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怪談集  作者: 武内 修司
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鏡・Ⅱ

ある廃アパートにあるという鏡の噂がありました。それは死を予言する、というものでした。その噂に興味を持ったカップルが、その鏡を探しに廃アパートへ向かいました…

 鏡 Ⅱ

 噂がありました。

 ある町の、廃墟と化した団地のとある部屋には一枚の手鏡が置いてあって、夜中、その鏡を覗き込んだ者はその人に近しい、最近に亡くなる人の顔をそこに見るという噂です。それを耳にした、怪異談の類が好きな一組のカップルが興味を持ち、ネットなどで色々と調べここかと見当をつけました。彼らは早速出かけました。夜中辿り着いた団地の一階のある部屋に、それはありました。その部屋だけ、扉の鍵は開いていました。

 深夜。懐中電灯が照らし出す室内は荒れ放題、天井も床も無く、ごみや廃材が散乱しています。しかしその一角、木製の机がある周辺だけは妙に整頓されていました。それと、その一角だけ何か空気が違います。黒い靄の様な物が蟠るのが判る様です。懐中電灯の光の中に浮かび上がる手鏡は、伏せられています。先にそれを手にしたのは男性でした。覗き込むと、当然ながら自分が映っています。何だ、普通の鏡だと、少々興ざめ気味に彼女に渡しました。すると、楽しげだった彼女の表情が、鏡を覗き込んだとたん一変しました。その変貌ぶりに彼がどうしたのか尋ねると、雷にでも打たれたかの様に痙攣した彼女の手から鏡の取っ手が滑り落ち、床の穴を通り基礎のコンクリートへ激突、鏡は砕け散りました。

 急に帰ろうと急き立てだした彼女に押され、二人は車に乗り込み、家路につきました。翌日から、彼女からのメールや電話が増えました。恋人同士の甘い内容のものではなく、彼の体を気遣う様な物ばかりです。おかしいなとは思いながらも、結構彼は幸福だったのですが…

 あの夜から数日後、彼女は彼の訃報を母親から聞かされました。前日の夜遅く帰路に着いた彼は、酒酔い運転の車に撥ねられたそうです。

 話を聞きながら、彼女はやっぱりそうなのか、と思いました。あの夜、あの鏡に映ったのは、彼の顔だったのです。もしや本物かと驚いていたところへ声を掛けられ、鏡を落とし割ってしまったのですが。どうやら本物だった様です。

 その後、彼女は再びあの鏡の噂を耳にしました。あの割れた筈の鏡の代わりに、誰かが悪戯半分に持ち込んだのでしょうか?あるいはあの鏡が再生したとでも言うのでしょうか?彼女には、後者の様な気がしてならないのです。

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