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EDEN's Order(エデンズオーダー)  作者: 後出 書
ディアブロ・カルテル 篇
111/195

第二試合、決着

 一体全体何が起こったのか。


 技を放った本人の姿が消え、技を受けたはずの相手のみリング上に立っている。側で見ていたウィリアムにも何が起こったのか全く理解出来なかったが、ガルーダマスクが目線を視線を下に向けていることに気づきリングへより近いてその謎がようやく解けた。


「デュラン!!」


 リングの真ん中。デュランが立っていた場所には先程までは間違いなく無かった穴がポッカリと出現していたのだ。


 寸勁を放つ際に勢い余って踏み抜いたのかと思い、リング下の幕を捲るとウィリアムは驚愕の光景を目にした。


 なんと設置されているリングの更に下。石床にまで穴が空いているではないか。リングを覆った煙は破砕されたリング下の床材が細かく舞ったものだったのだ。


 しばらくリング下を眺めていると、突如墓穴から這い出るゾンビのように瓦礫を掻き分け床下から手が突き出て来た。


「ひぃっ!!」


 その光景が余りにもホラー映画の様で思わずウィリアムはリングから後ずさる。そのすぐ後にリングの穴からも手が伸び、石床の破片に塗れたデュランが這いずり出てきたのだった。


「ゴホゴホッ、だぁーチクショウ! 口ん中がザラザラしやがる。ぺっ、ぺっ!」


 再びリングに上がって来たデュランは口に細かい砂や石が入ったようで唾を吐きながら体中をはたいている。


『リング上から姿を消したデュラン選手ですが、なんとリングの下から這い上がって来たー! しかし、ここで審議が入ります。本試合の勝敗の決め手は相手の戦闘不能のみですが、選手自らリングを降りた場合も試合からの逃走行為と見做し失格負けとなる場合がございます。デュラン選手が技を放つ際とはいえ自らリングの床に穴を開けたのであればこのルールが適応される可能性がございますので、観客の皆様は投票券を捨てずに今しばしお待ちください!』


 ざわつく観客たち。当のデュランはリングアナウンスを全く聞いておらず、依然と瓦礫や埃に塗れた不快感を露わにしているばかり。しかし大したダメージを受けた様子もなくピンピンしているので戦闘の続行自体は問題なさそうである。但し、本人の意思とやる気に反してルールの上で負けそうになっていることに気づいていない。


『審議の結果、デュラン選手は自らリングを降りたと見なされ、この試合ガルーダマスク選手の——』


「その審議、待った!!」


 今まさに勝利が確定しようとしていた結果の発表に待ったを掛けたのは他ならないガルーダマスク本人であった。


「マットの穴は彼が踏み抜いたものではない。私の技によるものだ」


 確定せんとしていた勝利を手放す発言をしたガルーダマスク。観客たちの動揺が更に波及していく中、彼は更に続ける。


「私は二度も信条を曲げ、約束を反故にしてしまった。相手の技を受け切ると断言しておいてこのザマだ。正義のレスラーとして情けない。この試合、私の負けだ」


 まさかの勝利放棄。

 この瞬間、第二試合はデュランの逆転勝利が確定したのだ。


 デュラン本人はそうとも知らず、今尚髪や服に付着した細かいゴミや埃をはたいている。自由もここまで来ると疾患を疑うレベルである。


 リングアナウンサーが改めてデュランの勝利を告げ会場中が沸き上がる中、ガルーダマスクはデュランに近づくと頭を下げた。


「約束を違えてすまなかった」


 身なりを整える手を止めたデュランは凄まじい勢いで振り返ると、ガルーダマスクの両肩をがっしり掴んだ。


「さっきのやつどうやったんだ!? あれもプロレス技なのか!?」


 実に興味深そうな嬉々とした表情でガルーダマスクに尋ねるデュラン。彼が料理以外のことでここまで活き活きすることは非常に珍しい。一体何がそこまでデュランの興味を刺激したのか側から見ていたウィリアムには疑問でしかなかった。


「いや……あれはプロレスの技ではない。合気道と呼ばれる日本武術の技だ」


「アイキドー? ケンドーといい、日本にゃドーが付く武術が多いんだな。いや、だがありゃすげーな。俺の技の威力を殺すどころか、そのまま利用して地面に叩きつけただろ。一瞬なにされたか全くわからなかったぜ。気づいたら地面に埋まってんだからよ」


「相手の力や人体の神経反射を利用する武術でな。女性や子供でも私みたいな大男を御せる護身の極みだ。私の実家が元々合気道の名門でな。つい反射的に使用してしまった。許して欲しい」


「そんなことはどーでもいいからその合気道の基本技をいくつか教えてくれ! うちにいるガキンチョにこれを教えてぇんだ」


「約束を違えたせめてもの罪滅ぼしだ。いいだろう。まずは相手の——」


『あのー、両選手。盛り上がっているところ申し訳ないのですが壊れたリングを新しいものへ入れ替えるので速やかにそこから退場してください。その為、準決勝のエドウィン選手とデュラン選手の試合はリングの準備が整い次第アナウンス致しますので、ご来場の皆様もしばしお時間を頂きますことを何卒ご理解の程よろしくお願い申し上げます』


 アナウンサーに促されてリングから退場した後も、選手用のエレベーターホール付近でデュランはガルーダマスクから合気道の基礎と基本技をいくつか教えてもらった。


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