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怪談集  作者: 武内 修司
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雪の夜

ある街の、十センチほどの積雪があった、ある日の出来事です。若者が、夜遅く帰宅の道を急いでいました。アパートの入口がある横道へ曲がると、和服姿の女性が、雪の積もったままの道を歩いていました…

雪の夜

 ある若者が、夜道を歩いていました。止んだ雪が二十センチ余り降り積もった道を、一人アパートへ急ぎます。やがてアパート入口の面した横道へと曲がりました。そこは人が擦れ違うのが精一杯といった幅しかありませんでした。彼のアパートは格安の家賃でしたが、四十年余りの築年数のほか、この狭い道でしか出入り出来ない事もその理由の一つでした。

 シャクシャクと、雪を踏みしめながら横道に入ると、頼りない街灯の明りの中、人影を見かけました。和服姿の、背が低めの女性です。後ろ姿を見せ、雪道を歩いています。女性は、突き当たりの扉へと向かっていました。それが判ったとたん、若者の表情が強張りました。足早にアパートへと近づいてゆきます。女性は暗がりに入り、もはや見えません。アパート入口のコンクリート階段に足をかけ、若者は念のため、横道の奥へと視線を向けました。予想通り、雪に女性の足跡はありませんでした。思い返してみれば、足音も聞こえていなかった様です。まずい物を見た、とでも言いたげに前を向き直り、階段を上がって行きました。

 アパートの裏手はお寺でした。広い墓地があり、横道の突き当たりの扉は、墓地への入り口の一つでした。アパートの家賃が安いのにはそういった理由もあり、住人達は、多くがこういった経験をしているのでした。


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