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朝練と冴木と僕と…

早朝の澄んだ空気の中、小走りで学校へ向かう

今日から1年生の部活の朝練が解禁だ

僕はサッカー部に所属している

ポジションはキーパーだ

久しぶりの朝練がなんだか少し嬉しくて早めに家を出た

きっと僕が一番乗りだ

サッカーコート脇の部室へ向かう

コート横の細い小路の途中

道を隔てた隣の弓道場から

パーンと小気味いい音が聞こえてきた

ふと音の方を見ると弓道衣を着て弓を射る冴木がいた

冴木は弓道部なのか…


朝の静寂に包まれ弓を射るその姿は

凛として その眼差しは矢のように鋭く

美しい所作から放たれた矢は

行先を見誤ることなくストンストンと

的へと吸い込まれていく

弓道なんて初めて間近に見た僕にもわかる

冴木はかなりの上級者だ


ここまで上達するのにはきっと相当鍛錬したのだろう

神々しささえ感じる


「…すごい」

思わず小さく声が出た


その微かな声が聞こえたのか

冴木が振り向いた


「拓真!」


冴木はふわっと笑って

弓道場と小路の境にある植え込みまで走ってきた


「おはよう 冴木も朝練?」

「ああ 朝練が嬉しくて早く来ちゃった 拓真も?」

「うん 俺も嬉しくて早く来ちゃった」

「あれから電車は大丈夫?」

「うん…激しいラッシュになる一本前の電車に乗ってたし 今日からは朝練の時間に合わせたのに乗るから」

「そっか ちょっと心配してたから…良かった」

「…あ ありがとう」


冴木…優しいな

かっこいいし…いい匂いだし…

笑った顔、可愛いし…キラキラしてるし

なんか良いな…


ん?良いな?可愛い?ん?

何考えてるんだ僕は…


「なぁ 拓真…後で連絡先交換しようぜ!」

「ん?あぁ 連絡先な」


やばいなんかドキドキしてきた…

冴木の目をまともに見られない…


「あ!俺そろそろ部室行って朝練の準備しないと!

邪魔して悪かったな!またな!」

「おう!後で拓真のクラスに行くからその時に連絡先な!」

「わかった!じゃあな!」


僕はサッと身を翻し部室の方向へ走った

…絶対 顔紅くなってる…恥ずっ…

顔紅くなってるの気付かれたかな…

大丈夫かな…


弓を射る冴木…凄かったな…

連絡先交換できるのか…嬉しいな

嬉しいな 嬉しいな 嬉しい な


部室へと走りながら

ぐるぐると冴木の事を考えて

今まで味わったことの無い

不思議な高揚感が僕の身体を支配し

更に顔が火照る


顔が紅くなったのは走っているからだ

胸がドキドキしてるのも

走っているからなんだ…

走っているから…

きっと そうなんだ…






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