少女は叫ぶ。自分を助けようと足掻いている、少年に向かって。
「私っ、信じてるから! 私が助けを呼べば、あなたが必ず来てくれるっていう……あの時の約束を! だから……だからっ!」
向こう側が見えないほど揺らぐガラス質の水面へと、ジョロウグモが潜り込む。
最早、何とか波紋の狭間から顔だけを出している状態でしかない姫華は、自分の頭が完全に引きずり込まれる──その刹那。
「私を助けて、九十九くん!」
「──必ず! 何があっても助けるよ、白衣さん!」
トプン……と頭まで沈み込み、姫華の姿は消失した。
水のような揺らぎを見せていたガラス窓は、数秒も経たない内に元の材質へと戻る。
目の前に届かせられた筈の手を、伸ばし切る事ができなかった。
その無力さに歯を軋ませ、九十九が拳を痛いほど握った矢先。
「ヒ、ヒヒヒヒヒッ。カッコいいねェ、見惚れるねェ。艶本の主役みたいだよォ」
最初にこの場に現れた時と同様、クーラーの室外機に腰掛けた山ン本がニタニタと嘲笑を投げかけてくる。
彼が手に持つ煙管からは変わらず煙が溢れ出ているが、先ほどのように路地裏全域を満たすほどのものではない。
「……さっきみたいに、僕らの邪魔をする気?」
「おやァ、おや。先にあたしたちの邪魔をしたのはそっちだろう? あたしはただ、フデの奴がやろうとしている事のお膳立てをしてあげただけだよォ。それが済んだ以上、ここから先はあいつの『げえむ』だからねェ。あたしは何もしないさァ」
「あいつは……何を、する気なの?」
「今しがた、それを見たばかりじゃァないか」
ヌラリ、と享楽的な笑みを剥き出しにする。
「1度に参加できる妖怪は1体。それが『るうる』だけどねェ、自分が設定した『るうる』に則って生み出した妖怪は……『ぷれいやあ』の使う小道具として扱われるのさァ」
◆
「……さて、はて。ここらでいいでしょう」
まんまと九十九たちから逃げ果せたフデ・ショウジョウは、彼らと対峙していた路地裏から離れた距離にある、とあるビルの屋上に辿り着く。
今にも地平線の彼方へ沈みゆく夕日に目尻を歪め、白サルの淀んだ視線が街中を俯瞰する。
その手には、九十九神としての核である筆が握られていた。
体に巡る妖気をより集めれば、穂先から滴る墨汁がおぞましく紫色に発光する。
「ワシが書紋を書いて差し上げた道具は……ひぃ、ふぅ、みぃ……ざっと、100と2というところでしょうか。ヒッヒッヒ……中々イイ具合に気の流れが整っているではありませんか」
街の各所から発せられている妖気を認め、満足そうに嗤う。
幸運を呼ぶおまじない。そう騙り、街の若者たちが持つ道具に描いた墨の書紋。
その正体は、ショウジョウの妖術《万象一筆書き》によって「周囲の妖気を吸収して溜め込む」性質に変えられた触媒である。
書紋を記す際に仕込んだのは、地脈の流れに干渉し、自分にとって都合のいい回路へと改竄する術。
人々がおまじないの書かれた道具を持ち歩くだけで、それらは地脈から湧き出す妖気を吸い込み、起動した術を土地に還元する。
無論、そのような地脈への干渉と改竄が、たかだか道具1つに仕込まれた術程度で成立する事は無い。
だから、数を用意した。だから、おまじないの噂を広めた。だから、占い師を装った。
街に住む人々は何も知らず、何も理解せず、102人もの人間が知らず知らずの内に地脈の改竄に加担してしまった。
妖怪たちの目から見た今の街の地脈は、さながら西洋でいう魔法陣のよう。
事を起こすにあたって望ましい妖気の流れを認識し、ショウジョウは筆を振るう。
「では──これより、ワシの『げえむ』を始めましょう!」
ヒタ……と、穂先が空中に食らいつく。
瞬く間に描かれた陣は、彼の目から見た地脈の流れと合致する紋様を形作っていた。
紫の光を放つそれに呼応するように、街の妖気がざわつき始める。
「ヒッヒッヒ……魂持たざる人形よ、邪気を食む憑き物なりて、成るは物の怪、魑魅魍魎。我が呼び声に参じるならば、器を食らいて巡りを繋げ!」
儀式、と呼ばれる概念がある。
同意した者たちが集まり、同じ術を重ねて行使する事で、その規模と効力を飛躍的に高める技法だ。
これによって、1人では不可能な術の成立と行使が可能となる。
つまりこれは、道具たちによる儀式だ。
書紋を描かれた事でショウジョウの支配下と見做された道具たちが、儀式への参加と貯蔵した妖気の供給を強制される。
儀式に適した流れに書き換えられた地脈そのものを陣として、その直上にあるモノ全てを影響下に置く。
その結果として起きるのは──
「えっ……何何何!? なんでコスメが光ってんの!?」
「私のスマホが光った……!? 何? 故障!?」
「こないだ書いてもらった書紋が……!? これ、ただのおまじないなんじゃ……」
街の至るところで、人々の手の内にあった道具が光り出す。
書紋が淡い紫色の光を発し、持ち主の手を離れて道具を呑み込んでいく。
それだけでなく、おまじないを施されていない筈の道具も、いくつかが同じような光を放ち出した。
夕焼けのオレンジ色を上塗りするように、街を染めるおぞましい紫色。
にわかにざわつき出した景色を一望し、ショウジョウはトドメとばかりに術を完遂する。
「儀式妖術! 《物気付喪・煤払》!」
ほんの一瞬、街全体が不愉快な光を放ち、すぐに消失する。
だが、致命的な変化は確実に訪れていた。
街そのものを効果範囲として、妖怪変化を強制する術を行使すればどうなるだろうか?
その答えが、まさしく現実に起きていた。
「エヒッ、エヒヒヒヒヒヒヒッ! エヒャヒャヒャヒャ!」
「ウマレタ! ウマレタ! オレタチ、ウマレタ!」
「オレタチ、ヨウカイ! ニンゲン、コロス! ニンゲン、クウ!」
「コロソウ! コロソウ! キョウフ、タクサン、ツクロウ!」
「ブンメイ、コワソウ! エヒヒヒヒヒヒャヒャヒャッ!」
妖術によって変化を強いられながら、妖怪と成るに足る歴史も妖気も持たない道具たち。
不完全な妖怪変化しか果たせなかったそれらは、妖気に存在を喰らい潰され、ただのガキツキに成り下がる。
そうして生まれたガキツキたちには、術を行使したショウジョウの悪意が反映される。
つまり、人間の世界に害と滅びを為す『現代堂』の尖兵と化す。
「きゃあああああ!?」
「ばっ、化け物!?」
「私のスマホが、怪物になった!?」
「く、来るな! 来るなっ……ギャアアア!?」
街に次々と現れる、襤褸切れ姿の幽鬼。
それらは刃毀れし切った牙を剥き、目についた人々へと手当たり次第に襲いかかった。
突如として殺意と暴威を振るわれ、人間たちはどうする事もできずに逃げ惑う。
その不協和音に満ちた阿鼻叫喚は、屋上に佇むフデ・ショウジョウにも届いていた。
「そう、これこそがワシの『げえむ』……! 街にばら撒いた幸運の呪いは、そのまま人間を害する呪いへと転じる! 妖怪への変化が1つも起きなかったのは残念ですが、それでもガキツキの群れをどうにかできる人間は今の世に存在しません!」
ゲラゲラと、けたたましい猿叫が木霊する。
悲鳴と怒声が行き交う街の彼方に、弱々しく夕日が沈み消えていく。
その反対側からは、下手な絵の具よりも色濃い夜の闇が訪れようとしていた。
14話かかっちまったが章タイトル回収です。次回からは特撮特有の戦闘員をしばくパート。
あなたの戦闘員はどこから? 私はネガティブシンジゲートですかね。




