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021話 お正月 その①

元亀二年(1571年)一月 【越後国 春日山城】にて


 新年を迎えた。

 良い年になってくれると嬉しい。


 お正月の挨拶の時に義祖父、光徹様(上杉憲政)と義父上に、蜂蜜と蜂蜜酒を初めてお贈りしたところ、とても喜ばれた。良かった。良かった。

 特に蜂蜜酒は喜ばれた。

 薬酒という事が特に気に入ったらしい。

 酒を飲んで健康になるとは重畳と、やたらと喜び蜂蜜酒をチビチビ飲んでいる。

 まぁ酒飲みに酒を飲む大義名分を与えたようなもんだからね。


 義父上のお許しが出たので、養蜂と蒲公英(たんぽぽ)薬の作り方を書いた指南書を正月の挨拶に来た諸将に渡している。

 さぁ恩に着るがよい!

 勿論、表立ってはそんな事は言いはしない。


 表向きはみんな俺に「良き物をいただきまして」と感謝の言葉を述べてくれる。

 だが、素直に喜ぶ者もいれば、複雑そうな思いを表情にチラッと見せる者もいる。


 まぁね、長年敵対していた北条家のそれも宗家の血を引く者から恩恵を与えられるというのは複雑な思いを抱く者もあるだろう。


 それと、義兄、顕景(景勝)派の人達だね。

 上杉家の跡取りは血筋的に顕景(景勝)殿が相応しいと考え、俺が上杉姓と景虎の名を貰った事に不満を持っている人達だ。

 義父上が自分の跡取りについて、未だはっきりした事を言わない事もあり、もしかしたら俺を次の上杉家当主にしようと考えているのではないかと懸念を抱いている。

 これまで顕景(景勝)殿に取り入って来た者達から言えば俺は邪魔者だからね。

 そんな邪魔者から恩恵を与えられれば複雑な心情にもなるか。


 まぁそれはともかく領地が貧しく苦労している国人衆達の役に立ってくれればいい。

 

 越後における経済の根幹をなすのは米と青苧と金山、銀山、それに海上交易だ。


 米は輸出できるだけある。海路、米を出雲まで運び帰りは出雲の鉄を運んでくる。それが武器を始めとする鉄製品となる。


 青苧というのは多年草の植物で丈夫な麻の繊維がとれる。越後はその青苧の一大生産地だった。

 木綿がまだ普及していないので、この時代、越後で栽培された青苧から作られる越後布と呼ばれる麻布は、衣料品としてとても需要があった。

  

 金山、銀山は高根金山や上田銀山がある。

 この時代は金山で有名な佐渡は、まだ上杉家の支配にはない。


 こうした産物や産業があるわけだけど、全ての国人衆が潤っているわけじゃない。

 越後も広いから青苧の生産に適さない地域や、領地が内陸にあり海の恩恵をうけられない国人衆もいる。

 当然、経済格差はある。

 そうしたあまり潤っていない地域で養蜂や蒲公英栽培がうまくいってくれれば有り難い。


 はてさてどうなる事やら。

 後は運を天に任せてうまく行く事を祈るばかりだ。


 ところで、義父と義祖父に蜂蜜酒を贈っておいて義兄には何も無いのかと顕景(景勝)殿がお怒りらしいとの話が耳に入って来た。

 あっちゃーーーーー

 また素で忘れてた…… 


【つづく】 

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