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怪談集  作者: 武内 修司
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森の中・ⅡーⅡ

ある女性の失踪後、警察の訪問を受けた男性が、その数ヶ月後失踪しました。森の中に残された女性の遺体や遺留品等から、男性が死体遺棄事件の犯人として指名手配されますが、消息は知れず多くの謎が残されました…。

語り部のない怪談を外から見れば、こうなりますよね、という話です。

 森の中 ⅡーⅡ

 これは、ある男性にまつわる奇怪な話です。彼が行った事、体験した事に関しては不明な点が多く、今となってはそれらは正しく”神のみぞ知る”という所でしょう。ですから、彼の周辺から得られた様々な証言を突き合わせ、具体的な事実を積み上げつつ話を紡いでゆく事にしましょう。

 ある女性の失踪届けが提出された数日後、警察官がある男性、仮に加藤さんとしますが、その住まいを訪ねました。警察官は失踪人について、加藤さんに知っている事を訊ねました。加藤さんは単なる仕事上の知り合いで、プライベートの事など詳細は知らない、と答え、警察官はその時はそれで引き上げたそうです。

 加藤さんには恋人がおり、警察官が訪ねて来る一週間ほど前、彼の車で送ってもらった事があったそうです。そのとき、運転席が土で汚れていたのを恋人は不思議に思ったそうです。神経質という程ではないにしろ、加藤さんが結構な綺麗好きである事を知っていたからでした。

 警察官の訪問を受けて数日後、加藤さんは恋人と雑踏の中を歩いていました。買い物の後食事をする予定でした。笑顔で話していた加藤さんが、何かに気付いたかと見るや瞬く間に血相を変え、恋人のことを放って走り出したそうです。少しして、雑踏の中を右往左往し、やがて諦めた様に戻ってくると、とってつけたような笑顔を浮かべたそうですが、それ以降は気もそぞろ、といった風で会話も途切れがちになってしまったそうです。急に、そのまま帰宅する事になってしまいました。

 その日以降、彼は極力外出を避ける様になりました。恋人とも会うのを避け、同僚との付き合いも極端に悪くなりました。素人目にも、何かに追い詰められているのが判るほどだったと言います。そして…

 加藤さんの車が森の中を走る道路脇の開けた場所で発見されたのは、彼の失踪届けが提出されて間もなくの事でした。森の近くに住む会社員が、夜中、自動車で帰宅途中、森の中から小さな叫び声が聞こえた様だったが、急いでいたのとこんな夜中に森の中に誰かいる筈が無いと気にしなかった、と後に証言しました。その会社員は朝に夜にその道を利用しますが、そこに夜中に車が一、二台停まっていても不思議には思わなかった、と言います。カップルが車中で愛し合うのに利用する事があったからと。しかし、何日も全く動いた気配も無く停まり放しというのはさすがに不審なので、警察に届けたのでした。集団自殺等の可能性もあったので、近付かなかったそうです。

 残された足跡を辿り、車の周辺を捜索するうち、それが発見されました。完全に掘り返された、ビニール袋に包まれた腐敗の進んだ人の遺体と、加藤さんの指紋の付いたスコップ。それだけが、森の中に残されていました。歯の治療歴などから、それが失踪した女性であると断定されました。加藤さんは、まずは死体遺棄の容疑者として行方を捜索されましたが、杳として知れませんでした。

 彼の失踪について、幾つかの謎が残されました。

 なぜここに車を残していったのか?失踪時点で彼は指名手配などされてはいませんでした。乗り捨てる必要性があったとは思われません。また、遺体と彼との関連を示す様なまねを、なぜしたのか?遺体を掘り起こす必要性が判りません。何か確認する必要でもあったのでしょうか?大体、車を置いてどうやってそこを離れたのでしょうか?そこはバス路線からも外れており、タクシーもまず捉まらない様な所です。徒歩ないし自転車を用意しておき電車を利用した、という事も考えられますが、車が利用できる以上その意図が不明です。

 いずれにせよ、謎は加藤さんに訊ねてみるしか解明する術は無いのでしょうが、果たしてその時は来るのでしょうか?

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