そして…
いや、まだ負けたわけではない。
次で取り返そう。
みなみ「もう無駄だと思うな〜」
そう言って、みなみはカードを出した。
いや、まだだ。まだ負けと決まったわけでは…
俺はジョーカーを出す。
みなみからしてみれば、1は出しにくいはず。みなみもジョーカーを出して来るはずだ。
そう思って俺はジョーカーを出す。
みなみ「だから〜それ、ジョーカーでしょ?もうわかってるんだって〜」
真人「えっ‼︎わわっ、い、今のなし‼︎」
慌ててジョーカーを手札に戻す。
みなみ「まぁ良いけどね〜」
みなみはカードを変えなかった。
みなみは何を出したんだ?今の言葉が誘導なら、みなみは3を出しているはず。
それなら俺はもう一度ジョーカーを出せば良いのだが、この俺の考えを読み取って1を出している可能性も…
考えれば考えるだけ分からなくなる。
いや、待てよ…
俺が初めにジョーカーを出すとわかっていたならなぜそれを邪魔したんだ?そうか、ジョーカー出されたら困るんだ。つまり、みなみは1を出していない。とすると、みなみもジョーカーか?それとも3か?そうだ、ここはジョーカーだ。それしかない。
俺はジョーカーをもう一度出した。
みなみ「はい。じゃあいくよ〜!せーのっ!」
結局、俺はまた負けてしまった。
みなみは1を出していたのだ。
その後、俺は2を出して負けた。
みなみ「やった〜〜みなみの勝ちだ〜!」
みなみは精一杯手を上にあげて喜んだ。
だが次の瞬間、みなみは全くの別人に変わった。
みなみ「なんてね。あ〜疲れた〜」
真人「えっ…?」
さっきまでの子供っぽい仕草はどこかへ消え去り、可愛げのない座り方になった。
真人「どうしたの…?」
負けた悔しさよりも、みなみへの違和感が勝ってしまう。
みなみ「あのねぇ、真人。あんた子供相手だと思って油断したんじゃない?あんたの思考が手に取るように分かったわ。」
真人「えっ…?」
さっきまでと同じ声。だけどさっきとはまるで違う喋り方。この子…本当に何者なんだ…?
みなみ「まず一回目、私がジョーカーを出せないと思って3を出した。2回目、私が子供みたいな思考で動いていると勘違いしてジョーカーを出した。そして3回目、私の狙い通り、1を出した。最後のは論外ね。完全に私に遊ばれてたわよ。」
真人「どういう事だ?」
みなみ「話は簡単よ。私、彩葉だから。」
真人「……は?」
意味が全く分からない。
みなみ「私はこのみなみっていう女の子じゃないの。」
真人「は…?何言っているんだ⁉︎意味がわからないぞ!」
みなみ「あーもう面倒くさいなぁ!このみなみっていう子の体と私の体を入れ替えたのよ。」
うそ……だろ……?
真人「そんな事…できるのか…?」
みなみ「できるわよ。フリーで奴隷にして、体入れ替えてって言ったら簡単に入れ替われるわ。」
真人「そんな事…」
みなみ「馬鹿げてる?でも、これが現実よ。」
今まで俺は勘違いしていた。フリーの「なんでも」と言っても、そこまでなんでもは出来ないと思っていた。だが、そんな非科学的な命令まで出来たとは…
みなみ「じゃあ命令だけど…」
真人「あぁ、」
みなみ「一生中谷彩葉の言う事を聞き、命令に従って行動しなさい。」
真人「はい…」
これで、この長い勝負は終わった。
この後、俺の奴隷達はみんな彩葉に持って行かれた。みなみと彩葉も元に戻ったようだ。
そして俺は今、沢山の元奴隷達に囲まれて、ある大きなマンションの屋上に来ている。
彩葉「はい、じゃあそこに立って。」
大きなフェンスを越え、もう一歩進めば確実に落ちるところまで来ている。
彩葉「じゃあみんなに聞くけど、真人を殺したい人はどれくらいいるの?」
なんだか物騒な事を聞かれている。
どうせみんな俺を殺したいに決まっている。当然だ。俺はそれだけひどい事をしたのだから。
だが、誰1人として俺を殺したい人はいなかった。
男性1「特に何もされてないし、良いんじゃない?」
女性1「そうだね。何されるか分からなくてちょっと怖かったけど、まだ子供だしね。」
みんな優しかった。
彩葉「そっかぁ、分かった!」
みんなが俺に近づいてくる。
真人「こんな俺を…許してくれるのか?」
男性2「今回だけだぞ!次こんな事したら許さないからなっ!」
彩葉「だってさ。みんな優しくて良かったね〜」
真人「うっうぅぅ…ごめんなさぃ…ごめんなさぃ…」
俺は、初めて心の底から泣いた。今までの自分が馬鹿だった。みんな俺より出来損ないのくせにってずっと馬鹿にしていた。
だけど今は違う。こんなにも優しくて暖かい人達がこんなに近くにいたんだ。
まだやり直せる。これから俺は新しく生まれ変わるんだ。
彩葉「いや、そんなに世の中甘くないわ。みんなが良いって言っても私は許さないから。って事で飛び降りなさい。」
真人「へっ…?」
気づけば俺は、そこから落ちていた。
彩葉「まぁ、悪い事をしたらこうなるって事で。みんなも気をつけてね〜」
みんなの泣く声が聞こえる気がする。
それだけで、十分幸せだった。
完




