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怪談集  作者: 武内 修司
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車中にて・Ⅰ

夏休み、久々に帰省した若者が、駅まで友人の車で送って貰いました。友人は、入れ違いに帰省する、旧知の仲の姉妹を待っていました。トイレの窓から若者が車を見ていると、姉妹が乗っていましたが、妹の方は何処か様子が変で…

 車中にて Ⅰ

 夏休み、何年か振りに山間部の町に帰郷した若者が、帰る時の事です。

 家族や地元の友人達と楽しく過ごした若者を、朝早く近所の幼馴染が駅まで車で送って行く事になりました。今日、入れ違いに夏休みをとった若者と共通の女友達が、帰省してくるのを駅で拾うついでという事でした。ついでかよ、などと冗談交じりに話しながら駅へ到着し、礼を言って上りホームに行きます。本数はそう多くありません。電車を待つうちにもよおし、トイレに行きました。用を足していると、下り電車の到着した音が聞こえました。トイレの窓からは車が見えます。手を洗い、何気なく目をやると、車内に幼馴染と、二人の女性がいるのが見えました。

 女性の一人は助手席で幼馴染と何か話しています。もう一人は後部座席で、俯き加減にじっと座っています。二人とも見覚えがあります。AさんとBさんで、姉妹でした。助手席のが姉のAさん、後部座席のが妹のBさんでした。進学のため上京したAさんのところへ、後から上京したBさんが転がり込んだのでした。二人とも、一時幼馴染に恋をしていました。あの二人、今の電車で着いたのか、と思いながら、暫く様子を窺っていましたが、奇妙な事に気付きました。

 話をしているのはAさんと幼馴染だけで、Bさんは全く会話に加わっていない様です。俯いたまま、ただじっとしています。そうこうするうち、車は走り出しました。若者はトイレを出、やがてやってきた上りの電車に乗り込みました。

 家に戻って翌日、夜遅く若者は実家から電話を受けました。Bさんが亡くなった、という事でした。正確には前々日の深夜に亡くなっていたと言います。

 若者が聞いた所では、帰郷の直前、Bさんは交通事故に遭ったそうです。怪我自体はそれほどでもなかった様ですが、頭を打っており検査入院していたそうです。Aさんは帰郷を取り止めようと思っていたところ、大丈夫だから、というBさんの言葉で予定通り出発したのですが、その後容態が急変し亡くなってしまったそうです。携帯電話も届かない場所を移動中であったため、Aさんがその事を知ったのは実家に着いてからでした。つまり、Bさんがあの車に乗れていた筈は無かった、という事です。この話を聞いて若者は、よほどBさんは帰郷したかった、あるいは幼馴染に会いたかった、そういう事だろうと思いました。


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