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029話 春に狙うは……

 元亀二年(1571年)四月 【越後 春日山城近くの山】にて


「獲ったどぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

「「「「おう!!」」」」


 獲物を仕留めた興奮に思わず雄叫びを上げてしまった。

 それに家来達と狩りを手伝わせた村人達が嬉しそうに応えてくれる。


 えっ? どこかで見た事がある始まりだって?

 歴史は繰り返すんだよ。二度ある事は三度あるんだよ。


 始まりは同じでも、道行きは変わるのさ。


 ほらっ「小説家になろ◯」のとある作者なんか「始まりは同じだけど途中からストーリーが変化する別ルート作品だ」なんて嘯いて、似たような仮想戦記を4作品も書いてたよね。

 あれって2作目以降、どんどんブックマークが減っているのに、懲りずに別ルートを増やしてるんだから呆れたものさ。


 あれだね。坂本龍馬の和歌「世の人は 我を何とも 言わばいえ 我が為す事は 我のみぞ知る」だね。


 もう我が道突っ走って正面衝突しちゃって自爆してるよ。


 まぁそんな話しはともかく、今回獲った獲物は、ボリノー◯何とか、じゃなくて、それはどこかのロボットだ。

 仕留めたのは森の熊さんだ。


 この季節、冬眠から目覚めてお腹を空かせている熊が多いから獲る時は注意しなくちゃいけない。

 現代日本でも、この時期は熊に襲われる人が多いんだよ。


 しかし、熊を狩るならこの季節を逃してはいけない。

 何故なら胆嚢が大きいから。


 熊の胆嚢は昔から薬として珍重されて来たからね。

 熊は冬眠中は食べないから胆汁が胆嚢に溜まり胆嚢が大きくなる。その逆に秋などは熊は冬眠に備えてよく食べるため熊の胆嚢はとても小さいらしい。

 

 だから春が狙い目なのだ。

 

 熊は胆嚢だけじゃない。

 肝臓や腸や肺、心臓、それに脳まで薬になるそうだ。

 熊の血も乾燥させて粉末にして薬にするそうだ。飲むと人の血を増やす効果があり、血を流す事の多い女性に良いのだとか。

 脂肪も薬になる。脂肪を鍋で熱すると脂が出てくるので、それを陶器の壷に入れ冷ますと火傷や切り傷に良く効く熊脂という薬になる。

 骨も乾燥させて粉末にし酢と練り合わせると打撲や打ち身に良く効く薬になるんだとか。


 ほんと熊は捨てるところが無いというか毛皮以外は全身薬になるような動物らしい。凄いな熊さん!


 仕留めた熊を村人たちに村まで運ばせてから解体した。

 まぁ俺は見ていただけだけどね。


 その解体方法は、まず仰向けにした熊の喉から下腹部まで皮の厚さだけ切り裂き、次に四肢にも切り込みを入れ、それを最初に切った身体の切り口に合流させる。

 その後はまるで蜜柑の皮を剥くような感じで皮を剥ぎ取っていく。皮を剥ぎ取った後の熊は遠目には白熊みたいな感じだ。身体全体に黄色がかった白色の脂肪がとりまいている。

 再び喉から下腹部まで脂肪を切り裂き、今度は内臓を取り出す。その内臓を取り出した後の体の穴には血液がたっぷり溜まっている。その血を椀で掬って壷に入れる。

 後は部位ごとに切り分ける。


 と、まぁこんな感じだ。


 村人達には薬になる部分の乾燥を任せた。

 その代わり熊の肉をかなり分けて、働きの褒美としたよ。


 村でこの獲ったばかりの熊肉の鍋を食べたんだけど美味かったよ。


 この熊肉を御館の義祖父(憲政)に進呈したら喜ばれた。

 義父(謙信)はまだ越中から帰って来ていない。


 帰って来る頃には熊の胆嚢がいい具合にできあがっているだろう。

 他の熊の薬も出来ていると思う。


 そうしたら熊の胆嚢は義祖父(憲政)と義父(謙信)に。

 熊の血の薬は上杉一門の女性方に。

 その他の熊の薬は重臣や有力な国人衆の身体の体調に合わせて、というか、適当に家来に聞き込みをさせて、症例にあった薬を渡そうと思う。


 そうやって点数稼ぎだ。


 今の自分に出来る事はそれぐらいだからね。 

 不安定な身の上は辛いよ、全く。


【つづく】


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