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齢18で城を手に入れたら  作者: ロカク
一回生編 ~春~
2/13

半同棲者で料理番

 日曜、起床時刻は午前11時。また来ると言っていた染谷さんだったが昨日は来なかった。ホラーやオカルトが得意だと言ってはいたものの、さすがに幽霊屋敷にまた行こうとは思わなかったんだろう。当然といえば当然だが肩透かしを食らったみたいだ。


「今日もこれといってすることはないな」


 起きはしたものの起き上がってはいない。携帯にメールや着信が……あるわけがない。また我ながら中途半端な時間に起きたもんだ、もう一眠り……はっ! 今インターホンが鳴ったような気がするんだが、うちを知っている人といえば数えるほどもいない。仕送りの品物かもしれないが……


「……はい」


「一回で出てよ! こんな時間まで寝てたら腐っちゃうよ!」


 うーむ、悪い予感の方が当たってしまったらしい。もう手遅れかもしれないが、一応居留守を使ってみよう。


「ゲンザイルスニシテオリマス」


「さっき普通に出たじゃん!」


「はいはい、何のようですか」


「はっはっは、遂に出来たのだよ!」


 誰かは分かっていたので放置するわけにもいかず、迎えに出た玄関で手渡された紙袋にはタッパーがいくらか入ってるみたいだ。重さは……そこそこだな。


「さーて、紙皿と割り箸持ってきたから……飲み物何かある?」


「野菜ジュースなら」


「うーん、まぁいいかな! それもらえる?」


 先日言ってた通り料理を作ってきてくれたんだろう。俺が野菜ジュースを出している間に染谷さんはテーブルにタッパーを並べている。それより気になるのは染谷さんのほぼ全指に巻かれている絆創膏だが……


「その手、どうしたんだ?」


「あー、あれだよ! カッターで切っちゃってさー」


「そう……か」


 どんな使い方したらそんなことになるんだ。血祭りになったことだろうと思いながらも察しはついた。


「さぁ! 食べたまえ!」


 皿に取り分けられた品物はコールスローと唐揚げ、炒飯とジャンルが絞られていないが、作る上では王道なものばかりだ。俺は一つの唐揚げに手をつけた。


「どうかな?」


「ま……」


「ま?」


「まぁまぁだな」


「よかったぁ」


 正直味付けとしての味はしなかった。だが、素材の味を生かしているという意味では高評価ということにしておこう。なにより最後の安心したような笑顔だけでどんなに不味かろうと許される。女の武器をうまく使ってきてるな。


「他のも食べてみて!」


 あとの品も別段美味しい訳じゃない。寧ろ何か足りないぐらいではあったが、やはり咎められなかった。今まで料理を作ってもらうなんて親か、飲食店で見知らぬ誰かにといったことしかなかった。故に不足していた要素も新鮮さで補われたのかもしれない。


「さて、食べたね? じゃあ一つ頼み事聞いてくれる?」


「え!?」


 確かにもう食べてしまったわけだが先に言っといてくれないだろうか? 普通に頼まれても可能なことなら大抵はなんとかする。貸しを作っておかなければ通らないような内容なんだろうか?


「ふっふっふ、一部屋貸してもらえないかな?」


「ダメだ」


「なんで!?」


「自分家があるだろ」


「うちじゃダメなんだよー防音じゃないし」


 防音じゃないとできないこと? 楽器を使うとか大声で歌うとか、はたまた日曜大工でもしようとしてしているのか? うちも防音ではないんだが……


「お願い! ねっ?これからもご飯作ってあげるから!」


 作ってもらわなくても食べるものはあるが、カップ麺生活だと短命にしてこの世を去ることになりそうなので一応延命のためにもありがたいことではある。特に別の部屋を使う予定もないし、なにより独りでこの家は……


「それなら……いい……かな」


「ホント!? じゃあ明日持ってくるからね!」


 言葉足らずなのかなんなのかとにかくなぜ部屋を貸してほしいのかは分からなかった。まぁ明日になれば分かるだろう。この日は料理を持ってきただけらしく一通り話して片付けたら2時頃には帰っていった。果たして明日何が来るのやら……


 翌日月曜日、今日から授業とはいえ月曜は1、3限の上にレクリエーションと学校が終わって2時には家に帰ってきた。とりあえずは一人だが……家についてくつろいでいるとインターホンが鳴った。奴だ。


「はい……はい?」


「お待たせ! ちょっと準備に手間取っちゃってねー」


 確かに予想通りギターっぽいものを背負ってはいるが、目を見張ったのはその手に持った段ボール箱だ。知識がないので種類は分からないが、きれいな毛並みの子犬がそこには居た。


「はい、じゃあ持ってて! どこの部屋がいいかな~」


「それより先にこの箱の中身ことを解決しとかないか?」


「先に部屋だよ! ちょっと待ってねー」


 ひたすらうろうろして部屋を見定めている染谷さんを見ながら段ボール箱に入った犬を持ってただ立ち尽くす俺。ホントにこの人はどこまで勝手なんだか……


「オッケ! じゃあここにするね!」


 そう言って染谷さんが入ったのは階段付近の部屋。リビングに隣接しているわけではないが、様子を伺おうと思えばすぐできるぐらいの距離だ。彼女はその部屋に荷物を置いてすぐに出てきた。


「さって、突然だけどその子預かってもらえないかな?」


「断る」


「なんでよー、たった犬一匹だよ?」


 いやいや、一匹とかそういう問題じゃないから! 動物とか飼えばそりゃあ癒しにはなるだろうけど、それ以前に荷が重いだろ! そう簡単に飼うとも言えないわけで……


「じゃあどうすればいいのよー」


「自分家で飼うか、拾ってきたんならもとの場所に戻せばいいんじゃねーの?」


「それができないから相談してるんだよ! まったく、非人道的だなぁ……あ、じゃあ庭だけ貸してよ! 世話はもちろん私がするからさ!」


 それなら問題ない……か? にしてもかなり不利益な気がする上になんかうまくのせられてる感が否めない。


「分かったよ」


「ありがとー! これで心置きなく過ごせるね!」


 俺は勝手に心置きなく過ごすんでご心配なく! なんて言わなくても察してもらいたい。こうして一匹増えたわけだがあまり手は出すまい。


「そういやぁ一部屋借りるっていうのはギターをするためだったのか?」


「ご名答! ちょっと事情があってギター買ったもんで、でも騒音問題とかでこの4月にお隣さんといざこざ起こしたくないから自由な場を求めてたって訳よ」


 ギターを買う事情ってなんだよ、それはもう音楽番組のPVとか見てたら「簡単そうに弾いてるけど、私にもできんじゃね?」的な感じで買うしか考えられんだろ。


「なんか楽器できるんだったら仲間に入れてあげなくもないよ?」


 仲間ったって一人しかいねーだろ! 楽器なんか……待てよ、楽器に近いもんなら俺もできなくないな。


「ボイパならできなくもないけど」


「ボイパ!? それって一人でドラムとかの音出すやつだよね!? いいね! 仲間に入れてあげよう!」


「そりゃどーも」


 勝手にやってもらって結構なんですけど……なんにせよ退屈からは脱却できそうでよかったよかった……のか?


「そうだ! 一応連絡先交換しとこっか、ワンコの事もあるし」


 こうして連絡先を交換した染谷さんは帰り際に今日は用があるから晩は来れないけど昼の残りで何とかするよう言い残した。この日から同級生との半同棲生活が始まった。


どうも!ロカクです!

ちょい修正して再投稿です!

ギリギリ週2でいけてますね!しかし、もっとペースアップせねばなりません。週3・5000字でいけるといいんですけどね!

では、また次回!

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