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前世は女王でしたが、男尊女卑な異世界で家族に虐げられています〜だから、もふもふと魔術で成り上がります【第一部完結】  作者: 碧井 汐桜香


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39.再会

「奥方様の課題、今日の分は終わったから、お兄様と出かけてくるね」


「はいはい、気をつけて行ってきてくださいね」


 あれから、ばあやに相談して、課題は一日ずつ量を決めて取り組むことにした。つい、早く終わらせないとと焦ってしまうけど、無理しない範囲で取り組むことにした。意外にも、以前よりも課題でこなしたことがしっかりと身についている気がする。


「お兄様! お待たせしました!」


「あぁ」


 部屋の外で待っていてくれたお兄様に、わたしは駆け寄り、地下通路へと向かう。大通りは賑わっていて、顔を隠した平民の女性たちが買い物をしている。


「……ユーリア。君の強みはその使い魔たちだ」


 道中、声を落としたお兄様にそんなことを言われた。わたしの肩の上で顔を掻くライトに、胸を張って飛んだせいで落ちそうになったマーシー。確かに二人はわたしの主戦力だ。でも、お兄様の言いたいことの意味を理解できずに首を傾げる。


「君自身を強くしすぎたせいか、君は使い魔を使う前に、自分自身でなんとかしようとする癖がある。最初から彼らに頼れ。その方が楽に勝てる可能性もある」


 かわいい二人が強いことを知っているが、気軽に頼りたくない。そんなわたしの気持ちを読んだお兄様が付け加えた。


「君の今日の課題は、いかに自分が戦わずして勝つか。普段から彼らとしっかり連携が取れていないと、いざというとき、危険だ。練習だと思って、彼らを主に使う戦いを身につけなさい。武闘大会の時のように」


 自分の中ではかなり二人を使っているつもりだったし、皆が持たない力だからずるい気がしていたが、そこまで言われてしまったら、仕方がない。意を決して地下水路へ向かうのだった。





「やっと会えました!」


 ぐるぐるに巻いた布で顔を隠した、わたしと同じ年頃の幼女が地下水路の入り口の前に立っていた。関わりたくないと他の探索者たちが避けている中、目の前に立って道を塞がれたからにはどうしようもない。


「……初めまして?」


 むすっとした表情で黙ったお兄様の代わりに、わたしが対応する。相変わらず、人が嫌いなんだから。


「はじめましてじゃないです! 以前、あなたたちに命を助けてもらった姉妹の妹の方です!」


 なぜか胸を張る少女の言葉に、やっと正体がわかったわたしが手をポンと打った。


「あぁ! お兄様のファンの!」


「それは姉だけですわ!」


 ぷるぷると首を振る幼女に、わたしはふと思い出して問いかける。


「今日、お姉様は? 誰か代わりの保護者がいるの?」


「……」


 気まずそうに目をそらす幼女に、わたしは目を剥いた。


「一人!? その年で!?」


「も、もう五歳ですわ! わたくしよりも年下のあなたに言われたくないです!」


「わたしも五歳ですけど!?」


 驚愕した、と表情に書いてある幼女と向かい合う幼女(わたし)。埒の開かない戦いに、お兄様がため息をついた。


「……とりあえず、早く帰った方がいい。家の者が心配しているだろう」


「だ、大丈夫ですわ! 人形のルリちゃんをお布団に詰めてきましたの!」


 そっかー。安心。とはならず、わたしが吠えた。


「せっかく心配してくれるご家族がいるんだから、心配かけないの! 全く……。家はどこなの? 送っていくわ」


「待て。ユーリア。どうせ高位の家だ。一度屋敷の方に戻ってから地下水路に潜るのは非効率だ。私たちが探索を終えるまで、ここで待たせておけ」


「いいや、さすがにこんなむさ苦しいところに、幼女一人置いていけないですけど」


 普通に置いて探索に行こうとするお兄様に、わたしは目を剥いた。五歳児一人でここに置いていくのはないでしょう。


「……じゃあ、連れていくのか?」


「いや、」


「わたくし! 行きたいですわ!」


 わたしが受付に預ける案を出そうとしたら、その前に目を輝かせた幼女が飛び出してきた。え、連れてく? お兄様とわたしがいたら別にこの子守りながらいけるとは思うけど……。キラキラした瞳に拒絶の言葉を言えず、わしが困ってお兄様を見上げた。


「……仕方ない。君がしっかりと面倒をみるように」


「へ!? わたし!?」


「お願いしますわ! ユーリア様!」


 なぜかわたしがわがままを言ったような空気になり、幼女がわたしの後ろについた。……え、なんで。


「あれ? 名前……」


「前、自己紹介していただきましたわ! ユーリア・フージ様。遅くなりましたが、わたくし、メイと申しますわ。メイ・フジュー。どうぞメイとお呼びくださいませ」


「……メイ様。よろしくね」


 わたしがそう言って手を差し出すと、メイも手を握り返してくれた。……女性同士ならセーフだよね?





 メイから学院のあれこれを聞きながら、地下水路を歩く。お兄様は学院のことを全然教えてくれないから、正直ありがたい。


「その、お菓子屋さんって学院内にあるの?」


「ええ。学院の裏手の学生街のような市にありますわ。……あら? でも、ユーリア様もそちらでイカルガ様と買い物なさったのでしょう? ファンクラブ内で情報が出回っていると聞きましたわ」


 ……なにその物騒な情報。わたし、入学してすぐお兄様のファンクラブに殺されない? わたしの顔色が蒼白になったのに気がついたのか、メイが慌てたように付け加えた。


「あ、でも。イカルガ様と一緒にいた相手がユーリア様という情報は出回っていないはずです。わたくしがきっとユーリア様だと思っただけで」


「なら、安心していいのかな?」


「えぇ。ユーリア様のことはわたくしも守りますわ!」


 心強いセリフに、わたしは安心して視線を前に向ける。妖の気配だ。お兄様は基本的に手出しするつもりがないようで、メイのことを守りながら、ライトとマーシーだけを使って倒さなければならないらしい。……メイがいると、自分で戦うよりも二人を使うことを考えられるから、ありがたい。


「……炎壁(ファイア・ウォール)


 まずはこちらに妖が来られないように壁を作った。突然のマーシーの魔術に、わたしの後ろを歩いていたメイは、躓いて尻餅をついた。


「ふぇ、魔術……」


 大人しく座っていてくれるなら、ありがたい。そう思ったわたしは、さらにライトに魔術を指示する。


「斬撃」


 ライトが後ろから妖に攻撃する。妖は咆哮を上げてこちらに向かってくる。……マーシーとライトの名前呼んだら、変に思われるよね? じゃあ、名前なしでわかる指示にしないと。


「……斬撃を連続で飛ばす、鎌鼬!」


 説明を入れるしかなかった。視線とその指示でライトが理解してくれたようで、熊の妖が倒れた。部位破損としてもなかなかいい戦果だろう。


「大丈夫?」


 振り返ってメイに手を差し出すと、目を丸くしたメイがわたしの手を取らずに言った。


「……童女」






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