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24 あなた内通者?

 夜の旧校舎は、妙に古く、不気味にすら感じた。

 修復は済んだはずなのに、壁は古く崩れかけている所もあり、風が吹くたびに埃が舞う。


(来たはいいものの、どこに行けってんだ?)


 入口からそっと侵入し、周囲を見渡す。

 人の気配はない。

 ……魔法のある世界なら、幽霊とかがいてもおかしくない訳だが。

 

 ぞぉ~っとしていると、小さな光球がふわりと飛んできた。

 何かと思ったが、俺を案内するかのように浮遊するのを見て、意図は読めた。


(……ついて来いってか)


 見た感じ害は無さそうだ。

 周辺の警戒はしつつも、ひとまずついていくことにする。


『お前の正体を知っている』


 薄暗い校舎内を歩きながら、あの紙きれの言葉を思い出した。


(……一体誰が、どこまで知っている?)


 わざわざこんな場所に呼び出すってことは、相手にとっても他人に見られることがデメリットになる可能性が高い。

 俺の為に人目を避けた、なんてことも考えづらいし。


(いざって時はすぐに撤退できるようにしておかねえと……)


 光が塔へ続く階段を上がっていく。

 やや息を切らしながらも追いつくと、占星術にでも使う教室だったのだろうか、望遠鏡やら星図やらが設置されている階層に辿り着いた。


 光は、中央の円卓の真上に留まると、積み上げられ埃被った本に吸い込まれるように溶けて消えてしまった。


(――本? 歴史書……じゃないか。聖書?)


 手に取ってぱらぱらとめくってみる。

 挿絵はなんとなく理解できそうだが、見たことのない言語で書かれていて読めない。

 だいぶ古い本のようだ。


 これが俺に関係あるのか?


 だが。

 次のページに進もうとしたその瞬間――




 ――バシュッ。


 乾いた破裂音が床下から突き上げた。

 直後、空気がわずかにねじれ、視界の端に赤い灯がぽうっとともる。


(……何だ?)


 足下を見やると、四隅を囲むように金属の杭が床へ深く食い込み、結界めいて輝いていた。

 赤い光が脈動するたび、嫌な感覚が走る。


 反射的に杖を構え、魔力へ意識を向けた。

 しかし――


(……魔力の流れが、感じられない……!)


 背筋を氷で撫でられたような感覚。

 その瞬間、首筋に生温い殺気が走った。


(後ろ――何かがいる!)


 振り向くより先に、身体が勝手に横へ跳ねた。

 直後、俺のいた空間を銀色の刃が真横に切り裂いた。


「ほぉ。避けられないかと思ったが、生意気なわざなしだな」


 暗がりから歩み出たのは、宝石のように美しい緑色を瞳に宿した少年。


 ――マルクス。


「……お前が呼び出したのか?」


「他に誰がいる。お前の正体を知っている、と言えば来ると思った。

 案の定だな、スナオ・マヤ」


 マルクスは笑っていた。

 けれどその笑みは、普段の彼の冷笑とは違った。

 影があり、どこか焦燥に満ちていた。


「なんのつもりだ。こんな結界まで張って」


「……分からないか? ここは魔法が一切使えない。

 お前の“インチキ”も、封じられる」


 次の瞬間、閃いた金属光。

 彼の手には細身の刃物。刃先には僅かに黒い液体が滴っている。


(毒か? 何にせよ、触れたら碌な目に遭わなそうだ)


「僕はな、スナオ。お前みたいな危険分子を放置するつもりは無いんだよ」


「何度も言ってるだろ。俺はただの一般人で、危険な要素なんて何一つないって」


「とぼけるな。わざなしが魔法を使えるはずがない。

 セレンを、魔法使い達を惑わせる危険分子……僕はそう判断した。それだけだ」


 マルクスの足が床を蹴る。

 速い。

 反射で体を引くと、刃が頬をかすめた。――熱い。

 視界が揺れ、心臓が跳ねる。


「逃げるなよ。殺すつもりはない。お前の血が欲しいだけだ」


(……まずい)


 魔法が使えない。ガードも出せない。

 結界の四隅の杭からは、びりびりと嫌な気配が伝わってくる。


(どうする……?)


 マルクスは追い詰めるように足を進める。

 こっちは後退するしか無い。

 柱の影に逃げても距離はじりじり詰まり、足場も狭まる。


「ほら、どうした。さっさと倒れろ!」


 刃が風を裂き、腕に浅く切り傷が走る。

 痛みで息が漏れる。


(クソ……魔法なしじゃ、防戦一方だ)


 階層の奥――暗闇が濃い場所へ追い込まれていく。

 切られた頬や腕の感覚が麻痺してきた。

 頭がふらつく。液体の効果か?

 マルクスは一切急がず、しかし逃げ道だけは確実に潰してきた。


「お前が魔法を使える訳がない。

 先生たちの会話も聞いたぞ。“適性ゼロ”なんだろう?」


(……聞いてたのかよ)


 ミズカが壊した小さな金属――彼女は盗聴器だと言っていたが、まさかコイツの仕業か?

 いや、そもそもあれが本物だったのかすら分からない――マルクスはどうやって知ったんだ?


 背中が壁にぶつかる。

 もう下がれない。体も言うことを聞かなくなってきた。

 マルクスが静かに剣先を向ける。


「遊びの時間は終わりだぞ、スナオ」


 刃先が喉元の距離まで迫った、そのとき――。


MerryChristmas…

☆いっぱいとブクマ、お待ちしています。

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