アイスティーはレモンで
目の前には冴木とイブくん…
ベッタリとくっついて仲良くメニューを見ている
さっきまでの僕の浮かれ気分は嘘のように姿を消し
指先まで冷たくなっていた
僕はメニューに目を落としながら
無くなった食欲で口に入れられそうなモノは
何だろう?と考えていた
「ねぇ、僕コレとコレ食べたいから瑠加シェアして食べよ」
「え?イブ〜どっちかにしろよ!俺の食うモンまで勝手に決めんなよ」
「えーいいじゃん!ね!ね!ね!」
「ったく…しょうがねぇなぁ」
「わ~い!やった!ありがと瑠加♡」
幼馴染みってこんなに距離感近いんだ?
この2人が特別?
どう見てもカップルがイチャイチャしているようにしか見えない
「拓真は?何にするか決まった?」
冴木に聞かれハッと我に返る
「あぁ…コレにしようかな…」
とメニューを指差す
「ミックスサンド?拓真、それだけで足りる?」
「あーうん、大丈夫」
「飲み物は?」
「アイスティーにする」
「わかった、じゃあ注文しようか」
注文が終わると
イブくんが冴木にくっつきながら何かをしきりに話していたけれど
僕はその内容が全く頭に入ってこない…
ただただそのやり取りをボゥっと眺めていた
その様子に気がついた冴木が
「拓真?どした?」
と、聞いてきたけれど
僕はそれすら耳に入ったのか入らないのか…
無意識に何でもないと身ぶり手ぶりで答えたようだ
自分はここにいるけれど
本当はここにはいなくてスクリーンの中を覗いているだけのような感じ?だろうか…
近くにいるのに遠くから2人を眺めている…
そんな気持ちになっていた
しばらくすると
冴木とイブくんの前には
トマトリゾットとカルボナーラが運ばれてきた
「いい匂い!美味しそ!ね!瑠加!食べよ」
イブくんが無邪気に笑いながら冴木に話しかける
そしてスプーンでリゾットをすくって
「はい!あーん」
そう言ってイブくんは冴木の口元にスプーンを持っていく
「イブよせよ!」
「いいから ほら食べて!フーフーしたほうがいい?」
「よせって!」
「照れない!照れない!」
イブくんのイチャイチャムーブは続き
なんだかんだで仲良くシェアして食事をしている2人
僕は
そんな2人を見てニコっと笑い
黙って目の前に置かれたサンドイッチに手を伸ばす
笑え!笑え!笑え!
頑張れ!僕の表情筋!
モサモサとサンドイッチを口に入れるが
まったく味がわからない…
早く、早く、早く飲み込め
サンドイッチとこの痛みを
腹の中に納めろ
口にほうばったサンドイッチを
アイスティーで流し込む
アイスティーに付いていたレモンを口に含む
酸っぱい…
酸っぱい…
でも…気合が入る
頑張れ!拓真!
冴木に、イブくんに
気付かれないように…自然に笑え!
僕がなんとか食事を終えるころ
イブくんはデザートを食べ始めた
その様子を見ながら冴木は珈琲を飲んでいる
やっぱりお似合いだなぁ…
僕は悲しい目をしないように用心して
窓の外に目をやった
さっきまでのキラキラとした日差しはそこには無く
今にも雨が降り出しそうな曇り空になっていた
嗚呼…
僕の心模様と同じだな
そう思ったら何だか急に可笑しくなった
クスッと笑って
「冴木!悪い!急用思い出したから帰るわ!
コレ俺の分!」
テーブルの上に
サンドイッチとアイスティーの代金を置く
「た、拓真?」
「じゃあ、また学校でな!」
そう言って笑って
カフェレストランをあとにした
………大丈夫、大丈夫
ちゃんと自然に笑えてた…たぶん
大丈夫…僕は…大丈夫
まだ…ちょっと
良いなって思ってただけ
何でもないって…
大丈夫、大丈夫、大丈夫
僕は大丈夫
そう心の中で繰り返し
家路を急いだ
空と僕が泣き出す前に
家に帰りたかったから
やっとの思いで家にたどり着き
玄関を開けようとした時
ポツリポツリと雨が降り始めた
どんよりした空を見上げると
僕の目からも涙がこぼれ落ちた
僕は姉ちゃんたちに見つからないように
そっと扉を開け静かに自分の部屋に戻った
ドサッとベッドの上に身を投げると
疲れと虚無感に襲われ
僕はそのまま眠ってしまった




