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前世は女王でしたが、男尊女卑な異世界で家族に虐げられています〜だから、もふもふと魔術で成り上がります【第一部完結】  作者: 碧井 汐桜香


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44.遭遇

「なにをしている!? ソレガノ!」


 お兄様が声を上げ、部屋に入ってきたと同時に、お父様の手を払って、わたしを助けてくれた。そうか、今のわたしには力があった。自分で助かればよかったのに、なぜかひどく恐ろしくて、抵抗など思いつきもしなかった。エイガの父親や処刑人に立ち向かうのとは違う恐怖だった。身体に染みついたような。誰か助けて、そんな思いで店員をみていたが、平民にすぎない店員がお父様に逆らうことなどできず、彼女も怯えているようだった。別の店員がお兄様をこの部屋まで連れてくることしかできなかったのだろう。


「ごほ、ごほ、お、兄様」


「大丈夫か? ユーリア。落ち着け。息をゆっくりするんだ。大丈夫だ。……私の後ろにいなさい」


 お兄様よりもはるかに大きいお父様。でも、わたしを守るように立ったお兄様の背中はすごく大きく見えて、頼もしかった。店員の女性に預けられ、後ろに隠されたわたしは、見守ることしかできなかったが、お兄様がお父様んに立ち向かってくれた。


「ソレガノ。長に言われているのではないか? ユーリアに近づくな、と。それに、ユーリアを長が貰い受けるための恩恵は授けたはずだ」


 お兄様を上から下まで見回して、お父様は鼻でふん、と息を吐いた。


「あんな金。もうないに決まっているだろう。一度だけでなく永続的に支援を受けられるものだと思っていたが、長も人が悪い。大切な娘を奪っておいて、あれだけとは」


 お父様がそう言ったが、お兄様の言葉的に大金を渡すことで、わたしが生家とか関わることがないように縁を切ってくれたことが伝わってきた。


「……あのままソレガノの家にいたら、ユーリアは成人する前に殺されていたのではないか? そう思うと、ユーリアを救い出し、才能を認めた長がすでにお前たちに過大な恩恵を与えていることくらい、理解できるだろう? お前だって、感謝していたではないか」


 お兄様の言葉に、お父様は噛み付くように反論した。


「ふん。あの時とは状況が違うのだ」


「そうよ! あの子がいなくなってから、なぜか大変なのだから。乳母だって連れて行くなんて話が違うわ」


 口を出したお母様が素顔なことにギョッとしたような表情を浮かべたお兄様に、そんな表情の変化に気がつかないお父様ではない。にやりと口元を歪め、お兄様を指さす。


「そもそも、女性が着替えているのに、そんな場に押し入って、我が妻の素顔を暴くとは。長の養子だったか? お前は責任を取る必要がある」


 お父様の暴論に、そうよそうよとお母様が乗る。


「……長の養女であるユーリアの着替えの場に強引に立ち入ったお前たちには言われたくないのだが」


 お兄様の言葉に詰まったものの、すぐに切り替えて二人はお兄様に噛み付いた。


「そ、そんな幼子と、大人の女性であるわたくしを一緒にしないでくださいまし!」


「そ、そうだ! 我が妻を傷物にした責任をとってもらおうか!」


 お兄様をターゲットにして二人は、金のことしか頭にないようで、その姿を見たわたしは、なぜあんな人たちが恐ろしかったのか疑問に思った。そして、お兄様の背を引いて、その横に並び立った。


「……わたくしの元、お父様とお母様。長の養女となったわたくしを傷物にした責任、とっていただきましょうか?」


 にこりと笑みを浮かべ、奥方様を見習って胸元から取り出した扇を二人に向ける。う、と言葉に詰まった二人が、思い返したように口を開いた。


「し、しかし、このことが明らかになれば、お前はろくな縁談など望めなくなるぞ!」


「そ、そうよ! わたくしたちに口止め料を支払いなさい!」


 そもそも、ユーリアがいなくなってから仕事のミスが増えたし、怪我をしたんだと言いがかりをつけて、治療費まで請求しようとする。そんな二人を見て、奥方様の笑みを意識して微笑んでみせたわたしは、扇で口元を隠して嗤った。


「あら? 長の女と先ほどもお父様が言ったではありませんか? そんなわたくしが縁談なんて望むはずないでしょう? ご自由にお話になってくださいな。……となると、あなた方がわたくしに不作法を働いたことが明らかになりますわね」


 わたしの気迫に押されたような二人が言葉に詰まる。弟は変わらず空を見ている。そんな弟をチラリと見て、わたしは口を開いた。


「わたくしとて、可愛い弟が路頭に迷う姿は見たくないですわ。あなたたちだってそうでしょう? 大切な、大切な御嫡男ですもの」


 思い出したかのように弟に視線を向けた二人。それもそうだとか色々の言い訳を並べて去っていった。


「申し訳ございません! お客様にご迷惑をおかけしてしまい」


 店員がそう謝るのを受け入れ、わたしはお兄様を振り返った。


「お帰りいただけてよかったですね。お兄様」


 すごく怖い表情を浮かべたお兄様が、わたしの肩を痛いくらいにつかむ。


「あなたは……あなた様は、何者だ」


「え?」


 お兄様の顔が怖くて、痛いとも言えずわたしはされるがままに黙った。







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