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エマニュエル・シリーズ設定資料集  作者: 長谷川
◆種族・民族・国家
12/17

種族④──亜人

 エマニュエルには人間や獣人の他にも、未だ謎多き第3の人類〝亜人〟が存在する。本頁ではそんな亜人に分類される種族について解説する。

角人(ケレン)

 幻の種族と呼ばれる小型亜人。身長は110~130cmと人間の子供程度しかなく、上半身は人間、下半身は鹿の後肢によく似たつくりとなっている。このため膝の関節が人間とは逆向きで、左右の足を交互に出して歩くのではなく、常に飛び跳ねるような歩調で移動する。尻尾も鹿のそれに酷似しているが、名前の由来となっている角は額から1本生えているのみで、鹿のように生え替わることはない。

 角人族の角は頭蓋骨から伸びた短い骨であり、これをやわらかい皮膚が覆っている。角人たちは言葉を持たず、『心話(しんわ)』と呼ばれるテレパシーによって会話するため、この角が互いの思念の受発信器になっているのではないかとする説もある。

 角人族の心話は通常、同族の間でしか使えないが、神子ならば彼らの〝声〟を聞くことが可能。それ以外の人間とは意思の疎通が図れないため、人前に姿を現すことは滅多にない。特定の棲み処は持たず、世界中を転々として暮らしている。

 他にもエルフのような長い耳や、白目のない真っ黒な瞳が特徴。華奢な体格でありながら頭だけが異様に大きく、彼らの容姿を不気味と感じる人間も少なくない。

 太古に栄えたハノーク大帝国と深い関わりを持つと言われるが、詳細は不明。不老種族で、一生を子供のような姿で過ごす。人間との接触がないため寿命も不明。なお戦闘面では非常に非力だが、神術に似た力や妖術を操るという噂もある。


妖精(エルフェン)

 身長15~20cmほどの超小型亜人。姿は美しい4枚の(はね)が生えた小人と言ってよく、蜉蝣(かげろう)の翅を持つ者もいれば蝶の翅を持つ者もいる。

 その正体は何らかの原因で個の人格に目覚め、人型を取った精霊。見た目は人類に近いが中身が精霊であるがゆえに、亜人に分類すべきかどうかという議論が今もなされている。未だかつて妖精の誕生する瞬間を見た者はいない。本来精霊とは個としての人格はおろか思念すら持たない空気のような存在だが、たとえば精霊の力が一ヶ所に集まり、凝固すると人格を得るのではないかと考えられている。

 このため彼らの肉体は半霊体で、触れることはできるが内臓等の器官は持たない。当然ながら食事も必要とせず、不老。神刻(エンブレム)を介さずに神術を行使できるが、己の存在の一部を神術に変換するため、術の使いすぎは消滅(=死)に直結する。

 あまのじゃくな性格の者が多く、預言者(※1)のように神々の声を聞くことができると言われながら、素直にそれを伝えることをほとんどしない。人間を試したり悪戯したりするのが好きで、生意気かつ無邪気な言動が目立つ。

 世界中を見渡しても目撃例は極めて少ないが、北西大陸北部の『黒の森』には妖精たちの楽園があるという伝説がある。ただし森の奥へは選ばれた者しか辿り着くことができず、それ以外の者が森へ踏み込めば、二度と樹海の外へは出られないという。姿は人間の少年~青年に似ており歳は取らない。少女の姿をした妖精もいるが、厳密には性別という概念を持っていない。寿命も確認されておらず、自ら力を使い果たして消えない限りは不死なのではないかと言われている。


巨人(ナフィール)

 太古に実在したと言われる大型亜人。見た目は人間そのものだが身長は4~7mもあったと言われ、勇敢で武勇に優れる一方、知能は極めて低かったとされる。

 言語による文化を持たなかったと考えられており、人間との意思疏通はできなかった模様。ハノーク大帝国時代に人間によって駆逐され、絶滅に追いやられたとされる。北極や南極に近い土地で毛象(エルプ)などの大型の獣を狩って暮らしていたことがハノーク遺跡の壁画から判明しているが、詳しい生態や寿命は不明。

 現在では生存する個体は確認されていないものの、ビッグフットのような未確認生命体として多くの冒険記に目撃情報が綴られている。その多くは〝普段人間が立ち入らない雪山に棲息〟と伝えているが、エマニュエルに存在する冒険記の大半は娯楽目的で書かれたフィクションであり、信憑性は非常に薄い。


人魚(フィン)

 赤道付近の中央海で暮らす海中種族。上半身は人間、下半身は魚の姿をしている。螺鈿(らでん)に似た光沢を持つ虹色の鱗と、麗しい容姿を持つ。人魚語と呼ばれる音の美しい言語(作中では造語で表現)を話すが、中には片言のハノーク語を話せる者もいるという。

 人前に姿を現すことは滅多にないものの、目撃例は圧倒的にメスが多い。オスは『三叉銛(トライデント)』と呼ばれる長柄武器を使って戦う戦士であり、テペトル諸島南海にある人魚族の王国を守護していると言われるが、メスに比べて個体数が少ない。

 非常に美しい歌声を持つ種族で、彼らの歌には不思議な力が宿っている。人魚がうたう愛の歌は聴く者の心を漏れなく魅了し、呪いの歌は嵐と高波を呼ぶ。美しいものを愛でたり集めたりすることを好む人魚たちは、容姿端麗な人間を見つけると愛の歌をうたって心を奪い、()()()()()()として海底へ引きずり込む。

 また航行中の船を見かけると嵐を呼ぶ歌をうたい、難破させて宝石や芸術品といった美しい積み荷を盗むという。このため人魚の住まう海域を渡る船は、護衛として鮫人(シャーク)族の戦士を雇う。また人魚は人魚の鱗を持つ人間は決して狙わず、遠くにいてもその存在を感知できると言われている。

 こうした人魚の習性から、彼らの鱗は幸運のお守りとして人間たちの間で重宝される。美しい光沢を生かした人魚細工は工芸品としても大変人気。

 船乗りたちの間では不吉の象徴として恐れられている種族だが、その本質は無邪気で好奇心旺盛。鮫人のように陸へ上がることができないため、人間たちの暮らしに興味を持っている者も多いという。

 赤道付近の海に暮らしているのは鮫人族のように厚い皮下脂肪を持たないため。比較的温かい海域にしか姿を見せず、貝類や甲殻類、海藻などを好んで食べる。

 鮫人族と同じく胸の両脇にエラがあり、エラ呼吸。過去に人魚に魅了され、捕獲して飼育しようとした人間の記録によれば、深さ1.5m、幅1.5m×3mの水槽で約1年生存させることができたとのこと。しかし海から遠い内陸へ運ぼうとすると、あるとき突然裂帛の叫びを上げ、泡となって消えてしまったという。

 通常環境での寿命は100年程度。ある程度まで成長すると歳を取らず、若く美しい姿のまま一生を終える。彼らの暮らす海底王国については未だ謎が多いが、一説によれば海の底で燃え続ける蒼い太陽があり、人魚たちはそれを信仰の対象として守り続けているという。


人馬(セントール)

 弓と槍の扱いを得意とする半人半馬の種族。北西大陸中北部に広がるカザク大平原に棲息し、遊牧民に似た生活をしている。非常に厳格かつ博識な種族として有名。精霊の声を聴く能力があり、カザク大平原にいながら海の向こうで投げられたコインの裏表も当てられるという。

 迷える者が求めれば道を示してくれるというが、そのためには彼らが与える数々の試練を乗り越え、力と覚悟を示さなくてはならない。ハノーク語を流暢に操り、常に群で行動する。不老種だが寿命は60~70年。

 メスの個体は存在せず、繁殖期を迎えると若く健康な人間の娘と交渉、もしくは攫って交尾する。夫婦という形態は持たず、子が生まれれば娘は人間の里へ帰されるが、人馬族の子を生んだ娘のその後の人生には、信じられないほどの幸福が約束されるという。なお人馬族と人間の間に生まれるのは必ずオスの人馬。

 下半身が馬の姿をしているため草食と誤解されがちだが、伝統的な狩猟民俗であり雑食。かなりの美食家で、うまい酒や料理を馳走するとその返礼として、古今東西の忘れられた伝説や詩歌、予言をもたらしてくれるという。

 ただし馬肉だけは決して食さず、馬肉を一度でも口にしたことがある人間とは決して交渉しない。このため、娘を人馬に取られたくない親は幼い頃から馬肉を食べさせる。また馬肉を食した経験のある人間がしつこく交渉を求めると、怒り狂って襲いかかってくるという。人馬族にはいかなる嘘も通用しないため、要注意。


人蛇(ナーガ)

 無名諸島の密林で稀に目撃される半人半蛇の種族。メスの人蛇は「ナーギニー」と呼ばれる。爬虫類の眼と先端が二又に分かれた長い舌が特徴。

 人蛇語(作中ではヒンディー語で表現)とクプタ語を操り、無名諸島の諸部族からは神のごとく畏れられる。毒や薬に関する知識が豊富で、製法不明の様々な秘薬を生み出せるという。

 集落を形勢している形跡はなく、無名諸島の各島を転々としながら暮らしている模様。過去何度か海を泳いで渡る人蛇の目撃例があり、シルエットで人魚と間違われることもある。無名諸島の先住民たちは、人蛇が目撃された森には決して近づかない。人蛇の領分を荒らすと、彼らは雨の日に人里へ現れ、報復として人間の生き血を啜るためである(生後間もない赤子を丸飲みにするという話もある)。

 人蛇側も進んで人間と接触することはなく、その生態は未だに謎が多い。何年かに一度蛇のように脱皮するらしく、人蛇の脱け殻は所持していると幸運を呼び込むという。ただし脱け殻の所在を巡って部族同士の争いが起きた例もあるほど稀少なもので、乾燥させた脱け殻は万病に効く薬となると言われている。

 『蛇月刀(タルワール)』と呼ばれる曲刀を武器とし、オスもメスもそこそこの戦闘能力を有する。不老種で寿命は100年程度。死期が近づくと海に潜って消えるという。人蛇族の血は猛毒で、浴びると確実に死に至る。

 占術を得意とする種族でもあり、礼を尽くして乞えば未来を占ったり、毒や薬を分け与えてくれることも。しかし代償として若く健康な人間の生き血を求め、これが用意できなければいかなる要求にも応じない(血が飲めれば良いので殺しはしない)。人蛇族の占いは不思議なほどよく当たると言い、彼らとの接触を求めて無名諸島を訪れる人間も多い。


人鳥(ハーピー)

 テペトル諸島近海に出没する半人半鳥の種族。鳥の下半身と翼と化した両腕を持つ。鳥人(ファウル)の血を引く半獣と混同されがちだが、まったく別の種族。中央海に点々と浮かぶ岩場などに営巣し、生き物の屍肉を好物とする。

 言語を持たず、人間との意思疏通はほぼ不可能。メスの個体しか生まれない種族で、繁殖のために若く健康な人間の男を攫っては、集団で強姦し弱ったところを貪り食ってしまう。寿命は30年程度と亜人の中では極めて短いものの、他の種族同様不老で卵生。風を操り、群で力を合わせて嵐を呼ぶこともできる。

 鳴き声が非常にやかましいことで知られ、テペトル諸島で暮らす民の間では災いの象徴とされている。しかし魔物を見ると群をなして集団で襲いかかる習性を持っており、魔海の魔物が西の海へ侵出してこないのは人鳥族の存在が大きい。恐怖の感情を持たず、いかなる魔物にも怯まず向かっていくことから、アビエス連合国では空艇軍(くうていぐん)(※2)の紋章に人鳥のシンボルを採用している。


人獣(スフィンクス)

 南東大陸で度々目撃される謎の種族。人鳥に似た上半身に獅子の下半身を持ち、先端が常に燃えている炎の尻尾を持つ。この炎は物理的な火ではなく人獣の魂そのものであり、熱くもなければ燃え移りもしないという。

 ハノーク語を解すが滅多なことでは口を開かず、謎かけしか話さない。人獣の謎かけに答えられなかった者は魂を食われてしまうと言われており、死を恐れるなら人獣を見かけても決して声をかけてはいけないし、目を合わせてもいけない。

 メスの数が圧倒的に多く、オスの目撃例は少ない。集落を形勢している形跡はなく、普段はどこでどのように暮らしているのかまったくの不明。

 というのも人獣たちは透明になる能力を持ち、平時は完璧に姿を隠している。ところが死期が近い人間を見つけると、その相手が落命する前日に姿を現し、傍でじっと死ぬのを待つ。そして対象が息を引き取ると、肉体から抜け出た魂をぱくりと食べてしまうという。

 このため病人や老人がいる家の屋上でくつろいでいる姿などが度々目撃され、人獣が現れると南東大陸の人々は死人が出ることを確信する。また何もない場所にぽつんと人獣がいる場合、その近辺で近く殺人や戦争が起こると言われている。

 こうした死の予兆として現れるのは決まってメスの人獣であり、彼らに憑かれた人間は必ず死ぬ。しかし死を回避する方法がひとつだけあり、それは人獣が出す謎かけに正解することである。

 これは憑かれた当人ではなく、その親類や近しい者であっても構わない。〝獣憑き〟となった人物を救いたい場合、人獣にそれを伝えて懇願すれば、人獣は謎かけを出してくる。これに答えられなければ挑戦者も命を落とすが、獣憑きが息を引き取るまでに正解を答えられれば、人獣は対象に自らの魂を与えて消滅する。人獣の魂を得た者は死の運命を回避し、長寿を約束されるという。

 人獣の魂を与えられた者はそれ以降、不思議な夢見の力を得たり、覚えのない知識や記憶に目覚めることがある。これは人獣がそれまでに食べた魂の記憶と考えられており、その恩恵によって身を立てる者もいれば、記憶や人格の混濁によって自我を喪失してしまう者もいる。

 しかし人獣は死を間近に控えた人間全員を看取りに現れるわけではなく、何らかの基準によって看取る人間を選り分けているようである。その具体的な基準は未だ明らかにされていないが、賢く清廉な者のところに好んで現れるという。

 なおオスの人獣は死期とは関係なしに人間の前へ現れ、一方的に謎かけを仕掛けてくる。これに答えられなければ魂を食われてしまうのは同じだが、見事答えることができると、さらに次の謎かけを出題してくる。この謎かけに連続で4回正解すると、人獣は回答者の守護者となり、あらゆる危難から主人を守る。また夢を通じて様々な知識や智恵を与え、主人を英雄に育てるという。

 パルヴァネフ豊王国の建国者イフサーンはこの人獣に守られた獣憑きであったと言われ、傍らには常にオスの人獣・シェムシャの姿があった。のちにイフサーンは豊穣神アサーの神子となり、シェムシャの加護の下、豊王国の国王になったことで有名である。アッバース首長連邦の紋章に人獣が描かれているのも、こうした人獣の加護を願ってのこと。ただし人獣は主人の死期が近づくと姿を消し、二度と戻ってくることはない。これは主人との別れを深く悲しむからとも、主人が死ぬと彼らも消えてしまうからとも言われている。

 不老種だが、寿命はあるのかないのかも不明。不死性を持ち、手傷を負わせてもあっという間に傷が癒えてしまう。なお人獣に手を上げた者は永遠に謎かけを投げかけられ、答えられなくなった時点で魂を食われる。逃げても隠れても人獣は必ず標的を見つけ出し、謎かけの答えを迫るという。

(※1)

 預言者とは、眠れる神々の声を聞くことができる人間のこと。地上にいながら天界と交信する能力を持ち、神々から託された神託や予言を人々に伝える使命を有する。神子と同様に神聖視され、天使と同一視されることもある。

 なお未来を言い当てる能力を持つ「予言者」と混同されやすいが、まったく異なる存在。予言者は先見の力しか持たないのに対し、預言者は神々と交信することでエマニュエルの森羅万象を見通すことができる。しかし昔から預言者を騙る詐欺があとを絶たないのは同じ。預言や予言を授けると声高に謳って金を集めたり、人々を煽動しようとする人物には要注意。


(※2)

 空艇軍とは、アビエス連合国が保有するエマニュエルで唯一の空戦部隊。希術(きじゅつ)(※3)を用いて飛行する『飛空船(ひくうせん)』と、連合軍に籍を置く猫人(ケットシー)族及び鳥人(ファウル)族の戦士によって構成される。

 世界最大の軍事国家であるエレツエル神領国が最も恐れる軍隊で、竜と竜騎士からなる『翼と牙の騎士団』を除けば、他に抗し得る者のない最強の部隊と言われている。特に飛空船には、同じく希術を動力源とした破壊兵器が多数搭載されており、空を飛ぶ術を持たない他国の軍隊には対抗策がない。

 当然ながら神術による攻撃を防ぐための機能や訓練も万全で、識者の間ではアビエス連合国がもしも神領国のような帝国主義国家であったなら、エマニュエルはとっくに連合国に統一されているという見方が強い。戦力としてはもちろんのこと、輸送部隊としても非常に優れた機動性を誇る。


(※3)

 希術とは、口寄せの民が創り出す『希石』を源とする妖術のこと。希石に祈りの力を込めることで神術に似た力を行使したり、見えないはずのものを見たり、人や物を思いどおりに操ったりすることができる。

 アビエス連合国はこの希術を用いて大発展を遂げた国家であり、希術を魔術の類と信じ恐れる他国からは『魔法大国』と呼ばれるほど。しかし実際には魔界とは何のつながりもなく、希石が生み出す力は現代地球風に言えば〝非常にクリーンなエネルギー〟である。希石の製法は口寄せの民の間にのみ伝わる秘法と言われているが、ハノーク大帝国でも似たような技術が編み出されていた痕跡がある。

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