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【揺花草子。】(日刊版:2022年)  作者: 篠木雪平
2022年03月
82/364

【揺花草子。】[#3708] 移り変わる。

Bさん「こんにちは。嫁入り前の娘です。」

Aさん「そんな自己紹介ある?」

Bさん「え、そんなにおかしいかな?」

Aさん「いやおかしいだろ?

    例えば転校生が最初の挨拶で

    『皆さん初めまして、嫁入り前の娘です』

    って自己紹介したらクラスが軽くざわつくだろ?

    女子たちが『いや私たちも嫁入り前の娘だよ』って思うだろ?」

Cさん「まあ私も嫁入り前の娘だしね。」

Aさん「イヤッ!! ・・・う・うん・・・ええ・・・

    ま・まぁ・・・そうです・・・ね・・・。

    カトリーヌさんも未婚ですしね・・・。」

Bさん「頑張って飲み込んだ感がすごいね。」

Aさん「(言うんじゃないよ!!)」

Bさん「とは言え、この『嫁入り前の娘』と言い方は昨今ちょっと

    時代にそぐわなくなって来ているように感じます。」

Aさん「時代に?」

Cさん「女性は男性の家に入るのが当たり前と言うような前提と言うか

    固定観念が言外に含まれている言い方じゃない?

    未婚男性の事を『婿入り前の息子』なんて言い方はしないでしょ。」

Aさん「あ・あぁ・・・なるほど。

    言われてみるとそうかも知れません・・・。」

Bさん「今日びパートナーとの関係が様々な形を成して来ている中で、

    女が男の家に入ると言う形態はその1パターンに過ぎないはずだ。

    であればこの使い古された『嫁入り前の娘』と言う表現はもはや

    その役割を終えたと言っても過言ではないのではないかな。」

Aさん「うーん・・・まあ・・・。」

Cさん「日常生活ではもはやちょっと使いづらい空気になりつつある

    この『嫁入り前の娘』と言う表現だけれども、

    そうとは言っても例えば小説とかの創作物の中では

    依然として有効だと考えられるわ。」

Aさん「なるほど。

    その裏に潜む固定観念なども含めて表現できると言うのは

    ありますよね。」

Bさん「その通り。

    いくつかある類語の中でどの言い方を選ぶかって言うのは

    文章の質を大きく左右するものではある。

    新聞やテレビなどでは使いづらくなった表現も

    その時代錯誤感を匂わせると言うギミックとして使うのは有効だし、

    そこらへんは表現者の言葉選びの感覚と言う事になるでしょう。」

Aさん「ふむふむ。」


Bさん「つまり嫁入り前の娘って言うのはもはや

    二次元だけの存在でしかないと言うわけだ。」

Aさん「それは論理の飛躍では!!???」


 言葉選びは知識とセンス。

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