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怪談集  作者: 武内 修司
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横たわる人

あるセールスマンが、住宅街で見かけた空き地。そこには、横たわる人影がありました…

 横たわる人

 あるセールスマンの体験した話です。

 ある日の昼下がり、彼はある住宅街の中を歩いていました。訪問販売をしていました。路地を曲がり少し行くと、一戸建ての建ち並ぶ中に、一カ所ぽっかりと空き地がありました。雑草が疎らに生え、小石が散乱しています。その前を通り過ぎようとして、彼はそれに気づきました。

 空き地のほぼ真ん中に、誰かが横たわっていました。こちらに向けた頭髪の白さや髪型、着ている浴衣や体型等から老婆のようです。顔はよく判りません。曇天で暗いせいでしょうか?こんな空き地で何をしているのかと、老婆を注視したセールスマンは、ある事に気付き思わず固まりました。

 老婆は、浮いている様なのです。下は凸凹のある地面で、小石も散乱しています。しかし老婆は平らな床の上であるかの様に姿勢正しくしているのです。

 思考停止したまま立ち竦むサラリーマンの目の前で、その老婆の姿が揺らぎ始めました。赤黒い炎の様なものが周囲から立ち昇り始め、それに包まれる様に老婆の姿はかき消えました。やがて我に返ったセールスマンは、慌ててその場を後にしました。

 その夜、ベッドに入っても昼間の事が頭の中を巡っており、なかなか寝付けませんでした。仕方なく、気分転換のため彼はオーディオプレーヤを取りにベッドを出ました。彼はラジオ用のHDDレコーダを所有しており、好きな番組を録りだめしてはPCからオーディオプレーヤに落とし、通勤時等に聞いていました。

 イヤホンをはめ再生ボタンを押すと、昼のワイド番組が流れ始めます。2時間といった長い番組には気象情報や交通情報、ニュース等が挟まりますが、そのニュースが聞こえてきました。何気なく聞いているうち、あるニュースに、はっ、となりました。それは一軒家の火災を報じるもので、焼け跡から一つの遺体が発見され、住人の老婆であると警察はみて身元確認をしている、というものでした。昼に通りかかったのが、ちょうどその辺りでした。オーディオプレーヤの表示を見ると、ちょうど一年前の日付でした。一周忌だったのです。

 一つ、彼には判らない事がありました。彼が朝聞いていた時には別の日付の音声ファイルを再生していた筈なのですが、本来ならその続きから聞ける筈なのが、なぜこのファイルが再生されたのでしょうか?次に再生される筈のファイルというわけでもなく、ランダム再生でもなく、ただ再生ボタンを押しただけだったのですが。

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