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EDEN's Order(エデンズオーダー)  作者: 後出 書
ディアブロ・カルテル 篇
107/195

第一試合、開幕

 ホテルに到着したデュランとウィリアム。招待状の入った封筒には一枚のカードキーが入っていた。それをウィリアムは取り出すと、ロビーにあるエレベーターに入りカードをセンサーにかざして地下一階のボタンを押した。


 ゆっくり動き出したエレベーターは地下駐車場を通り過ぎ、更に下へと向かって行く。招待状に記載されていた通りである。


「わわっ、ボタンには地下一階までしかないのにまたまだ下がって行くよ。なんか秘密基地みたいでワクワクするね」


「はしゃぎすぎだ。恥ずかしいからやめろよ。誰かに見られたら田舎モンかと思われんだろうが」


 約五階層分ほど下がったところでエレベーターは停止。ドアが開くと虎皇会の組員と思しき二人の男が立っていた。


「ようこそ。当ホテルの会員制クラブへ。早速ですがボディチェックにご協力ください」


「あぁ? 野郎に身体を弄られるシュミはねぇぞコラ」


 早速組員二人を睨み付け噛み付かんとするデュランを宥め、協力を促すウィリアム。メイファンもこうなることを予め予想してウィリアム同伴で招待状を寄越したのだろう。


「武器等の危険物の持ち込みは無い事が確認出来ました。続きまして招待状を拝見致します」


 ウィリアムは即座に招待状を渡した。それに目を通した男は二人に対して一礼する。


「お待ちしておりました。デュラン様、ウィリアム様。選手控え室へとご案内致します」


 男の一人の後に続き、赤絨毯が敷き詰められた長い通路を歩く。上の一般客室と同じ造りのようで、ホテルの客室と同じタイプのドアがいくつもあり、その一つで案内役の男が止まった。


「こちらがお二方の控え室となっております。当ホテルのセミスイートルームと同じ内装ですので、空き時間には仮眠やシャワー、ルームサービス等で御寛ぎください。また、他の方の試合はコロシアム以外でも室内のテレビでご観覧頂けます。試合開始の十分前に係の者がお声がけに伺います。また、何か御用がありましたら備え付けの内線でお気軽にお申し付けください。それでは失礼致します」


 客室——もとい控え室内で簡単に説明を行なった男はそう言うと一礼して退室して行った。


「いよいよだねー。なんだかこっちまで緊張してきたよ」


「なんならお前が代わりに出ても良いんだぞ。おやっさんのレシピを勝ち取ってくれるなら出場権譲ってやるよ」


「冗談でしょ。一分も保たない自信があるよ」


「だろうな。俺はちょいと寝るわ。呼ばれたら起こしてくれ」


「えっ、試合見ないの? 第一試合がそろそろ始まるみたいだけど」


「興味ねぇ。出来るだけ体力温存してーからな」


 そう言うとデュランはベッドに倒れ込むと、すぐに寝息を立てていた。


「ホントに寝ちゃったよ……まぁ、いいや。僕だけでも見とこっと」


 テレビのリモコンを手にし、電源を入れると金網に囲まれたリングが映し出されていた。周りには身なりの良い如何にも金持ち風な老若男女が集まっていた。大金を湯水のように使い、己の刺激や欲求を満たさんとする亡者たち。中にはテレビで見たことある著名人の顔もチラホラ見受けられた。


 第一試合は予選一位で通過した伝説のボクサーと二位で通過したタイの元ラジャダムナン・スタジアムのウェルター級ムエタイチャンピオンとのこと。ボクサーの方はリングに上がっており、フード付きのボクシング・ガウンを羽織っているため顔が見えない。一方のムエタイ選手はまだ入場していない様子だった。


 試合時間はとうに過ぎており、会場中のざわめきや実況解説席からも選手を呼ぶ声や動揺の声が聞こえている。一回戦目から何やらトラブルの予感。ウィリアムの不安を他所にいびきをかきながら寝ているデュラン。すると、ムエタイ選手側の入り口から何やら騒がしい声が聞こえている。大人数の声。ざわめきと同化して何を喚いているのか詳しくは聞こえないが、何やら制止を求めているらしい。入場口から出てきた選手を見てウィリアムは驚きのあまり思わず大声でその人物の名を叫んだ。


「ライガン!? うそ、なんで!?」


 怒り狂った様子でバングブラザーズの頭目、ライガン・バングが制止を促す五名の係員らしき男らを物ともせず引きずりながらリングへと進む。ちょうどその時、リングアナウンスによる状況説明が流れ始めた。


『えー、只今入った情報によりますと予選二位で通過したムエタイ王者プアカーオ・ワンチャイ選手ですが今現在リングに向かっているライガンと名乗る大男に控え室にて一撃で倒されたとの事です。主催者側での協議の結果、強者としてリングに上がる資格ありということで対戦カードが変更になります。それに伴いオッズの変更を行ないますので、一度賭け金を返金し改めて両雄どちらかに賭けて頂きたいと思います。その為、第一試合開始時刻を五分延長したのち開始とさせて頂きます』


 予想外の乱入者に湧き上がる観客たち。熱狂の渦の中、憤怒の形相で対戦相手を睨むライガン。リングの上でガウンを目深く被り表情が見えない対戦者のボクサー。しかし、その口元は笑っているように見えた。


 ウェイトも身長差も関係ない。武器使用以外のすべてが認められた喧嘩賭博。集計を終え、モニターに表示されたオッズはライガンの方が上回っていた。派手な登場。二位を一撃で倒したという前情報。そして対戦相手の倍近くはあろうかという巨体。期待値的に見ても当然と言えば当然の結果である。


 ライガンがリングに上がると、対戦相手のボクサーはようやくガウンを脱ぎ捨てた。ボクサーの正体はデュランと再戦に来たエドウィン・マクレガー。エデンに来るなり虎皇会から試合の招待を受け、予選を勝ち上がって今ここに立っている。デュランの名を出せば二つ返事で承諾を得られることはわかっていた。だからこそメイファンは是が非でもデュランを試合に出したかったのだ。この男もまた、今回街を騒がせているマフィア殺しの容疑者なのだから。


「誰かと思えば、この前ボコったなんたらブラザーズのアニキの方じゃねーか。本当にリベンジに来たんだな」


「弟の仇、討たせてもらうぜ!」


 両者リングの中央で睨み合う両雄。

 そして今、非情のゴングは鳴らされたのだった。

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