分岐点前 彩芽・アルフェルタ編
学院の帰り・・・あたしは、好きな音楽を聴きながら今日の授業の復習をしていた。
「うぅーむ。今日もやたらと難しかったなぁ。疾斗に訊こうかなぁ」
そんなことを呟きながら魔術力学の問題に取り組んでいた。
そんなとき
―コン・・コン・コンコン―
「ん?・・・空いてるよー」
と言いながらも、こんな特徴あるドアの叩き方をするのは一人しかいない
「し・・失礼しますぅ〜」
「フフ・・・いらっしゃい。アルフェルタさん」
アルフェルタは、おどおどした様子で入ってきた。
いや、いつもおどおどしてはいるけどこれほどまでに緊張しているアルフェルタは珍しいと思った。
「あっ・・・すみません・・出直してきますね」
彩芽の机に勉強道具があったのを見たからだろう。アルフェルタは部屋から出ようとしていた
「ちょっ・・・ちょっと待って。あたしも全くわかんなかったからさ・・・」
引っ込み思案なアルフェルタを必死に止めようとする。
「い・・いえ、こちらこそ・・その・・なんというか」
(これは・・普通の会話から始めた方がよさそうね)
「あっ・・あのさ、アルフェルタさん。よかったら勉強教えてくれないかな?」
「ふぇっ?わ・・わたしでよかったら・・その、構いませんけど」
「わぁっ、ありがとう。んでね、ここなんだけど」
「ああ、これは魔力充填においての・・・・」
「ありがとう。おかげで今度の試験はいい点取れそうだよ」
「いえ、私でよければ・・・」
「そ・れ・でっ、ホントは何か話したいことがあるんじゃないの?」
「えっ?どうして・・・?」
とたんにアルフェルタの顔がドンドンと赤くなっていった。
「そりゃ〜その顔見ればわかるよ。フェイヘルのことかな?」
「はうぅぅっ どうしてわかるんですかぁ」
もはや、『どうしたらそうなるのだろう?』というくらいアルフェルタの顔は、赤くなっていた
熟れたトマトを横に並べても負けないくらいだろう
「もぉっ、分かりやすいなぁ」
「彩芽さんって結構・・・」
もう泣き目状態である
「フフッ、じゃあそろそろ本題に入りましょ。フェイヘルがどうしたの?」
「実は・・・」
アルフェルタの話の内容はこういうもだった。
朝の食事のときや学校にいる時など目を合わせれば今までは笑顔で返してくれていたものの最近は目を合わせてもすぐにそらされるということだった。
そのほかにも最近のフェイヘルはどこかおかしいような気がするということだった。
(アルフェルタさんほんとに気づいてないのかな?)
覚醒サキュバスとなった彩芽はこっち方面に関してかなり鋭くなっていた。
「う〜んとね、私から言わせてもらえばアルフェルタさんは今まで通りにしていればいいと思うの」
「そう・・ですか」
そう言ってアルフェルタはうつむいた。
「あれぇ?とても今まで通りにはできないって顔してるねぇ。どうしてかなぁ?」
「えっ?えっ?そんなこと・・ない・・・ですよ」
「ズバリ!アルフェルタさんっフェイへルのこと好きでしょっ!」
「ふへっ?あのっそのっええと」
「ああっもうっ可愛いなぁっアルフェルタさんは。大丈夫二人ならきっといい結果が出るよ」
「・・・・いい・・結果・・・ですか?」
「そう。だからさ、今はフェイヘルのこと信じてみようよ。」
しばらく・・・いや、かなりの時間がたっただろう。
そして、アルフェルタの口からこんな言葉が紡がれた。
「私は・・・フェイヘルさんが好きです。だから、今は彼を信じて待ってみたいです・・・」