表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界にTS転生した僕がサキュバスクイーンになった理由  作者: 望月優志


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/108

何もかもが初体験

「…ジュリ、きれい…」


 いつもと髪型が違うせい?服装が違うから?

 もうすっかり見慣れたの少女のはずなのに、とても神聖なオーラを纏っているように感じる。


「ふふっ、ありがとう。これね、ジンムカ様が誕生日に下さった、私だけの衣装なのよ!!大人になったらたまに贈り物を貰うことはあるらしいのだけど、子どものうちから貰うなんて小鹿亭では初めてのケースだってオーナーが驚いていたわ。このネグリジェが10才の誕生日の時で、羽織ものは11才、髪留めは12才の時に頂いたの。私だけの…大切な宝物なのよ」


 …10才の少女にネグリジェ贈るとか何を考えてるんだ?いや、娼館で働いている少女なんだから普通なのか?…というか、子どものうちから働いている自覚はあったんだね。ツッコミどころが満載すぎる。



 …私だけの大切な宝物、か。



 ここには私物をもっている子なんて誰もいないもんね…自分だけの物があるって、すごく特別なことなんだろうな…


「じゃあ行きましょうか」


 そう言ってジュリがルンルンとした足取りで衣装部屋を出ていくのに慌てて着いてく。間取りを覚えなきゃいけないんだ…しっかりしないと!


 部屋を出て左に進…むのかとおもったら、またすぐ左に曲がった。そこには上り階段があって、2階へと上がっていく。衣装部屋の奥の方の天井が斜めに狭くなっていたのは階段があったかららしい。


 階段をあがった先は、正面の壁にそって長ーい廊下になっていた。左にも廊下は続いているようだが、更にすぐ左に曲がっていて先は見えない。


 正面の廊下には建物の内側に向かって部屋がいくつかあるようだが…扉と扉の感覚がやたら長い…随分でかい部屋なんだろうか。壁側に廊下を作っているということは、部屋に窓は無いのか?反対側に窓が付いているんだろうか。


 …とりあえず、変な間取りなのは間違いない。


 近くの窓から外を見てみたが壁のほうがまだ高く、空しか見えなかった。見える範囲に目立つ高い建物は何も無いようだ。


 階段から1番手前の部屋に入る。中は結構大きくて10人ぐらいなら寝っ転がっても余裕でくつろげそうな、質素な部屋になっていた。


 椅子が並んでいるのは客が来るまで娼婦が待機するための部屋だからだろう。ちなみに窓はない。


「お客様の準備が出来たら世話人が呼びに来てくれるの。それまではここで待ってるのよ」

「わかったー」

「セラは私のお膝のうえね」


 僕がきょろきょろしているからだろう。ジュリにさっと持ち上げられて膝の上に乗せられてしまった。


「…セラ、ジンムカ様はとっても優しい方なの。いつも私のことを心配してくださるのよ」

「うん」

「…セラがあんまり怖がってなくってよかった…」

「うん…??」


 ジュリの膝の上で抱えられながら頭を撫でられているのが気持ちよくて、ちょっとうとうとしてしまっていたらしい。


 …これから変態…じゃなかった、お客様とやらに会うのに…おかしいな…日中は緊張とか憂鬱さとかですごく嫌だったのに、いざ直前になってみたらそうでもない…というかちょっと眠い。


 僕の身体は小さくなってしまったが、神経は図太くなってしまったんだろうか。


 これから男娼として、もしかしたら抱かれるかもしれないのに。なるようになるんじゃね?とでもいうような楽観的な心持ちになってしまっている。


 今着ているワンピースも普段の布の服と違って肌触りがいいし、ジュリの体温も加わってとても心地がいい。


 うーん…もっと危機感を持たないといけないはずなんだけど…


「…あのね、セラはお客様のお相手をするの、もしかしたら怖がるかもしれないって不安だったの。でも…ふふっ、なんだか安心しちゃった」


 なんだかよく分からないが、ジュリを安心させることができたらしい。

 不安な気持ちは嫌なものだ。ジュリが安心してくれたなら何となく嬉しい。


 そのままジュリに抱えられながら撫でられていると、扉がノックされて開いた。

 返事を待たずに開けるならノックしなくてもいいんじゃないだろうか。世話人は妙なところが抜けていると思う。


「2人ともいるな…セラ、どうした?変な顔をして」


 おっといけない、顔に出てしまっていたらしい。


「そんなの、私とセラの2人きりの時間を邪魔しにきた世話人に呆れているからに決まっているじゃない。ねー、セラ」


 そんなことはない。


「何を言ってるんだ。ジュリ、お客様の前では言葉遣いに気を付けるように。最近は特に言葉遣いが悪いからな」

「…お客様の前ではしっかりしてるわ。世話人が悪いのよ」

「だといいんだがな…セラは、大丈夫そうだな。セラ、いいか?お客様のお相手をしている時に気分が悪くなってダメだと思ったら、ジュリに具合が悪くなってきたと言うんだぞ。頭が痛いでも、お腹が痛いでもなんでもいい。ジュリも、わかったな」

「わかった」

「わかってる。セラのことは私が守るんだから」

「…だといいがな…」


 一瞬、世話人がジュリのことを呆れたように見たけれど、何かあったんだろうか。ジュリはなんでも上手くこなしているように思うんだけど…


 首を傾げながら世話人とジュリについていく。

 部屋を出てさっき上ってきた階段の下に戻り、左へ、T字をまた左にいき、すぐ突き当たって右へ。


 今は建物の左側に突き当たったらへんかな。そこからすぐ正面に扉がある。

 ちなみにさっきのT字の右側には長ーい廊下が続いていて、左右にいくつか扉があるのが見えた。


 正面の扉の先は…また廊下?それなりに長い廊下が続いているが、右側にしか扉がない。

 長い廊下の左側に窓も何も無い壁になっているということは、さっき思った通り今は建物の1番左端にいるんだろう。


 扉をくぐり、3つ目の少し豪華な装飾が施された扉の前で止まると、ジュリがおもむろに扉をノックした。


「ジンムカ様、ジュリです。入ってもよろしいでしょうか」


 …え?突然!?


 僕に準備はいいかとか、この先にジンムカ様がいるとか…心の準備ができているか聞いてくれないんだね…


 さっきあれだけ心配してくれていたくせに…いざ直前には何の配慮もしてくれない事に驚いていると、中から「どうぞ」と聞こえてくる。その声に僕が身構える間もなく、ジュリはさっさと扉を開けてしまった。


 部屋に入っていくジュリに続いて、僕も世話人に背中を押されながら部屋に入る。


 部屋の中には金色が混じった茶髪で優しい笑みを浮かべているハンサムな男性がソファに座って待っていた。


 歳は25くらいだろうか。想像していたより若かったし、イケメンだった。身体つきもしっかりしているし、鍛えているのだろうか。


 研究者なのかどうかは…よくわからないな…


「何かあった時やお帰りの際はいつもの様にご連絡をお願い致します」


 世話人はそう言って一礼し、扉の外へ出ていってしまう。

 なんか無駄に洗礼された動きだったな。


「ジンムカ様、お久しゅうございます。お会いできるのを心からお待ちしておりました」

「僕もだよ、ジュリ。会いたかった。そしてそっちの子が…」

「はい、お話していたセラです。さ、セラ。ご挨拶して?」

「は、はじめ、まして…セラ、です…」


 そういえば、知らない人と話すのはここに来てから数ヶ月ぶりだ。なんか変に緊張してどもってしまったな。うぅ…顔が熱い…


「ふふっ、はじめまして。君のことはジュリからも沢山聞いているよ。さあ、まずは座って」


 促されるままジュリと一緒にジンムカ様の向かいのソファに座る。


「緊張しているみたいだね」

「ふふっ、ジンムカ様、どうですか?言ってた通りセラは可愛いでしょう?」

「ああ、ジュリから話には聞いていたが、想像していた以上だった。こんな子が…いや、ごめんね。とりあえず紅茶でも飲みながら、楽しい話をしよう。紅茶は飲んだ事はあるかい?」

「…ない、です」


 ??


 一瞬眉をしかめて何か言いかけたけど…なんだったんだろう。ええーっと、身体を売らなくちゃいけないことを悲しんでくれているのだろうか?


 とりあえず考えるのは後回しにして、ないと答える。

 僕は記憶喪失になっている前提だからね。何もかもが初体験なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ