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前世は女王でしたが、男尊女卑な異世界で家族に虐げられています〜だから、もふもふと魔術で成り上がります【第一部完結】  作者: 碧井 汐桜香


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23.蛍苔

「よくあんな場所知っていましたね?」


 部屋を出て、妖のいる場所に案内される。道中、蝙蝠のような見た目の妖に飛びかかられたが、マーシーが軽く焼き払ってくれた。代わりに、獲得できるものはなにもなかったが。


「たまたま見つけたんだ。綺麗だろう?」


 お兄様が嬉しそうにそう言った。なんとなく面白くない気持ちになったわたしは、お兄様に問いかけた。


「……誰か連れてきたこと、あるんですか?」


「ないな。君が初めてだ」


 お兄様にとっても大切な存在になれているような気がして、少し嬉しく思いながらわたしはお兄様を揶揄うことにした。


「恋人とか、いないんですか? モテそうなのに」


 わたしがそう言うと、顔を歪めて心の底から嫌そうな顔をしたお兄様に反論された。


「いないし、いらない。あんなうるさい人間に関わりたいと思わない」


「うるさい……?」


 どういうことだろうと首を傾げると、お兄様が前を向いて武器を取り出した。


「……来るぞ」


 なにが、と問う前に、大きな牛のような見た目の妖が現れた。お兄様が魔術を展開するのを見て、わたしも慌てて準備する。


「いくよ! マーシー! ライト!」


「……待て、君は!」


 お兄様の声が聞こえた頃には、戦闘準備が完了していて、ライトとマーシーで攻撃をしようとしたところだった。

 お兄様の展開した水の魔術を、マーシーが焼き払って蒸発させた。ライトの斬撃は牛に当たらず壁に飛ぶ。


「君は、連携の勉強が必要だな」


 そう言って、お兄様が再度魔術の展開をミスした。


「私が水で足止めする。君は斬撃で角と尾を削りとれ。少しずつ、だ。できるな?」


「……はい!」


 ライトに頼み、斬撃を撃つ。少しずつ牛の角が折れ、尾も千切れた。怒りの声を上げる牛に、わたしはお兄様の指示を待つ。


「結界を外側から張れるか? 牛を動けなくするのだ」


 お兄様の指示の元、結界を張って牛を動けなくした。その隙にお兄様は牛に近づき、いろいろな部位を削り取った。


「主な部位は取れたな。本音を言うと、牛胆が欲しいが……幼い君の前ですることではないな」


 お兄様はそう言って、刀で一撃牛を突くと、牛は消えた。


「……もっとわたしも攻撃したかったです」


「君は連携を学ぶべきだ。学院でも。独り立ち後も必要となる力だ。自分だけで勝つのではなく、連携して最善の成果を得るように動くこと。これも、忍びとして必要な能力だぞ。……地下水路に来るのは想定外だったが、連携を学ぶと言う意味では必要だったな。ペア学習の講義の役にも立ちそうだ」


 ぶつぶつと何かを言いながら、お兄様は床に落ちているものを拾う。わたしが不思議に思って見ていると、お兄様は振り返って言った。


「いらないのか? これが地下水路の資金源だぞ?」


「え!? いります! いります!」


 慌ててお兄様の横に駆け寄り、お兄様のくれた袋に牛の残骸をを詰め込んだ。この袋はどれだけでも入るらしい。一つもらったのだが、森の採集の際も便利そうだ。そう思っていると、盗まれないようにと注意された。結構貴重なものらしい。





「初回だし、これくらいにしておこう。疲れていないか?」


「全然余裕です! まだ行けますよ?」


 時間的にも体力的にも余裕があるとお兄様に言うと、軽く頭をこつかれた。


「不慣れな地下水路に潜ったんだ。気付かぬ間に疲れは溜まっているぞ。無事に家に帰れるように余力を残しておきなさい」


「……はぁい」


 その時は不満だったが、家に帰って実感することとなった。お兄様の言葉が正しいと。





「買取を頼む」


 お兄様に連れられ、わたしが素材を買取カウンターに提出する。わたしの持っていた数銭からは考えられない。素材は合計で五圓となった。お兄様に一部渡そうとしたものの、断られた。


「君の学費や生活費を稼ぐために潜ったんだ。いわば鍛錬の一環だ。欲しいと思う素材が取れたらもらうから、貯めておきなさい、と」


 お兄様の言葉が嬉しくて、ばあやに少しお金を持って帰ろうと、わたしが森の採集で稼いだ数銭を取り出した。


「持ち帰るのか?」


「はい。ばあやに少し準備金を渡そうと」


「大金を持ち歩くのは危険だが、それくらいならいいだろう」


 お兄様に案内され、家へと帰ることとなった。一人で帰れると主張しても大抵家まで見送ってくれるお兄様は、本当に面倒見のいい人だと思う。


 道中、学院での話をねだり、いろいろと話してもらった。お兄様が「うるさい」と評した女生徒たちは、お兄様の話を聞くと確かに騒々しい。お兄様が外に出ると待っていたり、差出人不明の差し入れが置いてあったり……。お兄様からしたら迷惑なことかもしれないが、そこまでお兄様がモテる想像がつかなくて、首を傾げてしまう。確かに、美しい外見に、優秀な能力。長の忍びとして既に働いているから、将来が約束されているし、面倒見もいい。しかし、研究馬鹿な部分や口が悪かったり冷たかったり……。気遣いできる男の方がモテるのでは? と思いながらも、確かにお兄様はさりげない気遣いができていると思って、評価を上向きに訂正した。


「……なにか失礼なことを考えていないか?」


「え、か、考えていないですよ?」


 一瞬の動揺で勘づかれて、お兄様に頭を手刀で打たれる。


「無礼な!  頭が高いです、お兄様!」


「君が悪い」


 そう言って手を離し、先を歩き始めたお兄様の背中を睨みつけ、反撃の機会を伺いながら、わたしは心の中で訂正する。

 暴力お兄様がモテるわけなんてない! 評価は最初につけたモテない男に戻して置いてやるんだから!


 お兄様にバレないに下方修正を終えたら、お兄様を追いかけて少し走る。


「待ってください! お兄様」


「……魔力の鍛錬をしながら帰るぞ」


「うへぇ!」


 下方修正もバレている、そんな気がしながら、わたしはお兄様に言われるがまま魔力を練りながら家へと歩くのだった。




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