表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者様がいっぱい!  作者: 真白
魔王様人間界に行く
3/99

魔王の条件

「その者の名は、大魔王長直属主席魔導秘書官アールベルト。この者に人間界への物資調達の指揮をとらせる事とする。」


魔王達はまず、呼ばれた名が自分で無い事に安堵する。しかしそれと同時になぜ?と言う疑問が湧き上がる。そもそも他世界への侵攻は魔王にのみ許される行為である。何故なら侵攻によって手に入れた領地は、全てその魔王が治める事になっているからである。魔界では領地を魔王以上の存在が領地を持つ事が許されており、また領地を持たない者は魔王と認められないのである。従って魔王になる為には他の魔王から領地を分け与えてもらうか、自ら奪い取るかの二種類の方法しかないのだ。前者では当然魔王配下の魔王という事になり、従属関係を強いられる。稀に魔王の引退により世襲する事もあるが、長命の魔族にとってはほぼあり得ない事である。領地とは魔王にとっての力の象徴なのである。隙を見せれば他の魔王に奪われてしまう可能性もある。


「魔王でもない者に人間界への侵攻など、とうとう大魔王長様もお惚けになられたか。」


と嘲笑を込めて大魔王サエルが言い放つ。


「それに関しては問題ない。すでに我が領地の1/3を彼の者に引き渡す手続きは済んでおる。大魔王長直属主席魔導秘書官を務めるほどの者だ。実力は問題あるまい。領地の問題さえクリアしてやれば魔王としても問題なかろう。」


大魔王長ベラルはニヤリと言い放つ。


「しかし、それでは職権の乱用と言うもの。大魔王長と言う地位を利用して、新たな魔王と人間界の領地を容易く手に入れようと言うのですか。失敗しても領地を再び自分のものとすれば良い。些か小細工が過ぎるのではないですか?」


大魔王サエルはなおも食い下がる。しかし他の魔王長や魔王達は、すでに自分や自分の配下が人間界へ赴くのではないとわかり、若干興味を失いつつある。


「サエルよ。もう良いではないか。」


もう一人の大魔王長ダガルがたしなめた事により、この提案は魔王会議にて承認される事となった。細かな計画立案等は当事者への通達後におこなわれる事となった。こうして100年に1度の魔王会議は終焉を迎えるのであった。


********************


魔王会議終焉後、議場内にある一室で3人の大魔王が酒を酌み交わしている。


「思いのほか事が早く済みましたな。」


とダガル。


「それはそうだろう。我らが主導する話に横槍を入れられるのは、大魔王の中でもソラルのアホだけだろう。あいつはもともと地位とか領地とか他人のことには興味が無いからな。この件には絡んでこんだろうと踏んでおったわ。」


と笑いながらサエル。


「これでようやく人間界への足がかりができる。」


とベラル。


今回の一件は20年ほど前から、三人により計画されたものであった。大魔王長ベラルが密かに二人を誘い闇問題解決の為に協力するとの確約を取り付けたのである。


闇とは、魔界に存在する資源の一つだった。発見された時には、拳大の真っ黒い霧の塊だった。霧と言っても密度が濃い為水飴のような粘りと感触を持ち、引きちぎる事も可能であった。この闇は適度な光をあてるとその光を食べて濃密なマナを吐き出す性質があった。


マナとは魔界や魔族にとっては、その存在を構成する要素とも言えるものである。濃密なマナを使えば強力な力を振るう事も、肉体を若返らせる事も可能なのである。


しかし、弊害もあった。闇は光を食べるのである。食べられた光は戻らないのである。光源から供給される量よりも食べる量が上回れば、周囲は陰りやがて闇に飲まれてしまう。その事に気付いた時には、すでに魔界の1/100程が闇に覆われていた。そこから150年程で魔界のほぼ全域が闇に飲まれる事になったのである。闇を小さくする方法もあったが、その方法が発見された時にはすでにどうする事も出来ない所まで事態が進行してしまっていた。今回の人間界への侵攻は、闇を小さくする方法を持ち帰る事が目的なのである。


「それにしても、闇を払うとは言うものの、今回の侵攻の本当の目的はなんなんだ。」


サエルがベラルに問う。


「なんだ、気付いておったのか。闇に関するものも当然目的ではあるが・・・」


言葉を濁すベラルにダガルが詰め寄る。


「おいおい、本当の目的ってなんだ。そんな話は聞いてないぞ。」


長い付き合いの三人である。お互いの性格はよくわかっている。こうなっては隠し通す事は出来ないとベラルは諦め


「うちの魔導秘書官がなぁ。面倒なやつなのだ。魔族の割に規律だルールだと。何かするにも計画通りに動けと煩くてな。そこで今回の件に奴を組み込みこむ事で、厄介払いをしようと思いついたのだ。」


アールベルトが人間界に行き、闇対策を持ち帰るまでベラルは自由を得る。持ち帰らずとも人間界で朽ちてくれればなお良しと言う算段である。


その話を聞いたサエルとダガルは、呆れるような顔でベラルを見る。一瞬の間の後、三人は大声で笑いあう。魔界の存亡も、嫌な奴を遠くへ追い払う事も、この三人にとってはどうでもよい事なのだ。ただ今は作戦が思い通りに行った余韻を楽しめればそれでいい。今を楽しむ、それが魔族としての生き方なのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ