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齢18で城を手に入れたら  作者: ロカク
一回生編 ~夏~
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休めない夏休み ~day2・前編~

 プールに遊びに行ってから一週間弱、その間も鵜久森姉妹は遊びに来ていたわけだが、なんだか後ろめたさもあって雹花の顔が見られなかった。以前よりなついてきている気がするが、素直に喜べない自分がいた。そんな中、俺たちも夏休みに入って本格的な夏が始まろうとしていた……


「おっはよー久我くん!」


「あぁ、おはよう」


「もぅ、まだ引きずってるの? いい加減立ち直りなよ」


 そうは言っても簡単なことじゃない。女々しいと思われるかもしれないが、俺にとってはそれだけ重要なことだったのだ。元々あの姉妹を軽々しく受け入れるべきではなかったんじゃないかと今さら後悔の念に駆られる。


「今日は買い物行って宿題見てあげるんでしょ? 挽回のチャンスはあると思うよ」


 確かにほぼ一日中一緒に居るわけだし、それで気が収まるかは分からないが気持ちだけでも示してみよう。


「そうだな、ありがとう」


「どういたしまして」


 鵜久森姉妹が来るまで各々楽にして待っていた。今日の集合は10時の予定だ。あの娘たちは親にどう説明しているのだろうか? ありのままに言ってしまうと俺たちと遊ぶのはやめとけと止められることだろう。上手くやっているならそれに越したことはないんだが……


「おっはよーございまーす!」


 10時ちょい過ぎに姉妹はやって来た。特に時間きっかりにというわけではないのでこれくらいは想定内だ。この姉妹は玄関から入ると土筆は染谷さんの部屋へ、雹花はリビングに来るようになっている。良くも悪くもそうなっているのだ。


「今日は買い物に行くわけだが、何か欲しいものあるか?」


「お小遣い……もらった」


「そうか」


 近頃雹花の言葉足らずにも慣れ、その先の言葉が読めるようになってきた。これは要するに「自分で買える」と言いたいのだ。ソファーに座る俺の横に座り、何をするでもなく一緒にテレビを見る。随時無表情なため、どんな感情にあるのかは検討がつけづらい。


「そんじゃ行くかー」


「「おー!」」


 別部屋の二人が元気に返事し、いつものスーパーとは桁違いの規模を誇るショッピングモールへ向かった。


「わー! これ可愛いですよ!」


「あんまりウロウロしてっと置いてくぞー」


「久我くん分かってないなぁ、女の子は時間かかるんだから気長に待ってあげてもいいじゃないの!」


「俺そこの椅子に座ってるんで」


「……私も」


「そういうことじゃないんだけどなぁ」


 ではどうすれば正解なのか、俺には分からない。ちょっと進む毎にこの調子で一向に帰る予定が定まらない。そのわりには買う様子もない。そろそろ携帯をいじるのも飽きてきたなぁ……


「一服してくる」


「多分この辺にいるから、戻ってきてね!」


 一服と言っても煙草を吸う訳じゃない。夏休みと土曜日ということが相まって人がかなり多い。その人混みから解放されるべく一旦外に出たいというわけだ。何も言わずとも雹花もついてくる。


「さっさと帰りてぇんだけどなぁ……ん? どうした?」


 急に雹花が立ち止まったのは本屋の前だった。そういえば新聞代わりに買っているテレビ情報誌の来月号がそろそろ出てる頃だったか。


「ちょっと……見ても……いい?」


「もちろんだ」


 品定めする雹花に付いていきながら、目を離さないようにして目的のものを手に取った。


「何か買うものは見つかったか?」


「……これ」


 手に持っていたのは色ペン数本とメッセージカード、学校の友達にでもあげるのか?たいした額にはならなさそうだな。それより俺が買うことを悟られないよう「欲しいもの」ではなく「買うもの」としたところがポイントだ。


「それだけでいいのか?」


「……うん」


「じゃあ、出しな」


「あ……」


「いやいや、お金はいいから」


「でも……」


 財布に手を掛けた雹花を制し、手に持っているものをレジに出すよう促した。ここは一つのターニングポイント、これからの関係を良好に保つためにも払わせてくださいお願いします!


「お会計○○○円になります!」


「んー、じゃあこれで」


「1000円お預かりします!……○○○円のお返しになります!ありがとうございました!」


 よし!なんだか少し気分は楽になった気がする。土筆ならあっさり払わせてくれるだろうが、雹花の場合は気にしていないことを願う。そんなこんなで俺たちはやっと外に出れた。


「だはぁー、なんつーか人の多さに疲れたなぁ」


「ナル……やっぱり……」


 ナル? もしかして俺のことか? 初めて名前を呼んでくれたことになんとなくキュンとしてしまった。しかし、やっぱり気にしてたかぁ……説得してみるか。


「今日のことはこの前のプールの借りを返しただけだから、気にすんなよ」


「借り……?」


「あぁ、俺の監督不行き届きで危ない目に遭ったのに生きててくれたっていう借りがな。まだ返しきったとは思ってないが、その一部ってことで」


 あの時この娘には意識がなかったわけだから言わなければ分からないことなのだが、それではダメな気がした。あの日背負った十字架を小さくしていくことでしか俺は裁かれない。その一歩を踏み出したまでなのだから。


「……気にすんなっ」


「お? なんだ急に!?」


 俺の脇腹程までしかない身長で雹花は抱きついてきた。多少なりとも気を使ってのことだろうが……また少し報われた気がした。そろそろ染谷さんたちのところに戻ろうとしたとき、その事件は起こった。


「避難警報発令、避難警報発令、一階南喫煙所より爆発、直ちに建物外へ避難してください」


「やばいじゃねーの」


 俺たちが外に出てきたのは北側で、一番安全だと思われる。あまり進んでいなかったので入口から出たのだ。あのペースなら安心だが、もしペースが上がっていたら……嫌な予感がする。


「様子を見に行こうと思うんだが……聞くまでもないか」


 ここで待ってろと言っても聞かなそうな顔をしていたし、待たせておくのも不安なので雹花を連れて行くことにした。


「しっかし、この流れを逆走するのはなぁ」


「……こっち」


 そうか! 大型ショッピングセンターでは喫煙所とお手洗いが近くにあることが多い。さらに、そのセットは出口に近い可能性が高く、もし爆発で南側の出入口が使いにくい状況にあるとすれば外から回り込んだ方が効率がいい。俺たちはある理論にのっとって西側出入口の波をかわし、北側出入口にたどり着いた。


「行くか! っと、煙いな。口と鼻覆っときな」


 言う前に事前に持ってきていたらしいハンカチで口元を覆っていた雹花の頷きで改めて意思を確認し、俺たちは煙立ち上る建物内へと突入するのだった……

どうもおはこんばんちは!ロカクです!

今回は連日投稿できなかったなぁ……申し訳ないです!

しかし、この一日でネタを溜め込めたのでもう余裕です……よ?

それはさておき色々考えた結果無理に5000字詰め込むのではなく、3000字前後でコツコツ書いていこうかなと思います!

それ以前に5000字書こうとするとモチベーションがキープ出来ないことが判明しました。(集中力がないんですなwww)

ってな感じで今回もご覧いただきありがとうございました!

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