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6(悪魔視点)

悪魔視点です。少し過去の物語。

 人間が言うところの神やら悪魔やら天使やら妖精やらと言われる生命体は「エーテル」と呼ばれる「生命力」を吸収する生き物だ。それはこの世界の森羅万象全てに存在し、この世界が出来上がった頃から存在する絶対的な理。人間が生命活動を維持するために食物を摂取して生きているように、俺たちは「エーテル」を摂取する。

 基本どんな物からでも「エーテル」は得られるが、何から得るかそれは個体毎に異なる。人間風に言うならば、薄味が好きか濃い味が好きか、焼いたものが好きか生ものが好きか、そんな所だろう。

 俺はそんな種としてそれなりに強い力を持って生まれ、特に不自由もなく存在してきた。


 あの日、俺は時間つぶしに人間界に降り立った。

 部下達から、「貴方がいると進む話がこれっぽっちも進まないんでちょっと何処かに行ってて下さい本当にお願いします!!」と強制的に叩き出された訳では決してない。


 ふと、暇つぶしに人間と契約でもしてみるかと思った。

 人間の魂は質の良いエーテルを宿しているが、何故か無理やり取り出した魂のエーテルは不味い。美味いエーテルを得るには、人間の同意と契約が必要だった。

 契約して人間の願いを叶える、そしてその代価に俺たちは「魂」を貰い受ける。この面倒な手順を終えねば、質の良い魂は手に入らないのだ。そして適当に選んだ人間と契約をしたからと言って、上質な魂が手に入るわけでもない。そこは自分で見極めなければいけない。


 そんな回りくどい理由があってか、人間と契約する者は少なく、よっぽどの変わり者しかいない。中には器ごとエーテルを食すゲテモノ食いもいるが、俺にそんな嗜好はない。

 そして俺のような力の強い個体は何かを摂取したり狩る必要などはない。そこに己自身が存在している事と同じように、エーテルを自然と取り込んでいるからだ。故に俺自身にとってエーテルをわざわざ狩るという行為は本当にただの暇つぶしだった。


 立ち並ぶ高層建築物の一際高い建物の屋上に立ち、さてどんな人間を選ぶか、瞳を閉じ人間達のエーテルを探る網を張る。人間の魂はエーテルの量や色や形と個体毎に様々だ。

 ふ、と、気になる魂が複数網にかかる。

「これは」

 それは2つあり、2つとも淡い月の輝きの様な清廉な光を放つ魂たちだった。こんな魂が2つも、そしてあまり汚れもせずに同じ場所に存在している事に少し驚いた。よく今まで餌にもならず、しかも2つも存在していたものだ。

それとも、人間の魂を好むのは大抵は闇に生きる眷属であり、この魂達はいささか眩しすぎたのであろうか。


 興味を惹かれ、その魂を持つ人間達を見に行く事にする。瞬時に移動したそこは真っ白な室内で、目的の2人はすぐに目に入った。彼らには、見せようとしなければ基本俺の姿は見えないので、その場でゆっくりと2人を観察する。


 魂の光そのままの、穏やかそうな男女だった。女はベッドに腰掛けており楽しそうに男と会話し、男は照れた表情で女の大きく膨らんだ腹をなでる。

人間の事なら知識として知っている。おそらくは彼らは夫婦であり、女の腹には男の子供が宿っているのであろう。意識を集中すれば、確かに女の腹には小さな、だがしっかりとした魂が見えた。

 この2つの魂を受け継ぐ子であれば、よっぽど間違わない限り極上のエーテルを持つ魂の人間になるであろう。


「面白い」


 時間はいくらでもある。ならばこの新たに誕生してくるであろう魂を、将来この手で刈り取るのも一興。

 その魂は生まれる前からすでに俺のもの。

 汚れずに育てよと、そっとその小さな灯火に自分の跡を残す。


 淡くその魂は輝いた。

 それが全ての始まりだった。

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