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異世界にTS転生した僕がサキュバスクイーンになった理由  作者: 望月優志


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あと6年は我慢して

「ジンムカ様、私が紅茶入れますね」

「ありがとう。でも今日は大丈夫だよ。セラのそばにいて安心させてあげて欲しい。まだ緊張しているみたいだからね」


 そういって微笑むとジンムカ様は壁際に置いてある棚からティーカップを取りだし、紅茶を入れてくれる。


 貴族という割には自分で紅茶をいれる動作が手馴れているようだ。


「ジンムカ様の入れてくださる紅茶はとっても美味しいのよ。私もジンムカ様に教えてもらっているのだけど、まだジンムカ様のように美味しく入れられないの」

「ジュリが入れてくれる紅茶もとても美味しいから、僕は大好きだけどね」

「まぁ…ありがとうございます、ジンムカ様…」


 …ジュリはまるで恋する乙女のような顔つきになっている。


 確かにジンムカ様はイケメンで所作も綺麗で、どこかの国の王子だと言われても信じてしまう様な気品がある。口調も優しいし、目つきも優しい。


 …なんか僕が想像していたロリコン変態クソ野郎とは全く違っていて、正直なところ頭が混乱している。


 この人は僕の誘拐や実験には関わっていないのだろうか?


 …とはいえ、こいつがロリコンで変態野郎であることには変わりはないのだ。


「さぁ、どうぞ。まだとても熱いから気を付けて。ゆっくり飲みなさい」

「いい匂い…ジンムカ様、ありがとうございます」

「ありがとう…ござい、ます」

「「いただきます」」

「召しあがれ」


 本当にいい匂いだ…アップルティーのような香りがする。ふーふーして…こくり…あ、おいしい!りんごの風味とほんのりした甘み、そこに僅かに混じった酸味が後から口の中をさっぱりさせてくれる。


 これは美味しい。いくらでも飲みたいくらいだ。


「美味しい…セラ、どう?熱くない?」

「うん!あまい!おいしい!!」

「ははっ、甘くて美味しいか。そういえば食事に甘いものはほとんど出ないんだったね」

「ええ。でも秋に果物を沢山収穫したので、今もたまにデザートとしてでるのですよ」

「デザート…じゅるり…」


 ビグルミもアッポも収穫は終わってしまったが、氷室に入れておけばそれなりに持つらしく、今でも数日置きに少しだけデザートがつく日がある。収穫の秋様様である。


「あっ!!」


 そういえば今日食べたバカ鳥はジンムカ様がくれたんだった!!お礼しとかないと!!


「ジンムカさま、バカどり、おいしかった、です!!」

「私も頂きました!!とっても美味しかったです…ジンムカ様、ありがとうございます」

「うん、どういたしまして。ちゃんと届いてよかったよ…バカ鳥は貴族以外は狩猟が禁止されている鳥でね。たまにだけど盗まれることもあるんだ」


 うえぇ…偉い人から盗むとか…さすが非人道的な実験施設のある町…村?集落?規模が分からないからなんともわからないけれど、無法者の集まりなんだろうな…


 その中の偉い人から盗むとか、怖いもの知らずすぎる…


「今日はセラも緊張しているだろうから、少しでも緊張をほぐしてあげたくてね。美味しかったかい?」

「うん!!…あ、おいしかった、です…」


 なんて良い人なんだろう…バカ鳥の味を思い出したらテンションが上がってしまって勢いよくうん!!と返事してしまった…気を悪くさせてしまったらもうバカ鳥が貰えないかもしれない…慌てて丁寧に返事し直す。


「ふふっ、美味しかったようで何よりだよ。それと、話し方は普通で大丈夫だよ。ジュリみたいに丁寧に話そうとしなくていい。いつもジュリやみんなと話しているように、僕ともお話してくれるかい?」


 ええぇ…本当に大丈夫なんだろうか。そっとジュリを見てみる。


「大丈夫よ。ジンムカ様がいいって言っているんだもの。それにセラはいつもみたいに笑っているほうがとっても素敵よ」

「ああ。さっき見せてくれた笑顔はとっても可愛かったよ。ジュリが夢中になってしまうのも納得だ」

「わ、わかった…」


 べた褒めされて恥ずかしい…なんだか頭もふわふわするし、なんだろう…あんなに不安だったのに、楽しくなってる自分が少し不思議だ。


「緊張はほぐれたかな?」

「うん…だいじょぶ…でも、あつい」


 手で顔を扇ぐ。部屋は暑くないはずだが、恥ずかしいせいか少し汗が滲んできた。


「よかった…うん?バカ鳥の食べ過ぎかな…どのくらい食べたんだい?」


 ??なんの話しだろう。


「バカ鳥ですか?このくらいの暑さで、みんな2枚もらったんです!!とっても、とっても美味しくって…」


 ジュリのテンションが高い。よっぽどジンムカ様のことが好きなんだろうな。


 あ、僕は3枚食べたんだった。これは自慢しないといけないな。ふふん。


「セラだけ、3まいたべた!!」

「あ、そうなんです!!世話人がセラのお祝いだからって、セラだけ3枚も貰ってたんです!!私も3枚食べたかったのに…」

「さ、3枚も食べたのかい?そうか…」


 ??


 せっかく自慢したのに、ジンムカ様はなんだか複雑そうな顔をしている。


「ジュリ、セラ。アッポの赤い実を沢山食べて美味しくなったバカ鳥を食べるとね、お酒を飲んだ時みたいに、ほんの少しだけど酔っ払ってしまうんだよ。暑いのはそのせいかもしれないな…」

「『お酒』??『酔っ払って』??」

「ああ、お酒も酔っ払うもまだ知らないか…うーん、お酒は大人になるまであまり飲んではいけない飲み物でね。飲むと…そうだな、少し暑くなっていい気分になる。それを酔っ払うっていうんだ。少し嬉しいことがあるととっても嬉しく感じたりもするね。お酒を飲みすぎると頭がクラクラしたり、気持ち悪くなったりもするんだが…セラ、大丈夫かい?」


 頭がクラクラ…実は少しフラフラしている感じはしていた。そうか、お酒、酔っ払う。バカ鳥にはアルコールが含まれているってことなのか…赤い実が体内で発酵でもするんだろうか?あれだけ強烈な実だし…ありえるな…


 とはいえ僕は全然元気だ。不安な気持ちがあまり無くなっていたのも、酔って気が大きくなっていたかららしい。


「セラ、げんき!!だいじょぶ!!」


 僕はにこーっと笑ってみせた。


「そ、そうか。具合が悪くなったら我慢しないように」

「うん!!」

「セラかわいい…ぎゅーってしちゃう!!」


 ジュリに抱きしめられて嬉し…うっ、ちょっと首締まってる…


「じゅ、じゅり…くるじぃ…」

「え?あっ、ごめんなさい…セラ、大丈夫?」


 ジンムカ様、優しいな。ジュリは平常運転だ。いや、ジュリも少し酔っ払ってるんだろうか。…バカ鳥おいしかったなぁ。


「…バカどり、またたべたい」

「えっ?もう…セラったら…あっ、ジンムカ様、お隣、いいですか?」

「え?セラは僕の隣でも大丈夫かい?」


 うん?なんで僕に聞くんだろう。


「だいじょぶー」

「ふふっ、じゃあジンムカ様のお隣に行きましょうねー」


 ジュリに抱っこされてジンムカ様の隣に座る。僕はジュリの膝の上だ。


「ふふーん」

「セラは本当に可愛いね。僕とジュリの子どももこんな可愛い子になるのかな」

「まぁ…ジンムカ様ったら…」


 2人して僕の頭を撫でながら、僕の頭の上でいい雰囲気で話をしている。


 むむ、確かにジンムカ様はいい人みたいだけど、ロリコンはいかん。


 あと6年は我慢してもらわないと!!


 ロリコンにうちのジュリはやらんぞ!!

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