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怪談集  作者: 武内 修司
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鏡・ⅡーⅠ

ある鏡にまつわる噂に惹かれ、一組のカップルと、男性の友人がある廃団地に向かいました。そこで発見した鏡に映し出されたのは…

鏡・Ⅱの後日談的なものです。

 鏡 ⅡーⅠ

 今から思えば、あんな物に関わるべきじゃあなかったんだよ。って、ネット上でアレを見つけたのは俺だけどさ。もし、あのブログを見つけなかったら、あの二人は、あんな事になってなかったのかな?

 俺のこれから話す事を、みんなどう受け取るかな?ただの偶然?俺の見間違い?それとも…と、まずは自己紹介ね。俺の名は佐藤。一応仮名、という事で。それと、他に登場人物が二人。阿部と嶋田、としておいて。二人は恋人同士。ハッキリ言ってバカップル。阿部は俺の、高校からの友達。嶋田は大学で出来た彼女、っていう事。俺と阿部は別の大学に進んだけれど、しょっちゅう連絡を取り合ってた。だから彼女が出来たっていうのも、つきあい始めてすぐに知ってたんだ。こっちは彼女いない歴=年齢だっていうのに、うまくやりやがったなって、からかったっけ。何度か俺と、安部のカップルで遊んだけど、本当に楽しそうで、胸焼けしそうなほど甘ったるくてさ。ほんとは、少し羨ましかった。嫉妬してたんだ。安部にじゃなくて、彼女に。別に、そっちのけは無いけどね。

 彼女は、ちょっと変わってて、心霊とか、そういうのが好きだった。阿部もそっちの方は好物だったみたいで(高校時代はそんな素振りは見せなかったっけ)、どうやらそれで気が合ったのが最初らしい。俺はといえば、怖がりっていう訳じゃないけど、あまり興味が無かった。それでも二人と付き合うのに、そういう話をネットで探すようになってた。そして、あのブログに当ったんだ。

 それは、ある鏡にまつわる噂に関して、警鐘を鳴らすような内容だった。噂というのは、覗き込んだ人の身近で、一番最近に亡くなる人を教えてくれる、っていうものだった。ブログのユーザーは、その噂が本当で、自分の恋人の死を予言した、と書いてた。噂が本当かどうかを、大切な人の死をもって知る絶望感は、耐え難いものがあったと。そんな思いをしたくなければ、安易に近づくべきじゃない、と警告して締め括ってた。でも、俺はネタぐらいにしか思ってなかったんだ。だから、余計噂に興味を惹かれて、調べた。ある廃団地のある部屋に置かれた、一枚の手鏡について。

 件のバカップルはノリノリだった。あのブログは、ひょっとしたら釣りだったんじゃないかって思ってた俺は、内心がっかりされたらどうしようか、ヒヤヒヤしてた。ブログには、まぁ、当然その場所は書かれてなかったけれど、結構簡単に見付かった。廃団地のその部屋だけが、扉が開いてたんだ。バカップルは懐中電灯片手に先を争う様に入ってった。荒れ果てた室内の、なぜか片隅だけまだまともで、机が一つ、置いてあった。その上には一つ、手鏡が置いてあった。ワイワイしながら二人はそれを覗き込んだけど、すぐに落胆の声を上げた。どうやら普通の鏡、だったらしいんだ。ああ、やっちゃったなぁ、って思ったね。釣りっぽいのに乗っちゃって、馬鹿だったなぁ、って。案外あのブログのユーザーの仕込みなんじゃ、って思ったんだけど。部屋を出て行く二人に代って、何気なくあの手鏡を覗き込んだんだ。仰向けにしてあったんで、光を当てたら…あの二人が、映ってたんだ。いやいや、そんな筈ないよな?二人はもう部屋を出かかってるんだし。俺は急に恐ろしくなって、二人を追っかけた。エンジンを掛けてた阿部の車の後部座席に飛び乗ったんだ。挙動不審だったんだろう、どうかしたのか訊かれたけど、適当に誤魔化した。

 途中、片側が崖の道があった。結構きついカーブになってて。俺は、見たものについて、一人で考え込んでた。ただの見間違い?いやでも、かなりハッキリ見えた。なら、幻覚?いやいや、俺クスリとかやってないし。じゃあ、何だ?まさか、あのブログの警告、本物だったのか?そんな考えがぐるぐる渦を巻いてた。と、嶋田が叫んだ。顔を上げれば、ガードレールが目前に迫ってた。急ハンドルでも、急ブレーキでも、もうどうしようもなかったんだ。車は、ガードレールを突き破った。崖下に落ちる直前、俺は車外に飛び出して道路に転がった。あの時、他に何が出来ただろう?俺は体育大学に進んで、陸上をやってたから脱出できたんだろうか。とにかく、俺は警察に連絡した。どうしてこうなったのか、朧気に聞こえていた二人の会話を思い出すと、どうやら嶋田がスマホを落としたのに阿部が気を取られたかららしい。二人は、フロントグラスを突き破った木の枝に圧迫されて死んでたらしい。警察はその状態を見せてはくれなかったし、見る気もなかったし。

 あれから少し経って、俺は思うんだ。あのブログは、やっぱり嘘だったんだって。いや、不充分だった、って事かな?あれが人の死を予告するものだって書いてたけど、別の可能性もあるよな?アレは、人の死を呼び込む呪いの道具だっていう。

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