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本編8.5

主人公視点から見た8話です。

残酷描写を含みます。暗いです。

本編読了後にお読みください。

 どうしてこうなったのか、私には判らない。


 私が就職をして、初めてのお給料を使って家族旅行を計画し、父が運転してくれた車で家に帰る途中だった。カーブの続く山道に差しかかり、私は後部座席に座り父と母と他愛もない会話をしていたと思う。


 それは本当に突然だった。

 車のボンネットに降って来た『何か』の振動。そして急ブレーキの音と同時に訪れた衝撃、爆音。意識が持っていかれる。


・・・気が付いたときには体中の痛みに呻き、道路に投げ出されている自分を把握した。


 うつ伏せに倒れた身体は投げ出された衝撃からか全く力が入らず、激しい痛みが絶え間なく恐ってくる。耳鳴りも酷く、キーンとした音以外は何も聞こえない。焦げ臭い香りと金臭い香り、私の身体は今どうなっているのだろう。両親は。何が起こったのか。混乱する思考と痛みの中、何とか両肘に力を入れて顔を上げた。

 轟々と燃える車の炎で照らす夕景は、理解し難い・・・理解できないものだった。



----オトウサンガタベラレテイル。オカアサンガナニカニツカマレテイル。



 まるで枯れ木のように簡単に折られて、千切られて、中身が飛び出して、何かの大きな口に食べられている。オトウサン?


「・・・・・・ぇうっ・・・」

 そのまま私は胃の中から込上げるものを吐いた。視界は涙で歪み、けれど視線はただその風景を映しこむ。父が大きな口に全て消えて、母もパクリと頭から食べられた。

 何でしょうこれは。嘘、そうこれは嘘に違いない。こんな現実いらない。


『見ては駄目だ』

 そう、男の人の声が聞こえた気がした。バサリと何かが私にかけられ、視界が黒一色になる。そこで私の意識は途絶えた。



 こんな現実は、いらない。




* * * * * * * * * * * *




「一人ぼっちになってしまいましたね・・・」

 ぼんやりと、広くなってしまった家を見渡す。


 気が付いたら病院で、打撲や擦り傷、軽い火傷を負ってベッドに寝かされていた。車は何か(恐らく動物)を避けようとして山側の壁に衝突したらしい。車は炎上、両親は帰らぬ人となった。

 訳がわからずなかなか現実を受け入れられなかった。退院しても何も考えられず、家に篭り、心配する親族や友人を避け、仕事にも行けず辞めた。

 ワタシが旅行を計画しなければ良かったのです。まさかワタシだけ生き残ってしまうなんて。


「お父さん、お母さん・・・ごめんなさい・・・会いたい・・・寂しい・・・」

 用意した3客のティーカップのうち一つに、ぽとりとワタシの涙が落ちた。

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