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EDEN's Order(エデンズオーダー)  作者: 後出 書
ディアブロ・カルテル 篇
80/194

謎の薬物事件

 通りの隅に並べた簡易的な丸テーブルを囲むように五人は各々黙々と食べ物を口に運ぶ。


 先程までの人だかりは既に無い。

 何故なら、女帝お抱えの虎皇会ツートップとジェイルタウンのオオカミが円卓を囲んでいるのだ。この場に近寄る輩など自殺志願者以外いるはずもない。


 しかしこの状況はジェイクにとって非常に有難いものであった。これからデュラン達に話す内容に関してはメイファンから緘口令が敷かれていたからだ。それにも拘らず他者に話さざらるを得ないということは、現状かなり切羽詰まっているということに他ならない。迅速に解決をしなければならない厄介事だと虎皇会の頭脳がそう判断したと言う事だ。


 全員の食事が済んだところを見計らい、ジェイクが口を開く。


「そろそろ本題に入ろう。まずはコレを知っているか?」


 胸ポケットから小さなジッパー付きのポリ袋を取り出す。中には細かい葉屑や小さな赤い種子などが入っていた。


「園芸セット……にしちゃあちぃとばかし物々しいな。なるべくアイラの目の前に出して欲しくはなかったんだがな。おたくらの商品は」


 ややイラつきを見せるデュランに対しジェイクは答える。


「子供のいる前に出す代物ではないことは百も承知している。しかし我々にもそれなりの事情があること汲んでもらいたい」

 

 非礼を詫びるジェイクにデュランはそれ以追求することはしなかった。


「付け加えて言わせて貰うなら、コレは我々虎皇会の商っているものじゃない。先日のゾンビ騒ぎ辺りから出回り始めた代物だ。といっても、これらはその薬物の原材料らしいがな」


 その一言でデュランとウィリアムはその重大性をすぐに察した。


 虎皇会のシマで女帝の目を盗んで小狡く儲けようとする輩は等しく始末される運命にある。それもピザのデリバリーよりも迅速にだ。今までもそうだったし、これからもその不文律は揺るがないものだとこのエデンに住むものならば誰しも信じて疑わない。にも拘らず、その虎皇会が手を拱いているということは相手は虎皇会と同等の力を持つ組織か、或いはそれがバックについた何者かの仕業の可能性が非常に高いということを意味する。


「我々もこの件に関して早急に動いたが、既にうちの組員が五名ほど死んだ。内二名はこのドラッグを自ら摂取して。残り三名は明らかな他殺だった。ちなみに、この袋は中毒死した奴の家から出てきたものだ。ドブネズミ共と繋がりがあったようだが、今となっては聞き出すことも叶わん」


「ゾンビ騒動付近で出回り始めたということは、レーヴァテイン絡みかも知れませんね」


「ダトシタラ最悪ヨ。幾ラ調ベテモ情報ガマルデ掴メナイ。タダ、モウヒトツノ線ナラ比較的面倒ナイネ」


「もう一つの線? まだ他に命知らずがいんのか?」


 デュランの問いにジェイクは答える。


「ディアブロ・カルテルだ」


 その言葉にデュランとウィリアムは思わず立ち上がり興奮気味に反論した。


「そんなワケねぇだろうが! 第一、連中はテメェらがツブしたじゃねーか!」


「そうですよ! ボスのアントニオさんとその他の組員の大半も投獄中。それにアントニオさんはもうマフィアを引退すると誓約書に一筆してくれました。それなのに何故今更そんなことをするって言うんですか!?」


「落ち着け」と冷静に促したジェイクに従い、いきり立った二人は再度椅子に腰を下ろす。それを見届けたジェイクは続けた。


「この薬物は我々がこの街に進出する前に一時的に出回っていたものに効果が良く似ているらしい。粗悪な混ぜ物だらけで安価だがよくキマることで知られていたらしいが、依存性も高く乱用者が相次ぎリピーターになる前に死ぬことでアントニオが部下に製造を禁じたとされている。それに、それを作った奴はうちとの抗争の際に真っ先に逃げ出して行方知らず。ボスが捕まったとは言え、この辺りではうちより巨大な組織だったんだ。当然一枚岩じゃないだろう。今回の新種のドラッグに関しては今のところディアブロ・カルテルの残党組の犯行というのが我々の見解だ。或いは、頭を失った組織同士ミケーネファミリーと結託したか」


「なんでそこでミケーネファミリーが出てくるんだよ?」


 デュランの問いにジェイクは答える。


「イタ公の死体もあがってるのさ。状況から察するに、どうやらうちの組員と刺し違えたらしい。イタ公のポケットから例のドラッグが見つかったから少なくとも顧客、若しくはバイヤーであった可能性がある。いずれにせよ、何らかの繋がりはあるだろうと見ている」


 一通りジェイクが話し終えたタイミングでウィリアムが口を開いた。


「なるほど。だからあなたたちは僕らにこのことを話したんですね」


「…………」


 口を紡ぐジェイクはただ真っ直ぐウィリアムの目を見ていた。まるで真実を探るかのように。


「おいウィル、そりゃ一体どういう意味だ」


「考えてもみなよデュラン。僕らは今どこに仮住まいしている? つまり、この件の疑いは僕らにもかけられているんだよ。いや、おそらく正確にはトルメンタさんに、ってところだろうね」


 それを聞いたデュランの双眸がジェイクを睨む。それと同時に周囲に潜んでいた大勢の黒服たちがテーブルの周囲を取り囲んだ。どうやら最初から虎皇会の組員に包囲されていたらしい。


「上等じゃねぇか。喧嘩売りに来たってんなら買ってやるよ」


 殺気立ったデュランを迎え撃たんと凶星は服の袖から大量の暗器を取り出す。それを制したのはジェイクだった。


「やめろ凶星。我々はあくまで話し合いに来ただけだ。気を悪くさせてしまったのは謝罪しよう。しかし我々もいち早く今回の件を解決したいと考えている。何か解ったら情報が欲しい。今回の件が解決しない以上、ウィリアム。以前お前と取り交わした約束は保留にさせてもらう。話はそれだけだ。今日のところは、だがな」


 それだけ一方的に告げると、ジェイクは部下達を引き連れて去って行った。

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