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異世界にTS転生した僕がサキュバスクイーンになった理由  作者: 望月優志


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勘違いさせてごめんなさい

 ジュリとジンムカ様がイチャつくのをどうにか阻止しなければいけないと思った僕は、ふわふわする頭を一生懸命にひねった結果、そういえば外の話を聞こうと思っていたことを思い出した。


「おはなし!!おはなしききたいー!!」

「わっ、セラ、どうしたの??」

「ふふっ、放っておかれて拗ねちゃったのかもしれないね」


 別に拗ねたわけではない。少しのあいだ相手をされなかったから我に返っただけなのだ。


「すねてませんー」

「そうかそうか。それで、どんなお話を聞きたいんだい?」


 可愛いものを愛でるように頭を撫でられるのはなんか気に入らないが、まぁ色々話してくれるなら我慢してあげよう。


「んーと、えっと…なんだっけ?」


 いくらジンムカ様が僕の誘拐に関わっていない可能性が高いからって、下手な事を聞くわけにはいかない。だからやんわりと色々聞き出すために事前に考えてたはずなんだけど…まずい、思い出せない…どうしよう…


「ふふっ、ジンムカ様に聞いたお話なら、おっきなしょっぱい海のお話とか、冒険のお話とかかしら?」


 困っていたらジュリが助け舟を出してくれた。そういえば前にそんな話をしてたな。


 海の向こうの大陸ではファンタジーものによくある魔物と呼ばれる生き物が沢山いて、冒険者になる人が多いんだって。剣と魔法の世界が広がっているらしいのだ。


「…まほう!つかいたい!!」


 まぁ、不思議な話といえば魔法だよね。子ども騙しの作り話なのはわかっているが、やっぱり魔法には憧れがある。小説も異世界ものばかり見ていた。


 一口に魔法と言ってもアニメによって色々な法則があり、とても奥深いものだ。僕がもし異世界に転生できたら、やっぱり魔法を極めていきたいな。


 地球にはない魔法という現象。わからないものを知りたいと思う事。知識欲。


 歳をとって少しずつ色々なことに興味がなくなっていっても、小説の、漫画の、アニメの、異世界という地球とは全く違う魔法という法則の存在する世界を想像すると心が躍るのだ。


 それが現実には存在していないとしても。


 どうして今そんなことを考えているのかというと、この娯楽のない無法地帯でどんな異世界の物語が作られているのか、とても興味があるからだ。

 ジュリやほかの子からも話は聞けるけれど、子どもの話というのはとにかく脱線しやすい。あっちこっちに話が飛んで、結局よく分からないままにいつの間にか話が終わっている事も多々あるのだ。


 それに比べて、大人からならまともな作り話が聞けるに違いない。


 ここにはとにかく娯楽がないのだ。


「魔法か…セラは魔法がどういったものか知っているかい?」

「てからひ、とか、みずでる!!」


 ジュリ達が言っていたのは火球や土の槍、飲み水を出したりといった異世界ものではとてもポピュラーな魔法だ。


「そうだね、冒険者がよく使うのは火の球とか土の槍を飛ばしたり、飲み水を出す魔法が多い。でも、魔法はもっと沢山の種類があるんだよ」

「もっとたくさん?」

「そう。セラは魔法を見たことはあるかい?」


 あまりに唐突な質問に、思わずキョトンとしてしまった。

 何言ってるんだ?魔法なんて見た事ある訳ないじゃないか。


 あ、アニメの中でとかの話か?記憶を失っているのかカマをかけてきているのか?


 …考えすぎか。


「その顔をみるに、知らないんだね」


 ジンムカ様がくすくすと笑っているのが少し腹立たしい…


 無意識にムッと突き出していたらしい唇をキュッと摘まれるのに対し、僕は顔をプルプルして無言の抵抗をした。


「セラも魔法を見たことがあるはずだよ?もちろんジュリもね。だいたい毎日見えるところにあるけど…さて、どれだと思う?」


 え?どうゆう意味だ?なぞなぞか??


「セラ、みたことないよ?」

「私も…見たことないわ…えっと、見えるところにあるんですか?」

「そうだよ。…いや、問題の仕方が少し意地悪だったかもしれない。正しくは魔法で作った物がいつも見えるところにある、だね。さて、考えてごらん?」


 んー??魔法で作った物…それって、科学的に作った物って意味なのか??ここにそんなものあるか?


 あ、食器とか??


 僕は紅茶を飲んだカップを指さしながら聞いてみた。


「こっぷー??」

「ん?いや、確かにこのティーカップも魔法で作ることはできるのかもしれないけれど…僕がいっているのはこれじゃないよ。この部屋の中じゃなくて、2人はいつも庭に出て遊んでいるんだろう?」

「ええ…天気がいい日は必ず庭に出て遊んでいますけど…」

「それならよく見ているはずだね」


 庭から見えるもの??庭には何があったっけ…あ、井戸?あれは人力で作るには無理があるだろう。機械か何かで掘ったに違いない。


「いど!!」

「井戸か…確かに井戸は…どうなんだろう?」


 いや、こっちが聞きたいんだけど…井戸じゃなくて、他にあるのか?


「井戸はごめん、直接見て見ないと魔法で作った物かわからないな。井戸の他に、なんだと思う?」

「あ!!もしかして、この小鹿亭かしら!?」

「小鹿亭は…確かに魔法も使われているか…ははっ、2人とも鋭いな。確かにこの建物は魔法も使われているね。だから半分は正解だけど、半分は不正解だ。この建物は枠や材料などを用意して人の手と魔法の両方で作った物のはずだよ。純粋に魔法だけで作ったものがあるんだ」


 純粋に魔法だけで???頭をひねる僕とジュリ。

 庭に何があったっけ???


 庭には本当に何も無い。僕たちが住んでいる小屋に、井戸。草原に果樹、畑くらいだ。


「…いつも近くにありすぎて、わからないのかもしれないね。正解は、壁だよ」

「「…(かべ)??」」


「そう、庭の周りに大きな大きな土壁があるだろう?あれは土魔法で作った物なんだ。とても硬くて、ちょっとやそっとじゃ壊れない。この国の土魔法使い達が王様の命令を受けて作りあげた壁なんだよ」


 …あの壁が、魔法で作った壁だって?


 僕もジュリもポカーンとしていたんだろう。ジンムカ様がクックックと心底面白そうに笑っている。


 いや、笑ってる場合じゃないよ?壁だよ??確かに…ただの土にしか見えない癖に、石で傷付けようとしても削れず、挙句にはゴリッゴリと石のほうが削れる始末だ。ちなみに現在はみんなにお絵描きの壁として使われている。


 …で、あの壁が魔法で作られた壁だって??


 確かにアホみたいに硬い壁だけど…魔法で作ったんだよと言われても…実際に作るところを見たら感動するかもしれないが、完成してあるものを見せられても「は?」って感じである。もうちょっとマシな作り話はなかったんだろうか。


「あの…王様のご命令で作られた壁…なんですか?その…みんなで石で絵を描いてしまったんですが…」


 おう…ジュリさんが慄いていらっしゃる…なんて真面目でいい子なんだ…こんなしょうもない作り話を信じてしまうなんて…


 気にすることないんだよ?だって、土壁だよ?王様が命令して作らせた…土壁…ダサい…


 おもわず笑いが込み上げてきそうになるが、真剣な表情で不安そうにしているジュリを笑いものにする訳にはいかない。僕は唇を硬く閉ざし、俯いて必死に笑うのを堪えた。


「ジュリ、セラ、怖がらせてごめんね。大丈夫だよ。問題があるなら、前にジュリから話を聞いた時に教えているさ。壊そうとするのは絶対にしてはいけないことだけれど、中にいる君たちが絵を描くくらい、王様は許して下さるはずだ。あの壁は君達のための壁なんだから。…もちろん壁の外の人達が落書きをするのは、絶対に許されない行為だけどね」

「そう…よかった…」


 ジュリはほうっと息を吐いて僕を後ろから少し強く抱きしめてくる。

 心底心配そうにしているジュリには悪いが、僕は笑いを堪えるのに必死だっただけだ。勘違いさせてごめんなさい…


 というか魔法の話は終わってしまったのか?あんな壁が魔法だよと言われてもなんの娯楽にもならないじゃないか。他のネタを掘り出さねば!!


「かべのほかにも、まほうある?」

「壁以外かい?そうだね…そこの壁に着いている照明は魔道具って言って、魔石を使って光らせているんだよ」

「まどうぐ?」


 お、それらしい話きた!!


「そう、魔道具は魔物からとれる魔石というものを使って動かす道具なんだ」

「セラにもつかえる??」

「もちろん使えるとも。ほら、2人ともこっちに来てごらん」


 ジンムカ様が立ち上がって壁際に歩いていくので、僕達もついて行く。

 そこにあったのは、明らかにポチッとなと押せそうなスイッチだった。


「これが照明の魔道具をつけたり消したりするスイッチだよ。今は照明が付いて明るくなっているけれど、このスイッチを押すと照明が消えるんだ。もう一度押すと照明が付く。やってみるかい?」


 やってみるかいと言われましても…照明のON/OFFのボタンだよね?


 魔道具…??

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