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Vermillion Kings~紅き猛虎と黒き孤狼の英雄譚~  作者: 土田耕一
第1章 紅雌虎
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第1章 第8話「奇襲」

 そうと決まれば彼らの行動は早かった。まず、全員で敵陣の近くまで接近し、レオンとミアで後ろから手早く近くの兵士の首に死神の鎌を振り下ろした。音もなく兵士の身体が崩れ落ちると、ギャッツとシャルロットがその体を受け止め鎧をはぎ取った。その行動を再度繰り返し、計四つの相手側の紋章が入った鎧を手に入れ、レオンたちはその戦利品に袖を通した。敵兵に変装した四人は目的の天幕へ近づいていった。天幕の前には二人の見張りの兵士が立っていた。


 見張りの兵は四人を呼び止めた。


「止まれ!何用だ!」


 警戒心を露にした兵士に呼び止められると、レオンはいかにも訓練を受けた兵士の口調で言った。


「はっ!先ほど騒ぎを起こした者たちについての報告があり参りました!レズモンド侯爵様に御目通りをお願いします!」


「いま侯爵閣下は軍議中である。報告ならばここで聞く。」


 レオンとミアは互いに顔を見合わせ、変装の無駄を悟ると、兵士のふりを止め、剣を抜き、見張りの兵士が声を上げる前に倒してしまった。一連の鮮やかな、かつ手慣れた所業にギャッツとシャルロットは呆れ顔であった。


四人が天幕の中に入ると、狙い通り天幕の奥には豪華な鎧を着たレズモンド候と思しき人物が座っていた。誤算だったのは、いまだ作戦会議中だったため、将兵が何人かいたことであった。すぐさま乱戦となった。将兵の一人が「曲者―!!」と叫ぶとたちまち外から応援の兵士たちが駆け付けた。その為、ギャッツとシャルロットは入り口付近で少しずつ入ってくる敵兵を相手どらなければならなかった。そこでレオンは『火猿剣』の名の意味を知ることになった。そこかしこを猿臂のごとく飛び回り、相手を翻弄し、猛火のような攻めで相手の首が切り裂かれる。そして、ギャッツも並ではなく、『斧熊』の名に恥じぬ戦いぶりで相手を吹き飛ばしていく。レオンは二人が問題ないことを悟ると目の前の敵に集中することにした。将兵が四人にレズモンドが一人・・・いや、たった今ミアが一人袈裟懸けに切り伏せたところなので、残りは四人。時間をかけすぎれば辺りの兵士たちがさらに集まってきてしまう。


レオンは将兵二人を、ミアは将兵一人とレズモンド候を相手にしていた。驚いたことにレズモンド候は中々の剣の使い手だった。ここで負ければ殺されてしまうのが分かっているのだろう。普段の実力以上の力を出して、死に物狂いで勝負を仕掛けているようであった。ミアもレオンも決定打に欠き、賭けに出ようとしていたその時であった。


「夜襲だー!ユベルノ騎士団が攻めてきたぞー!」


 外から兵士たちの大騒ぎする声とともに軍馬のいななく声が聞こえてきた。その声にレズモンド候が気を取られた瞬間を、ミアは見逃さなかった。一瞬ミアからレズモンド候の視線が外れた隙を突き、レズモンド候の剣を弾き飛ばしたミアは、返す刃でレズモンド候が「待った!」と言い終わらぬうちに首を跳ね飛ばしてしまった。無残に転がる首を見て、戦っていた将兵たちは主の供をとさらに剣を向けてきたが、いかんせん敗北を悟った力のない剣である。レオンとミアには大した脅威にもならず、すぐに主と同じ運命をたどることとなった。


 そしてミアは天幕の外へ出て、レズモンドの首を天高く掲げて一喝した。


「聞け!レズモンド候はドミニク王国第一王女・ミーシャ・ティガネス・メアリ・マクダネルが討ち取った!既に抵抗は無意味だ。剣を置けば命は助けてやろう!」


 戦場でもよく通るミアの声に、敵兵はこれ以上の抵抗の無駄を気付かされ剣を置き、味方は己が主が成し遂げたことに歓喜し、勝鬨を上げるのであった。

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