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お墓参り途中、気付けば異世界

主人公、河合夏夢(かわい なつめ)ちゃんは広島弁・備後弁辺りを使用いたします。


苦手な方はご注意下さい。

 

 8月13日から8月16日。


 この期間は日本では知らぬ人はほとんど居ないであろう、お盆期間。


 ご先祖様のお墓に参り、ご先祖様の霊を迎え、供養する行事。


 私も例に漏れず、幼き頃に他界した父母を迎えにお墓へと参ろうとしている。


 まだ日が昇る直前の時間帯に車を走らせ、墓地まで向かう。


 母が好きだったグラデーションがかったカラフルなダリアを、購入した樒と共に包まれた花束。


 真夏の今、朝だからと油断せず万全の状態で向かう為、持ってきた荷物。


 自身のセミロングの黒髪を束ね、帽子を被る。


 軍手、チャッカマン、ロウソク、線香、父が好きだったらしい日本酒(コンビニの小さな瓶酒)、少しばかりのお米。


 お墓参り後に行くモーニングの為に持ってきた、音楽プレイヤー、イヤホン、一冊の小説。


 これらが入ったウエストポーチを装着し、水分補給用にスポーツ飲料が入った水筒を付属の水筒ホルダーに収納。


「…………あ。」


 これだけ用意周到に準備してきたはずが、前のお墓参りの際に減ったいた補充用の香炉灰を忘れてきてしまった。


「ま、刺さんない事は無いけぇいっか……」


 日本酒が入ったビニール袋を腕に下げ、花束を持ち、乗ってきていた車の扉を閉めて鍵を閉める。

 ズボンの後ろポケットにスマホがあるのを確認し、ウエストポーチの小口のポケットに家の鍵と車の鍵をしまう。


「さて。登りますか……」


 その場で数回足踏みをし、花束を持ち直す。

 まるで、俺様な新郎が花束を片手に肩に担いでいるのと同じような格好で目の前の急斜面へと足を踏み出す。


 ぜぇぜぇと自らの喉奥から吐き出される空気音と早起きな蝉達の鳴き声を聞き流しながら登る。


 幼き頃は此処を走って駆け上っていたのを思い出し、随分と老けたものだと笑みが零れた。


 まだ二十一歳なんだけどなぁ……


 途中の水道に置いてあった手桶に柄杓を突っ込み、水を注いで目的の御先祖様のお墓へと持っていく。


 いつもの手順で軍手をし、森の木々から零れ落ちた葉を綺麗に集め山へとリリースする。


「暑いぃ………お腹すいてきたぁ」


 気温の高さとそれに伴う重労働により、空腹の虫が疼き出すのと同時に汗が滲み出てきた。


 東の空が少しづつ明るくなり、太陽の頭が山々の隙間から見え始めてきた。


 少し休憩にしようと思い、地面に座りウエストポーチに入った水筒に手を伸ばした。


 早く終わらせてお暇したいという心意気と裏腹に着いてこない体力とのギャップを感じながら、スポーツ飲料を飲み、太陽が昇るのを静かに見守る。


 若干の睡魔により口に含んだスポーツ飲料を口内で弄びながら目を瞑る。


「……………また父ちゃんと母ちゃんに、会いたいなぁ……」


 汗が少し引いたのを感じ、スポーツ飲料をゴクンと飲み干す。


 もうひと頑張りするかと思い、目を開ける。






 と、そこは甘い香りが混じった風が靡く庭園のような場所が目の前に広がっていた。


「…………………へ?うちの墓石は何処へ………?」


 訳も分からず辺りを見渡せば、ビニール袋に入ったままの日本酒。

 これから剪定をしお墓に備えようとしていた樒とカラフルなダリアが新聞紙に包まれたまま置かれていた。


 一先ず、手に持っていた水筒をウエストポーチのホルダーに戻し、地面に置かれた花束を抱える。


「え、え?何これどういう事??ここ何処???」


 ぐぅと鳴るお腹を抑えながら知らない場所にただ一人立っていた私は取り敢えず、人を探す為に一歩踏み出した。


 太陽が出たばかりの恐らく朝だと思われる時間帯の庭園には、人の気配が無い。


 もし仮にここが誰かの所有地だとすれば、私はただの不法侵入した不審者となるだろう。


(ど、どーしろと言うんじゃこの状況………)


 サクサクと草花を踏みしめていると、薔薇の生垣が迷路の様に植えられた場所へと辿り着いた。


 身長が160cmの私の腰辺りの高さの生垣は、全ての花々が丁寧に手入れされており朝露に濡れていた。


「わぁ………むっちゃ綺麗……むっちゃ良い匂いするぅ」


 私の地元は、薔薇をモチーフにした商品が数多く開発されていたため、町の至る所に薔薇が植えられていて少し思い入れが強い。


 個人的に薔薇は非常に香りが芳しく、かの、クレオパトラが愛したのもダマスクローズと言う非常に香りが強い薔薇だったと言う。


 まぁ、私がドヤる事では無いのだけれど、地元の地域興しで有名だったのだから少しばかり誇っても良いだろう。


 って、いやいや。今はそんな事考えている暇じゃないのですよ。


 私は今何故ここに居て、どうやって此処に来たのかという疑問の方が大事。

 かつ、これどうやって帰る事が出来るのでしょうか。


「ん?……………まてよ?これってもしかして巷で噂の異世界召喚?と言うより転移ってやつなのでは??」


 一泊置いて辿り着いた答えは、『異世界転移』。


 状況からして地元のお墓参りをしていて何やかんや、気がついたら目の前は知らない土地になっていた。


 こんな非科学的な現象、ファンタジーとして捉えなければ説明がつかないだろう。


 あぁ。この前やっと泣け無しのお給料の中で決意して買った新しい中古の車………


 まだローン返してないのに………




「どうしましょう………天国の父ちゃん、母ちゃん。どうやらうちは日本から追い出されてしまったみたいじゃ……」

翠カ/愛カ初の異世界転移ファンタジーの執筆でございます。


割かし短編で終わる予定でございます。楽しんでいただければ幸いです(* ˊ꒳ˋ*)

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