拓真は知らない
今日は冴木と出かける日…
昨夜はあまり眠れなかったけど
姉ちゃんたちにオシャレな友達と出かけるって話したら服を選んでくれた
姉ちゃんたちは僕より10歳年上の双子、社会人だ
僕が小さい頃から
ずっと可愛がってくれている
(おもちゃにされているとも言う)
「姉ちゃん…コレ変じゃない?本当に似合ってる?」
「えー 拓ちゃんすごくカッコイイよ」
「似合ってる、似合ってる!」
「そう?」
姿見の前でクルリと一周してみる…
でも普段着慣れない服を着ているから
なんとなく変に思う…
「拓ちゃんカッコイイのにいつもジャージばっかりだから…」
「ジャージも似合うけど…こういう服、普段にも着たら?」
「これからも私たちが服を買ってあげるから!」
「ところで拓ちゃん、本当は女の子とデートなんじゃないの?」
「違うよ…」
「だっていつも友達と出かける時はジャージか良くてパーカーにデニムとかでしょ?」
「そうそう…着ていく服で悩むなんて今まで無かったよね?」
「本当に違うよ…女の子じゃなくて
高校に入って知り合った冴木くんて子!
すごくカッコイイ子だから一緒にいて恥ずかしいくないようにしたいだけ!」
「ふーん…まぁそういう事にしておくかぁ」
「まだまだ高校生になったばっかりのお子ちゃまだもんね」
「おこちゃまだけど、また身長伸びたよね」
そうなんだ
高校生になってまた少し身長が伸びた
キーパーとしてはとても喜ばしい事なんだけど
なんとなく…なんとなく…
もうこれ以上大きくなりたくない
大柄で筋肉もつきやすい男らしい見た目の自分と
可愛らしい物が好きだったり
甘い物が好きだったり
姉ちゃんたちの影響なのか少し乙女チックな思考の自分…
見た目と中身の乖離が日に日に大きくなっているような気がする
だからなのか
家や思考の中では自分の事は『僕』なのだけれど
外で話をする時は『俺』になる
どこかで
『友達の前では見た目通りの自分でいなければならない』
って思ってる自分がいる
「拓ちゃん?どうした?」
鏡の前で呆然としていると姉ちゃんたちが心配そうに覗き込んできた
「ん?何でもない」
「今日はどこで待ち合わせなの?」
「それが…なんか家まで迎えに来るって…」
「え!大変!莉子ちゃん!お迎えだって!」
「眞子ちゃん!私たちも着替えないと!」
姉ちゃんたちが慌てはじめる
「別にそのままで良くない?」
「だめよ!拓ちゃん!だってお友達ってイケメンなんでしょ?」
「まぁ…そうだね」
「今、私たちイケメンを拝むような格好してないわ!」
急げ急げと大慌てで姉ちゃんたちは着替えに
それぞれの部屋へと帰って行った
ふと鏡を見る
姉ちゃんたち…服の趣味良いよね…でも
コレ本当に似合ってるのかな?
改めてマジマジと見ると
やっぱり着慣れない服装が浮いて見えるような気がする
自分がもう少し…こう…華奢で…可愛くて?
綺麗で?中性的な雰囲気ならこの服ももっと似合うだろうし
冴木と出かけることだってただの友達同士の買い物じゃなく
違ったモノに見えたりするのかな?
…あ、いや、今の無し
何を考えてるんだ僕は…
冴木と一緒に出かけることで
少し浮かれていた自分が急に恥ずかしくなった
どうしよう…いつもの格好に着替えようかな…
ピンポン!
玄関のチャイムが鳴った
「はいはーい!」
莉子姉と眞子姉がすごい勢いで
玄関まで出迎えに行く
「拓ちゃーんお迎え来たよー!」
声に促され玄関まで行くと
姉ちゃんたちに囲まれた冴木の姿が見えた
ふぉ!
カッコイイ!!!
思った通り私服姿もすごくカッコイイ
「あ!拓真!おはよ」
「おはよ…冴木」
なんかちょっと照れる
「拓真くんお借りしますね!行ってきます」
とニッコリ笑って
姉ちゃんたちに挨拶をする冴木を横目に
心臓がバックンバックンいってるのを
少しでも抑えようと深呼吸をする
「じゃ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
姉ちゃんたちに見送られ家をあとにして
僕たちは駅へと向かった
「ねぇねぇ莉子ちゃん…冴木クンすっごいイケメンだったね…」
「本当…すごかったね…しかもなんか…冴木くんの拓ちゃんを見る目…妙に色っぽかったよね?気のせい?」
「ヤバい…私、冴木くんと拓ちゃんで薄い本…描きたくなっちゃった…」
「それな」
拓真の姉の眞子と莉子は
薄い本を描く国の住人だった
だが、ソレを拓真はもちろん知らない




